私たちはなぜこのサイトを開設したか?(一問一答)

Q:どうしてこのホームページをつくったのですか?

A:私たちがこのホームページをつくったのは、まず第1に、日本共産党の政策・路線・組織構造・歴史・イデオロギー等々について、党外知識人による反共主義の立場でもなく、また党員知識人による共産党礼賛の立場でもなく、末端の党員自身による批判的な検討と討論の場を設けることが、現在非常に重要になっていると考えたからです。とりわけ、国会内で唯一の革新野党となった共産党の路線や政策が持つ重要性はきわめて重く、そうした路線や政策の決定を党指導部の独占とするのではなく、全党員の英知を結集することがいつにもまして切実になっているからです。

 第2に、にもかかわらず、党内の体制は旧態依然としており、数十年にわたって最高指導者として君臨してきた宮本顕治氏が引退した後も、党内民主主義の余地はまったく広がっていません。この間、たとえば、不破哲三委員長(当時)の暫定政権構想が、何ら党内での議論や正式の決定を経ずに、いきなりマスコミへのインタビューや記者会見という形で発表されましたが、こういうことが今なお公然と許されており、その後の3中総において、このような手続き違反が批判されるどころか、まったく問題にもされず、中央の報告があいもかわらず満場一致で承認されています。また、2000年6月には『朝日新聞』のインタビューの中で、不破氏は、「有事の際の自衛隊の活用は当然である」と発言しました。これは、第20回および第21回党大会の決定に明らかに反するものであるにもかかわらず、なんら問題にされませんでした。第22回党大会で同趣旨の決議が挙げられましたが、不破氏の発言自体は決議が採択される4ヵ月前のものであり、そうした発言の問題性は何ら変わりません。党内討論や大会決定を無視する形で一部の幹部が新しい路線をマスコミに向けて発表し、それが後で追認されるという事態が党内民主主義に反しているのは明らかです。このような悪習には終止符が打たれるべきです。

 本来なら、このような討論の場は、党中央自身が『しんぶん赤旗』か、あるいは、独自の党内討論誌のようなものを通じて設定するべきですが、共産党指導部は、かたくなに、このような民主主義的措置を拒否し続けています。共産党が建前としている「民主集中制」によれば、みんなで民主的に討論し、多数決で決定し、決まったことはみんなで実行する、ということになっています。しかしながら、私たちが議論する場は、党大会前の『評論特集版』(すでに廃刊されました)での討論を除けば、支部というきわめて狭い枠に限定されており、党の路線や政策に対して、いったい党内でどのような議論が出ているのかを知るすべをもっていません。党中央が決定した政策や路線を礼賛し肯定する議論は、『しんぶん赤旗』の記事や日常の指導を通じて毎日のように党員の頭のなかにたたき込まれますが、それに対する反対意見や批判的意見については、一般の党員は――たまたま支部内にそういう意見の持ち主がいる場合を除いて――まったく知ることができないのです。また大会前の討論も3年に一度に限られており、しかもたった2000字しか意見表明することができません。さらには、第22回党大会の規約全面改定において、かつて認められていた「機関紙誌上での討論」権さえ削除されるに至りました。つまり、「民主的に討論する」ための材料が一方の側(すなわち中央の路線を肯定する側)に圧倒的にかたよっているのです。これで「民主的に討論」していると言えるでしょうか?

 たとえば、先に紹介した不破政権構想について、少なからぬ党員は違和感ないし疑問を持ったはずですが、『しんぶん赤旗』や『前衛』の論説やインタビューや日々の指導によって、そうした疑問は押さえ込まれてしまいました。一方的に、あの政権構想は正しい、これまでの立場の延長にすぎない、という議論をえんえんと聞かされれば、誰しもそんなものかと思ってしまうでしょう。そうした一方的な情報によって形成された党内合意が、通常のブルジョア民主主義の水準に照らしてさえ不十分なものであるのは明白です。党員は、中央の方針・路線を支持し肯定する議論とともに、それを部分的ないし体系的に批判する議論(もちろん党員自身による)や、あるいは場合によっては中央の方針に代わる対案を知ったうえで、どちらがより正しいかを判断することができなければなりません。そうしてこそ、党員の政治的成長が勝ち取られるし、また、民主集中制もはじめてその名に値する制度となることができるのです。

 したがって、このホームページは、日本共産党が標榜する民主集中制を補い、それを実効的に機能させるものとして、開かれます。ですから、そこでの議論は、主として、『しんぶん赤旗』などでは読むことのできない批判意見が中心となりますが、あくまでもその批判は、ことがらに即したものであり、批判のための批判ではありません。また、当たり前の話ですが、このホームページは、共産党を攻撃したり、ましてやその解体や弱体化を目的としたものではありません。むしろその反対であり、共産党を真に強化し、活性化させるためのものです。

Q:このホームページを運営しているのはどういう人々ですか?

