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党員用討論欄

これまでの議論を踏まえた建設的な討論を>タケル同志へ

2000/6/5 編集部S・T

 少し遅くなりましたが、5月25日付のタケル同志の投稿に返答します。
 全体として、タケル同志の投稿は、私たちがすでに過去の『さざ波通信』や編集部の投稿等を通じて明らかにした疑問や問題を繰り返したものになっています。たとえば、民主党の政治的・階級的本質についてです。これまで何度も書いているように、各々の政党をその階級的基盤やその幹部構成や政策、思想、歴史などから、その政治的・階級的本質を解明することこそが、マルクス主義ないし科学的社会主義のイロハであり、それをバイパスした上で、民主党との連合政権の可能性を論じることはできません。私たちがそうした当然の手続きを踏まえて論じているにもかかわらず、タケル同志は「編集部の考えは極めて固定的、形而上学的」と非難するだけです。タケル同志が本来なすべきは、民主党の階級的・階層的基盤、その政策や幹部構成、その思想や歴史を検討し、そのうえで私たちの判断の誤りを指摘するべきです。なぜそれをしないのでしょう?
 またタケル同志は次のように述べています。

では逆に伺いましょう。もしこの選挙で例えば、自民195、民主190、共産50、公明30、社民5、自由5、保守5という様な結果になったとします。単純な足し算にはならないとは思いますが、この時民主党が政権をとるためにどのような政策的妥協がされれば、民主党と「暫定」連立政権を組むことが可能ですか。あなた方の理論で言えば、「新保守主義と決別します」とでも表明すればいいということでしょうか

 この種の問題についてはすでに、『さざ波通信』の創刊号で具体的に論じられています。創刊号の政権問題と党の責任のところで、H・T氏は、そのときの時点で与党が過半数割れをし、共産党がキャスティングボートを握った場合に、首相指名選挙において共産党がどのような対応をすべきであるかについて、次のように述べています(ちなみに当時の民主党党首は菅直人です)。

この場合は、1回目の選挙ではあいかわらず不破委員長に投票するべきですが、2回目の投票では菅直人に投票するという選択肢もありうるでしょう(ただし、必ずそうしなければならないわけではありません)。これは、菅直人を支持するからでも、ましてや、菅を首相とする連合政権に入るためでもありません。すでに述べたように、民主党は、新自由主義政策を実行することを使命とする政党であり、安保体制を積極的に容認している政党です。このような政党を中心とした連合政権が、何らかの「よりましな」政権になりえないのは明らかです。
 共産党議員が2回目の投票で菅直人に投票するとしても、それは、民主党を中心とする政権が自民党政権よりもましでも何でもないことを、国民自身が自分の目と体験で判断できるようにするためです。
 したがって、共産党は、民主党を中心とする政権への反対姿勢、対決姿勢を明確にした上で、菅直人に投票するべきでしょう。共産党は国民に向けてこう言います。
 「われわれは、民主党を中心とする連合政権がよりましな政権にはなりえないことを確信している。しかし、われわれは国民の審判をないがしろにしたくない。投票した有権者の多数は、民主党中心の政権を望んでいる。われわれはその希望を尊重する。われわれは、民主党中心の政権が形成されるのを妨害しないが、それを支持もしない。われわれは、国民の皆さんが自分の目と経験を通じて、民主党政権の本質を見抜くことになるだろうと確信している」。
 このように説明すれば、有権者は理解するでしょう。そして、実際に、民主党を中心とする政権が反民衆的政策を実施し、その政権に対する幻想が崩れたとき、その政治的結果から共産党が最も政治的利益を得るでしょう。
 逆に、この民主党政権に共産党も参加した場合、その政権に対する幻想が崩れたとき、共産党もいっしょに政治的権威を失墜させ、自民党が最も政治的利益を得ることになるでしょう。このような結果を招くことこそ、最も政治的に無責任な行為であると言うべきではないでしょうか。

