投稿する トップページ ヘルプ

一般投稿欄

さいきん気づいた情けない話――『前衛』臨時増刊における朝鮮総連の「扱い」に関して

2001/3/28 広田薫、20代、学生

 ご存知のように、第22回党大会は『前衛』臨時増刊として出版されています。しかし、すでに「赤旗」で読んでおり、わざわざ改めて『前衛』臨時増刊で読んでいる方は少ないのではないかと思います。私もそうでした。今日、図書館に寄ったついでに、置かれていた第22回党大会『前衛』臨時増刊を手に取るまでは。なんとなしに手にしてパラパラめくったのですが、ある“奇妙”なことに気づきました。
 周知のように、党大会では、国内来賓のあいさつが行なわれ、海外からのメッセージ(共産党や諸団体などから)が届けられ、あるいはあいさつが行なわれます。国内団体・個人のメッセージ・祝電もあります。それらは『前衛』臨時増刊に収められます。その来賓あいさつなどを見て、気づいたことがあります。

 従来、『前衛』臨時増刊では、挨拶などは、表記に変遷はありますが、内容としては、「海外来賓」「国内来賓」「海外からの挨拶・メッセージ」「国内団体、個人のメッセージ」と区分されていました。「海外」というのは基本的には、他国のいわゆる共産党・労働者党、民主的政党などです。
 しかし、今回は従来「海外からの挨拶・メッセージ」に入るような箇所の表記は「外国の政党、在日外国人組織からのメッセージ」となっています。「在日外国人組織」とは何か? 1つは、今回関係を回復し、約20年ぶりに大会に参加した朝鮮総連です。

 それでは関係断絶以前に参加した大会での扱いはどうだったのでしょう?
 朝鮮総連が22回大会以前で最後に参加した第16回党大会(1982年)の『前衛』臨時増刊では、国内からの「来賓あいさつ」の項にまとめて入れられています。
 掲載の順序はどうでしょう? 第16回党大会『前衛』臨時増刊「来賓あいさつ」は、「(大会での発言順)」に掲載されています。
 そこでは、日本共産党全国後援会代表委員の畑田重夫氏のあとに、在日本朝鮮人総連合会議長の韓徳銖氏が「熱烈な祝賀と連帯のあいさつ」をのべ、「日本共産党がたび重なる難関を克服し、日本の労働者階級の歴史的偉業を遂行するため一貫してたたかっていることにたいし心から敬意を表し」、「(拍手)」をうけていました。そのあとには、安保破棄・諸要求貫徹中央実行委員会事務局長の近藤氏、全国商工団体連合会会長の内田氏等々の挨拶の発言が続いています。「外国からのメッセージ」では、「到着順」にメッセージが掲載され、40のメッセージの33番目に、朝鮮労働党からの「親愛なる同志のみなさん」への「親善的あいさつ」が掲載されています。

 今回の掲載順はどうでしょう? 今回、「外国の政党、在日外国人組織からのメッセージ」に入れられた朝鮮総連のあいさつは、「在日外国人組織」からのあいさつとして別扱いになり、「外国の政党」からのメッセージすべてを掲載した上で最後に1つ載せられています。
 また、今回の「党大会に参加した外国来賓」のなかには、「<在日外国人団体>」という項が設けられ、今回はじめて参加した在日本大韓民国民団、そして朝鮮総連からのそれぞれ2氏の肩書き・氏名が記載されています。

 かつて、国内からの「来賓」となっていた、朝鮮総連は、「外国の政党、在日外国人組織からのメッセージ」として扱われているのです。しかも、その中で別扱いとしていちばん最後に掲載して。
 そしてまた、「<在日外国人団体>」を「党大会に参加した外国来賓」に括ることで、韓国民団とあわせて限りなく「外国」に近い存在として取扱っているといえるのではないでしょうか。

 いうまでもなく、朝鮮労働党にたいしては、なんらの肯定的感情をもちません。朝鮮総連にかんしていえば、とくに一般組織構成員においては、いろいろな人がいるでしょうし、さまざまな考えをもっているのかもしれません。しかし、日本共産党が朝鮮総連とじつに曖昧な形で関係修復したことにたいしては必ずしも肯定的には思えません。いわゆる「チュチェ思想」には興味すら抱けません。
 しかしそうであっても、そのような「指導部」の世界の問題は別として、こんにち、現に日本に住み、生活し、すでに二世、三世と存在し生活環境がもはや定着している、いわゆる朝鮮民族系の人々の団体を「外国来賓」と一緒に括るという感性はおよそ理解できません。また、「外国の政党、在日外国人組織からのメッセージ」に括った上で別扱いにして最後に掲載、というのもいかがなものかと思わずにおれません。最初から「外国の政党からのメッセージ」と「在日外国人組織からのメッセージ」と区分することすらしないのはなぜでしょう?
 くりかえしますが、朝鮮労働党にはなんの肯定的感情もないし、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を、何らかの限定詞付きであるにせよ、「社会主義」とか「労働者国家」などと規定する気にはとてもなれません。しかし、朝鮮労働党、朝鮮、朝鮮総連の団体、国家としての評価の問題と、日本に住み生活するいわゆる朝鮮民族系の人々の問題とはまったく別なはずです。まして、朝鮮総連と関係を修復し、朝鮮労働党との関係回復も語られるような時期にあって、こうなるというのはどういうわけでしょう?
 これは、すでに「さざ波通信」第17号で取り上げられていた、「在日外国人」の入党を拒み国政参政権に反対する現在の路線とも密接不可分のものではないでしょうか(もちろん、このような路線を生み出す基盤は以前にもあったでしょうが)。

 ついでに、同党ホームページの「第22回党大会」の部分を見てみました。なるほど、国内の【来賓あいさつ】はあえて見出し付きで括って掲載されており目立ちますが、海外からのメッセージなどは【しんぶん赤旗の報道から】として記事が並んでいる中からみていかないとわかりません。
 これを、第21回大会のところと比較してみると、以下のように掲載されており、国内来賓も海外来賓も同格にまとめて並べられています。第21回党大会と比べてすら、微妙とはいえ、この違いです。もっと以前からホームページがあったらどうなったでしょうか。

・日本共産党第21回大会への外国からの祝辞(五十音順)(97年9月29日付「しんぶん赤旗」)
・第21回大会に参加の海外来賓紹介(97年9月23日付「しんぶん赤旗」)
・国内来賓のあいさつ
・党大会日誌(第1日目~第5日目)

 外国の共産党などには、他国共産党などへのリンクがあるところも珍しくないですが、日本の共産党には国内の団体(「外郭団体」といわれるような団体)にしかリンクはありません。もっとも、これは一貫しています。

 重箱の隅のような細かな話とは思いますが、現在の党の姿をあらわす1つのエピソードといえるでしょう。
 すでに紹介された、皇族への特別敬称使用や容疑者実名容認など、この類いの思想的後退の表れと思えるようなエピソードは多々あるでしょうし、正直言って、1つ1つは「些細な」ことであり、同時に、そのような些細な次元にまで及んでいる今日の党の姿をいちいち見るのは本当にウンザリさせられるし、怒りを通りこして情けなくなることです。そして、それをいちいち取り上げるのもおよそ楽しさとは無縁のウンザリする作業です。
 しかし、それでも1つ1つが積み重なって後退が進行していくのだろうし、歯止めをかけうるかは正直あまり期待しがたいにせよ、せめてこうして少しでも多くの党員はじめ諸氏に喚起し、1つのエピソードとして記しておこうと思い投稿します。これを読んだ党中央諸氏は、せめてホームページの構成なりとも変更することを検討してみてはいかがでしょう?