A:人数は明らかにできませんが、全員が十年以上の党歴を持つ党員であり、かつ自らの雇用労働によって生計をたてている労働者です。私たちはこれまで、選挙活動、党勢拡大、さまざまな大衆運動など、草の根の活動を地道にやってきました。私たちはこのことに誇りを持っていますし、また今後もこのような地道な活動をやり続けることでしょう。

Q:このホームページを運営することは、日本共産党の規約にある、分派活動の禁止規定に違反しませんか?

A:私たちのこの活動は分派活動ではありません。自らの意見を公表し、討論の場を設定するというのが、私たちの活動の中身であり、党内で多数を獲得するために特定の分派を結成して活動することとは、まったく性格を異にします。また、規約には、党内の問題を党外に持ち出してはならないという一節がありますが、私たちの活動はこの規定にも違反していません。というのは、私たちが論じるのは、すべて党が正式に発表した政策や方針であって、それはすでに党外の問題にもなっているからです。もし私たちが、このホームページにおいて、党外の人には知ることのできない党内部の秘密を公表したら、それは「党内問題を党外に持ち出すこと」になりますが、私たちはそういうことを目的にはしていません。

Q:分派を結成しないのはどうしてですか?

A:日本共産党指導部は、何であれ分派を反党的で、党を破壊するものであると考えており、新しい規約でも分派は相変わらず禁止されています。しかし、分派そのものを反党的とみなすこと自体、そもそもまったく理論的にも歴史的にも根拠のない考えです。詳しくは別の機会に譲りますが、反党的な分派もあれば、そうでない分派もありえます。したがって私たちは、分派そのものを悪とする立場には立っていませんが、それにもかかわらず、私たちは分派を結成する意志を今のところ持っていません。その理由は2つあります。1つは、日本共産党の現行規約が分派を禁止しているかぎり、その禁止の問題性について批判することは可能であっても、とりあえずは悪法も法であって、その法に従うつもりだからです。

 2つ目の理由はもっと本質的な理由です。分派というものは、たとえそれ自体が悪ではないにしても、しかるべき政治的準備もなしに、あるいは首尾一貫した綱領的基盤なしに、ごく少数の人間だけで安易に結成したりすることのできないものだからです。分派をもてあそぶことは許されません。日本共産党の現在の党員のレベルは、何らかの本格的な分派を結成するような水準から著しく立ち遅れています。戦後数十年間にもわたって、党員たちは、自分たちの頭で考え自分たちの意見を集団的に討議しそれを体系的にまとめるという政治的訓練をしてきませんでした。中央の意見を鵜呑みにし、それを上意下達で下に伝え、ひたすら中央が正しいという前提で決定を学び、たとえ疑問が湧いたとしても、それは自分の学習不足と確信の欠如から来ていることであって、もっときっちり学べば「胸に落ちる」のだという、ほとんど宗教的な習慣しか培ってきませんでした。このような、共産主義者としてあるまじき態度があまりにも深く定着し体質にまでなっている現状のもとで、数人の人間だけで分派を結成してみても、ほとんど有効性を持ちえないでしょう。

 また、私たち自身も、体系的な綱領的立場を確立する水準にまではいたっていません。いま必要なのは、とりあえずは、個々の党員が、中央とは違う党内意見の存在を日常的に知ること、そしてそれを自分自身の頭で検討し、自分の意見を形成し、他の党員と討論する政治的訓練を積むこと、中央の意見が無条件に真理であるとする信念を相対化すること、そしてそれを通して一定の体系だった集団的意見を構築すること、などなどです。

 そうした立場から、私たちは分派を結成するのではなく、こういった意見表明+討論のためのホームページを開いたのです。

Q:他の政治組織と関係がありますか?