 以上の文章を読んだ上で、それに噛み合った議論をしていただきたいと思います。なお、この発言は、民主党の党首が菅直人であったときのものであり、現在の党首は改憲派の鳩山由紀夫であり、なおさら、民主党を中心とした政権に対するいかなる支持も与えるものではないことを有権者に明らかにする作業が重要になってくるでしょう。
 ところでタケル同志は、共産党と民主党との連合政権をつくることを前提にした上で、次のように述べています。

私はこの場合の民共政権は、長期に政権を担当することは不適切だと思います。選挙政策での一致点はそもそも非常に幅の狭いものですから、選挙管理内閣になる可能性が高いです。そこで出来ることは極めて限られますが、少なくとも安保を進める政策を取らないことを前提に、一致している「財政再建の方向性を示し、公共事業の無駄を削る」ことくらいでしょう

 「選挙管理内閣」とは、できるだけ早期に総選挙を行なうことを前提にした内閣です。あなたの主張だと、総選挙による国民の審判があったばかりだというのに、ただちに国会を解散して再び総選挙をやる内閣をつくるということでしょうか? 実にナンセンスな提案です。そんないいかげんな内閣がもしできたとしたら、国民は2度とそのような内閣を構成した政党を信任しはしないでしょう。いったん、反自民に流れた投票はすべて自民党に戻るでしょう。
 さらに、この政権は、驚くべきことに、公共事業を削ることしかしない政権というわけです。民主党は、単年度では公共事業を2兆円しか削減しないことを選挙政策でうたっています。つまり、反自民の鳴り物入りで成立した政権は、その予算案において、公共事業を2兆円だけ削るという修正をする以外はすべて自民党のこれまでの予算案と同じものをつくり、それを通しただけで国会を解散して総選挙をもう一度やるというわけです。これほど有権者を馬鹿にした政権があるでしょうか! これが自民党よりもましな政権であり、共産党が入閣するに値する政権だというわけです。国民はすっかり落胆して、自民党が再び盛り返すでしょう。
 最後にタケル同志は次のような質問をしています。

 ちなみに以前伺った2つの質問にもお答え下さい。
1)あなた方が民主党に支持母体階級であると考えておられる「都市上層」とはなんですか。
2)「階級的本質」を問題にして統一戦線から排除することは科学的社会主義者の態度として適切ですか。

