私は4月13日付けで本欄に『「4/14とめよう壊憲!護憲結集!討論集会」集会、開会前
の考察』を投稿した。
私自身は遠隔地なので、集会に関心をもちつつ直接参加していないが、修了後
に主催者から丁寧なレポ
ートを受け取った。集会の名称を主催者が「2013/4/14神戸集会」と変
えているので、以後集会
の名称についてはそのような変更を踏襲したい。
さて、集会の模様は以下の通りである。
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賛同人の皆様へ
①4/14護憲結集・討論集会は、150名の参加を得て開催出来ました。一次集会・二 次集会と6時間にわたりお付き合い頂いた広原先生、多忙な中を駆けつけて下 さった服部良一さん(前衆議院議員・社民党大阪府連代表)、松枝佳宏さん(新 社会党委員長)、長谷川羽衣子さん(緑の党共同代表)、ご苦労様でした。
②会場定員120名の1割増のレジメ・参考資料を用意しましたが、開会定刻直前に それもなくなり、ぎりぎりに来られた方には資料も椅子も無いという状態になっ てしまいました。後日お届けすることで了解をいただき、今日(4/15)メールと 郵送でお送りしました。全部でA4版36頁という膨大なものですが、具体的で解り やすく、この危機状況を乗り越えるのに必須のものであると思い準備しました。 是非お目通し下さい。
③予想を大幅に上回る参加を得て、一部の方にはご迷惑をお掛けしましたが、主 催者としてはおわびと共に、思いを同じくするこれだけの多くの方々の参加にう れしく、励まされております。地元兵庫だけでなく、京都・大阪・和歌山等から の参加もあり、今回は共産党代表の参加は得られませんでしたが 、フロアー討 議とアンケート回答には参加案内を出した護憲4党支持の方々も含めいろんな方 が参加され、貴重な意見を寄せて下さいました。
④4月20日(土)には、シンポ「革新は生き残れるか 新しい変革の主体を考える」 パネリスト:広原盛明(元京都府立大学学長)・藤永のぶよ(おおさか市民 ネットワーク代表)・大西 宏(慶応義塾大学教授)、コーディネーター:碓井 敏正‘(京都橘大学名誉教授)が、13時30分~京都市生涯学習センター (075-812-7222)で開催され、その実行委員会メンバーの神戸集会への参加もあ り、情報や意見の交換も行われました。
⑤7月の参院選、更にその後の2016年の参院選までの3年間は、改憲の是非を問う 「国民投票」に政治決戦の舞台が移る可能性は極めて大きい。中曽根元首相が言 う「戦後体制の総決算」の時期がひしひしとに迫ってくる中で、「革新勢力」だ けでな「護憲勢力」の結集が急がれます。神戸/京都でのこの様な集会が、全国 各地に拡がっていけるように、神戸での集会も継続して話し合える場を持ってい こう…となりました。
⑥4/14現在で計125名・団体となった賛同者は、4/14討論集会実行委員会の取組へ の賛同として申し出て頂きました。従って、4/14集会開催以後については、実行 委員会で近日中に話し合い、改めて皆さんのご意向をお伺いしたいと考えており ます。きちんとした組織や体制があるのではなく、その時どきの準備会で話し 合ったことを元にして、メーリングリストで示される皆さん方ひとりひとりの思 いをあつめ、それに励まされながら、1月からここまで歩んできました。今後と も一緒に考えて下さるようお願い致します。 2013年4月15日
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4/14神戸集会 実行委員会代表 佐藤三郎
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神戸集会の内容は、以上のような経緯であった。私は広原盛明氏の集会で のレジュメと資料原稿をダウンロードして、重要な知見を得た想いがした。とく に集会でのレジュメには、かつて京都市長選に保守勢力に対峙して僅差まで追い 詰めた革新共闘候補だった広原氏の知識人としての面目躍如たる内容にあふれて いた。元々町作り研究を都市工学の立場から、京都大学で西山卯三氏の薫陶を受 けた広原氏の地域づくりの実践的課題にあふれた見識は見事である。
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如何にして護憲勢力を結集するか~戦後最悪の歴史的反動期 (2013~2016年)を目前にして
広原盛明
1.2013~2016年は戦後最悪の歴史的反動期
(1)2012年総選挙における改憲勢力の圧勝で、2/3以上の議席占有
主導勢力:自民294、維新54、みんなの党18、計366(76.3%)
追随勢力:公明31、民主57、 計 88(18.3%)
護憲勢力:共産8、社民2、未来(生活)9、 計 19( 4.0%)
(2)2013年参院選挙における改憲勢力の結集、護憲勢力の沈黙
自民・公明の選挙協力体制の継続
維新・みんなの党の選挙協力体制の継続
民主・生活・社民の不透明な関係
共産の孤立
(3)2013年参院選から2016年参院選までの3年間、衆参両院で改憲勢 力が2/3以 上議席を占有
憲法96条改定を皮切りに憲法全面改定の具体化
自民党改憲草案が骨格
戦後最悪の歴史的反動期
2.衝撃的なNHK世論調査結果(2013年4月8日)
(1)安倍内閣支持率 ( )は2013年1月
支持66%(64%)、不支持19%(22%)
(2)政党支持率 ( )は2013年1月