A:何らかの公式の関係はいかなる政治組織ともありません。ただし、私たちの個人的な知り合いの中には、もちろんのこと、別の政治組織に属している人もいます。不破議長や志位委員長だって、国会議員ですから、他の政党にたくさんの知り合いがいるのと同じように、私たちの中にも、知り合いにそういう人がいるわけです。しかしながら、何らかの政治指導を受けていたり、ましてや資金援助を受けるというようなことは、まったくありません。

Q:以前に党を除籍ないし除名された人々と関係がありますか?

A:これも上の答えとよく似た答えになります。公式にはいかなる関係もありません。ただし、知り合いにそういう人がいるのは事実です。しかしながら、私たちは、以前に党を除籍ないし除名された人々とはいかなる親しい関係も持っていません。その理由は2つあります。1つは、私たちが党の現状に対して疑問を抱いたのが非常に遅かったため、これらの人々が華々しく活躍していた時期には、基本的に中央に忠実な党員だったからです。その後、多少なりとも、そういう人々の存在を個人的にも知るようになりましたが、個人的に親しくなることはありませんでした。

 2つ目の理由は――そしてこれが最も本質的な理由ですが――、これらの人々はみな基本的に右からの共産党批判者であるという共通性を持っているのに対し、私たちはむしろ左からの批判者というスタンスを堅持しているからです。とりわけ80年代以降に除籍ないし除名になった人々は、党内民主主義の拡充や中央崇拝からの決別といった点では、私たちと部分的に意見が一致しますが、政策や綱領路線に関しては、共産党をありきたりの改良主義政党ないし社会民主主義政党に、もっとひどい場合には単なるリベラル政党にすることを望んでいました。最初はそうでなかった人々も、1989~91年の東欧ソ連の崩壊や、92~93年の政治改革騒動のなかで、ますますそういう立場に移行していきました。私たちはこのような傾向とは根本的に立場を異にしています。ですから、以前に除籍ないし除名された人々と個人的に知り合いになった場合でも、けっして親しくなることはありませんでした。

Q:最後に何か一言あれば。

A:党員および党支持者のみなさん、現在、日本共産党は歴史的な岐路に立たされていると思います。一方では、90年代後半における選挙での躍進に見られるように、共産党への国民の期待は高まっており、またその躍進によって議会内での共産党の力はかなり強まりました。しかし他方、末端の現場では、労働者人民の多くの既得権が脅かされ、あるいは、暴力的に奪われています。そして、そうした野蛮な攻撃に対し、共産党、および党員を中心とする大衆組織は、劣勢を余儀なくされ、つぎつぎと敗北をこうむっています。さらにまた、学生党員や青年労働者党員の比重はますます小さくなり、党の年齢構成はますます上昇しています。議会での力の増大と、大衆運動の分野や青年への影響力という点での力の弱体化という、いわばあい矛盾する2つの傾向が党を貫いています。

 この2つの傾向は、互いに結びついて、ますます党指導部を議会主義的な取引やマヌーバーに頼らせる方向に働いています。不破委員長の暫定政権構想は、その1つのあらわれです。さらに第22回党大会で正式に決定された「自衛隊活用」論は、現在の党が陥っている混迷を最も鮮やかに示しました。もしこのままこの傾向が強まるならば、かつて右から共産党を攻撃して党を除籍・除名になった人々が夢想した、共産党の社会民主主義化の完成、あるいはブルジョア改良主義政党への変質をもたらすでしょう。さらに現在の党指導部は、次期党大会で綱領の全面改定を展望しています。その改定の内容しだいでは、共産党の政治的変質は取り返しのつかないところまで至るでしょう。これまで党を地道に支え、末端で活動してきた党員たちこそが、今こそ、党を守り発展させるために声を上げるべき時です。

 私たちには資金もなければ、有力な人脈もなく、マスコミへの影響力もありません。そこで、わずかな貯金をはたいてパソコンを購入し、このような形で意見発表と討論の場を設けることを決意しました。パソコンを持たない党員も多いでしょうが、このホームページを読んだ方々は、ぜひ周りの党員に知らせ、できれば、文章を打ちだして閲覧に回し、民主主義的討論の材料にしてください。

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