(a)延長か転換か
いかなる点で「転換」しているかⅡ-政策の曖昧さ
インタビュアー 安保凍結論をめぐる議論が長くなったので、別の違いについても手短にお願いします。
H・T 第2の違いは、総選挙後に展望されているその暫定政権の政策の曖昧さです。さっき少し言いましたが、『しんぶん赤旗』のインタビューの中で、不破委員長は結局、この暫定政権がいったいどういう政策にもとづくのか何も具体的に語っていません。この政権論を掲げて総選挙を闘うとまで3中総で言われているのに、その政権が具体的に何をするのか何も明白でないというのは本当におかしなことです。これまでの暫定政権案ではすべて政策が明白でした。しかし、今回はそうではありません。
インタビュアー 今回のは単に暫定政権に対する見方を提示しただけで、政権構想そのものではないからだ、というのが公式の説明のようですが。
H・T それも奇妙な話です。安保の凍結という重大なことはすでに決まっているのに、どういう政策を実現するかということが、共産党の側からの案としてもないというのは、まったくつじつまが合いません。共産党は、安保問題という、いわば共産党の存在意義にかかわる大問題で、一方的に他の野党に歩み寄る姿勢を示したというのに、その代わりに相手から何を引き出すかに関しては、何も具体的なことは言えない、というわけです。
インタビュアー 消費税減税については、あくまでも一つの「たたき台」としてですが、不破インタビューの中で言及されていましたね。
H・T たしかに「たたき台」という言い方で消費税減税について言われていました。しかし、なぜ「たたき台」という言い方をするのでしょう。本当に暫定政権で消費税減税を追求するつもりなら、「消費税減税をはじめとする諸政策にもとづく暫定政権」と言うべきです。
なぜそう言わないのでしょうか。その理由は簡単です。当時、消費税減税を掲げていたのは、安保政策に関しては完全に改悪党である自由党だけだったからです。したがって、消費税減税をあまり正面から掲げてしまうと暫定政権が実現できないかもしれないと考えられたのでしょう。では、消費税減税さえ正面から掲げられないような暫定政権が、はたして自民党政治の基本枠組みを進歩的な方向で突破することができるのでしょうか。きわめて疑問です。
インタビュアー 他の違いについてはどうでしょう?
H・T もう1つ、これまでの暫定政権構想と違うのは、党指導部自身の構えです。
これまでの暫定政権構想では、党指導部としても本当にそのような政権ができるとは考えていませんでした。あくまでも、いくつかの重要な特定の政策をセットにして、それを暫定政権に結びつけて他の野党に呼びかけることで、その諸政策に対する野党の立場を暴露することが目的でした。
つまり、こうです。あなたがた野党は消費税導入反対(あるいは小選挙区制粉砕)と言っているけれど、本当に反対なら、われわれ共産党と手を組んで政権をつくり、それを実現しようではないか、と呼びかけることで、他の野党がどれだけ真剣にそれらの政策を実現する気があるかを国民の前に暴露する、ということが目的だったのです。
しかし、今回の場合は違います。共産党は、他の野党の暴露という目的ではなく、本当に自分も政権与党になろう、なりたいと思って今回の政権論を出してきたのです。だからこそ、安保政策で一方的に他の野党の立場に歩み寄ったし、また具体的な政策を明示することもしなかったのです。
インタビュアー すると、以上の3つの違いというのは、別々の違いというよりも、それぞれが連関していて、全体として、これまでの政権構想との根本的な違いを構成しているということでしょか?
H・T まさにその通りです。だからこそ、今回の不破政権論を軽視してはならないのです。