 以上の質問についても基本的にこれまでの『さざ波通信』や各種投稿で議論されていると思いますが、ここで改めて簡単に説明します。
 「都市上層」とは、一個のまとまった「階級」ではなく、新自由主義政策によって一定の恩恵を受ける、あるいは恩恵を受ける可能性のある諸階層を指します。わかりやすい例を出しましょう。新自由主義政策としてはたとえば、所得税の最高税率を低くして、消費税をアップさせるという税制改革があります。この改革によって、増減税で差し引き増税になる階層と差し引き減税になる階層が存在します。そのボーダーラインは、増減税率によって変動しますが、おおむねね単独年収700万~800万と試算されています。この年収ライン以上を単独で稼いでいる人々、および一定の年齢に達すればそのラインをオーバーしうる出世ラインに属している人々は、典型的な都市上層です。そしてマスコミで新聞記事を書いている連中やテレビに出演してもったいぶった意見を言っている連中はすべてこのラインを大きく越えています。加えて、独占大企業の大卒男子ホワイトカラー(その中でも競争に強い部分。リストラ組は別)、また、大学教授、弁護士、税理士、医者といった知識人階層もおおむねその中に入ります。また、今後の経済構造変化に有利な職種についている人々も、新自由主義に親和的になりうるでしょう。とりわけ情報・通信産業の上層ないし中核部分を担っている人々(その周辺および下層を担っている人々はまったく別)がそうです。
 人口比的には、この都市上層は、彼らに養われている成人家族も含めれば、だいたい有権者の2割程度を占めるものと思われます。これが新自由主義政策を支える階層的基盤です。レーガンノミックスやサッチャーリズムを熱烈に歓迎したのも、それぞれの国における同種の階層です。
 なお誤解ないようにつけくわえておきますが、私たちはこの階層に属するすべての人を敵視しているわけではありません。実際には、このような諸階層内部にも、さまざまな利害の相違や政治的分岐が存在しています。都市上層の中にも、新自由主義政策によって部分的な被害をこうむる人々は多数います。また逆に、上層に属さない人でも、新自由主義を支持する人もいます。また、上層の中でも、自分たちの階層的利害を一面的に主張することは社会の多数の利益を損ない、社会的弱者を抑圧することになることを意識している人々はおりますし、そういう人々は異なった政治的行動をするでしょう(革新的弁護士や民医連の医者など)。
 なお、階層的基盤と政治的態度との関係について詳しくは、『さざ波通信』第5号「新ガイドライン法の成立と従属帝国主義」(下)「対抗の戦略――その方向性と担い手」をお読みください。
 第2の質問については何度も説明したことだと思いますが、まったく理解されていないようで、非常に残念に思います。私たちは何度も強調しているように、共産党と民主党との統一戦線一般、共闘一般を否定したことはありません。盗聴法案反対をめぐって共闘が実現することは進歩的なことであり、当然のことです。しかし、そのことと、いっしょに政権に入ることとはまったく違います。
 一般の共闘においては、一致点のみにおける共闘が可能ですが、政府においては、その政権が行なうすべての政策に連立与党の一つとして共同の政治的責任を負うことになります。とくに共産党がめざしている暫定連合政権は、「自民党政治より1歩でも2歩でもまし」でさえあればよいというものですから、その「1歩2歩」以外のすべての政策がこれまでの自民党政治とまったく同じでも、すなわち福祉切り捨て、消費税増税、軍備拡張、教育現場における「日の丸・君が代」の押しつけ、等々を続けてもいいことになります。共産党はそのような政策すべてに与党として責任を負い、野党と有権者に対して、そうした政策を擁護しなければならなくなります。与党のときは支持した政策を、今度また野党になったときに批判できるでしょうか? まさに、「1歩でも2歩でもまし」でさえあればいっしょに政権に入ってよいという現在の政策は絶望的であり、自殺行為です。
 ここでも誤解の余地のないようにつけくわえておきますが、私たちは何も、いっしょに政権に入るにはすべての政策が一致していなければならないと言っているのではありません。ましてや、相手の綱領を変える必要があるとも言っていません。しかし、少なくとも、めざしている政策的方向性が基本的に一致していなければなりません。その点で、共産党の政策と民主党の政策とはその方向性が正反対であり(この点については詳しい説明は繰り返しません)、そのような政党による連合政権は、最も無原則的で最も不毛な野合政権となり、必然的に、身動きがとれなくなって惨めな破産をとげ、自民党を利する結果になるでしょう。
 何度も言うように、現在、共産党が目指すべきは、性急な政権入りではなく、自民党・保守党を中心とする「保守ブロック」と、民主党・自由党を中心とする「新自由主義ブロック」に対抗する、第3の「護憲と革新のブロック」を形成することです(ちなみに、コウモリ政党である公明党は、その場その場に応じて「保守ブロック」と「新自由主義ブロック」のどちらかにつくでしょう)。そのためには、何よりも、共産党自身が選挙で躍進することだけでなく、新社会党も国会に議席をとれるように配慮し、新社会党が唯一の公認候補を出している兵庫3区において、共産党の独自候補をおろし、新社会党候補者(岡崎ひろみ)を事実上の革新統一候補にすることが必要です。そして、国会内においては、民主党ブロックに追随している社会民主党を民主党ブロックから引き離し、「護憲と革新のブロック」に引き入れる巧みな戦術が必要です。
 そして、この「護憲と革新のブロック」を、全国に渦巻いている人民の要求と下からの大衆運動を代弁する能動的受け皿とすること、その要求を国会論戦に持ちこみ、実際の行政や政策に多少なりとも反映させることです。このブロックを、あらゆる問題、あらゆる闘争を通じて鍛え上げ、大衆運動と緊密に結びつけることが必要です。このブロックは、大衆運動を鼓舞するとともに、そこから真摯に学び、成長していくでしょう。
 以上が本来、共産党が追求するべきヘゲモニー戦略です。このような地道な戦略の延長上にはじめて、民主連合政権の道が切り開かれるのです。