自民43.6%(37.8%)民主6.1%(7.6%)維新2.1% (6.5%)
公明 3.7&(4.0%)みんな1.3%(3.7%)共産2.0% (2.7%)
社民 0.7%(0.8%)生活 0.4%(0.5%)支持なし 34.5%(30.8%)
(3)日銀の金融緩和
「大いに評価す る」12%、「ある程度評価する」46%
「あまり評価しない」27%、「全く評価しない」6%
(4)参院選自公過半数の是非
「望ましい」23%、「どちらかといえば望ましい」37%
「どちらかといえば望ましくない」21%、「望ましくない」12%
(5)憲法改正の必要
「改正する必要があると思う」39%、「改正する必要はないと思う」 21%
「どちらともいえない」33%
(6)憲法96条の改正
「賛成」28%、「反対」24%、「どちらともいえない」42%
(7)改憲勢力2/3の是非
「望ましい」20%、「どちらかといえば望ましい」37%
「どちらかといえば望ましくない」20%、「望ましくな い」12%
(8)小選挙区「0増5減」の方針
「賛成」32%、「反対」17%、「どちらともいえない」42%
(9)今国会中の衆院定数削減を含む選挙制度の見直し
「必要がある」50%、「必要はない」9%、「どちらともいえない」 33%
3.国民世論の地殻変動が始まっている
(1)安倍内閣の支持率が高レベルで安定している
→与党・野党を問わず批判勢力がシュリンク(萎縮)している
→情勢を切り開く批判力のある人材が不足している
(2)自民党支持率が突出して高い
→自民党への国民感情が好転している
→安倍首相の資質・能力を軽視できない
(3)国民世論が改憲に向かって急傾斜している
→戦後政治の なかでこれほど世論の右傾化が起こったことはない
→なのに、国民に警鐘を鳴らすジャーナリズムの危機意識が弱い
(4)護憲勢力の姿が見えない
→革新政党・革新勢力が弱体化している
→政党独自の延命運動に熱中していて、情勢がつかめない
(1)~(4)の背景として次の三点があげられる。
(1)アベノミクスによる株式上昇による景況感の改善が内閣支持率を押し上げ ている
→「食えない民主主義よりも食える独裁」への共感が広まっている
→ワイマール体制の崩壊とナチズム進出の時代との相似形
→2013年夏の参院選終了まで街角景気が崩れる心配はない
(2)北朝鮮・中国の軍事的脅威が国民心理を不安状態に陥れている
→「平和憲法では国を守れない」との意識が高まっている
→在特会などで排外主義運動に対する国民の警戒心が薄い
→今後3年間で北朝鮮・中国の強硬姿勢が変化するとは思えない
(3)9条を表に出さないで96条改憲から手を付ける戦術が成功し ている
→96条が「改憲のマスターキイ」であることに国民が気付いていない
→96条が改訂されると「芋づる式」に改憲される
→最終的には、自民党改憲草案をコアとする全面改憲に一気に突き進む危険 性もある
(4)橋下徹氏のハシズムと一体になったマスメディアの影響力が依然として強 い
→マスメディアの論説部門の右傾化がひどい
→改憲派イデオローグの跳梁、護憲派知識人の封殺
→国民の民主主義的感覚や政治意識が劣化してきている
4.護憲勢力を如何に結集するか
(1)参院選後の「護憲円卓会議」の結成
→参院選には間に合わない、ただし「呼びかけ」など準備は可能
→広範な護憲政党、護憲勢力を結集した 開かれた共闘組織の結成
→2013~2016年の3年間に的を絞った護憲運動方針の具体化
→全国組織でも地方組織でもできるところからスタート
(2)改憲国民投票に備えた国民運動の提起
→護憲運動の街頭化(見える化)、街頭の空気を変える
→護憲講師団による全国各地での「護憲フォーラム」の日常的開催
→反原発デモに学ぶアクション・プログラムの展開など
(3)地方議会への働きかけ
→護憲・反原発首長のネットワーク化
→議会公聴会、議員懇談会への働きかけ
→国民投票に先立つ地方住民投票の提起など
(4)「護憲円卓会議」の政治的意義
→政治情勢を変革し得る政治勢力としての現実的存在感を示 すこと
→国民の信頼と安心とを獲得できる政治勢力として成長すること
→現在の政治情勢に絶望している優れた人材を掘り起こすことなど
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このレジュメを一読しただけで、広原盛明氏の危機意識の的確さと対抗戦略への
展望がわかる。広原氏は、実践的である。具体的である。当日の集会では、このほか
に資料として、インターネット「リベラル21」の広原盛明氏のブログや雑誌
『ねっとわーく京都』3月号4月号5月号の広原論文が配布された。
この集会の運営者側に問題があるのか、日本共産党に問題があるのか、という問題
の立て方ではもはや現状に対応しきれない。広原氏の現状分析のような鋭さが共産党
の総括から出たことはない。そこで日本共産党を責めても埒はあかない。国民の
2~3
%にしか支持者がいない共産党を批判するよりは、広原氏の具体的提案「護憲円
卓会議」のようにひとつずつ具体的提案を示して現状に肉薄することだ。
キューバ革命は、キューバ共産党がおこしたのではない。カストロやゲバラ は、党員 ではない。コミンテルン型共産党路線は時代の賞味期限を終えた。「円卓会議」 は、既に フォーラム21のような実例がある。広原提案を集会参加者を中心に国民的規模 で吟味し て検討して実現 していく。そのような道は新たな期待をもたせる。今回は集会 の様子を 報告させていただいたが、神戸集会の提案を広く吟味し合う熟成が次の課題とな ろう。