明石市の「あかし消費生活センター」の消費者相談員の女性 たち(全員非正規雇用)が、労働組合を作り、当局による「5 年で雇い止め提案」を押し返し、継続雇用の道を開きました。
http://www.jichiro.gr.jp/newspaper/jichiro1913.pdf
同センターでは、相談員6人が交代で勤務。市民の相談に応 じ、最初に相談を受けた人が最後まで責任を持って相談に応じ ます。一人当たり年間500件。
事件の経過は以下です。
2002年2月 当時の課長、相談員の身分を「非常勤特別 職」から、「非常勤嘱託」に変更と提案。
交通費支給や雇用保険は有利だが、雇用期限が設定(当時は 不明)。
4月 身分が非常勤嘱託に変更。職場が現在の場所に移転。
その後三人が新たに採用。雇用期限説明なし。
不安広がる。
2005年7月 組合立ち上げ。 当局「雇用期限5年」と明言。
最初の雇い止めは、2007年3月からとなる。
当局、雇い止めの理由を「人事上のメリット」としかいわず 。
2006年4月
正規職員が加わる。しかし専門資格がないので最初から研修を
受けることに。
2006年夏
駅前で組合員街宣。「悪質商法にご用心」と言うビラの最後
に「一方的な雇い止め阻止」「応援をお願いします」の文言。
2007年3月
雇い止めの最初の期限。交渉は合意得られず、期間延長し協
議継続。
8月24日 9回目の交渉。
「任期を5年とし再任を妨げない」
「再任については、相談員としての適正を判断した上で再任す
る」
「満60歳に到達する年度の3月31日をもって任期満了」
の条件勝ち取る。
交通費などはカットされましたが、雇用を守ることができま した。
もし、雇い止めが強行されていれば、新人を採らないといけ ない。そうすると多忙な上に新人教育の手間を取られ、センタ ーの機能が麻痺するところでした。
当局は、普通の役所の事務職と同じ感覚で「5年でぐるぐる 回せばなんとかなる」と勘違いしていたようです。
いろいろな教訓が見えてきます。
最大のものは、「不当なことに不当だ」と声を上げ、筋道を 立てて、周囲と連帯してがんばれば、成果がでるということで しょう。いうまでもありません。
それから、当局側の問題として、専門職(というか本庁の事 務職以外)への無理解があります。「えらい人」は大抵、エリ ートの事務職出身ですからいろいろなところをぐるぐる回る。 それはいいのです。
でも、専門職で同じことをやられたら、職場が崩壊してしま います。
危うく「「現場がわかっていない人」が、行政改革をやると 、かえって市民サービスが混乱してろくなことにならない」と いう典型パターンに陥るところでした。
それに加えて、昨今の風潮として「地道にやること」を小ば かにする傾向が事態の背景になかったか?5年でぐるぐる回せ ば良いなどと言う発想は本当に神経を疑いますが、民間でも、 地道な作業を、「単純労働」などとして、非正規雇用で使い捨 ての労働者にさせるということが進んでいます。本当に現場を 知っている人なら分かると思いますが、「単純労働」なんて実 はないのです。
昨今の「現代社会では、単純労働と知的労働に分解するから 、格差が拡大するのは仕方がない」式のイデオロギー(ドラッ カーさんらの主張の直輸入)の悪い影響が社会の各所に染み込 んでいます。そのほうが、権力の座にある小泉純一郎さんら「 ネオコン」「ネオリベラル」にとっては都合が良かったのでし ょう。
しかし、そんな認識に汚染されるようでは、管理職としての
「プロ意識の欠如」ではないでしょうか?
きちんと、現場に耳を傾けて、情報を共有し、できることと
出来ないことについてきちんと説明責任を果たす、それができ
ないならその人は、「管理」職ではありません。何か、「改革
」騒ぎの悪影響もあるかもしれない。
それから、多分「非常勤の女性の仕事」というバイアスがあ
ったと思います。「えらい人」の潜在意識の中にです。それで
、低く見られているということです。
市民に役立つ大事な仕事なのにです。
ドラッカーさん、日本で言えば、山田昌弘さんらリベラルな 人たちまでが「単純労働」などと切り捨ててしまう労働が、本 当に「単純」といえるのか?そもそも、何が大事な仕事で何が 大事でないかなどは、多分に政治的な力関係で規定されるので す。本当は大事な仕事でも、担っている人の力が弱ければ「単 純労働」などと馬鹿にされてしまうのです。
現場には女性が多いが、議会など、意思決定には女性が少な いので、無茶が通ってしまうという傾向はあります。女性を代 表する議員が多かったらこういう問題は防げるのではないかと 思います。労働組合でも、非正規雇用の女性の組合の先輩を2007 年参院選では、応援しました。「組織内候補」以上の意義はあ ったと思いますが、まだまだだと思います。