“トロツキーの歴史的評価(1917)”への編集部の注で、「中央委員会責任編集の『社会科学総合辞典』 」と書いています。こう考えるのが自然ですが、実はそうではありません。
この辞典の編集は、社会科学辞典編集委員会です。したがって、「これまでトロツキーに対して浴びせてきた誹謗中傷に対する反省は見られません。」と批判するとすれば、それは社会科学辞典編集委員会に対してであって、党中央に対してではありません。社会科学辞典編集委員会はトロツキーを誹謗中傷していないだけでなく”比較的公平に紹介してい“るのですから、これをこのように批判するのは筋違いでしょう。「これまで(日本共産党が)トロツキーに対して浴びせてきた誹謗中傷」について何も書いていないことを批判するのがせいぜいです。しかも、社会科学辞典編集委員会なるものは委員長名も公表されていない実態のはっきりしない団体です。
この辞典の編集委員は日本共産党中央委員会が指名したそうです。また、野坂参三問題その他についての『社会科学総合辞典』補正表が発行されていますが、これは党の組織を通じて配布されています。このように、この辞典は実質的に党中央委員会責任編集であり、この辞典の内容が党の公式見解であると一般には見られています。しかし、この辞典のどこにも、党中央委員会が編集委員を指名したことを含めて、この辞典に対する党の責任は明記されていません。『社会科学総合辞典』は党の公式見解ではあるが、党はその責任は取らないという無責任な構造になっています。
このようにしている理由は、共産党によれば、政党が学問上のあれこれの事項について定義をしたり評価を下すべきものでない(学問研究の政治からの独立)とのことです。そうだとすれば世界観を問題にするこのような辞典を発行しなければよいのです。共産党が政権を取るようなことがあれば、この辞典の政治的影響力は高まりますが党は内容について責任を取らない。こういうダブル スタンダード(民衆語では二枚舌)を使っているから日本共産党は国民の支持が得られないのです。