不破政権論 半年目の総括(インタビュー)(下)

4、今後の課題

 インタビュアー このインタビューもずいぶん長くなりましたので、そろそろ最後の話に行きたいと思います。「今後の課題」ということですが、簡単にお話しねがえますか。

 H・T 多くの党員が実感しているように、現在の情勢のもとで、共産党が崩壊したり、完全に変質してしまったなら、日本の階級闘争においてこれ以上にない打撃が与えられるでしょう。
 もし、党内で指導部に対して公然と反抗する有力な勢力が、数千ないし数万の単位ですでに存在しているのなら、たとえ共産党が崩壊しても、この党内左派を中心に新しい共産党(あるいは、党外左翼と協力して新しい大衆的左翼政党)を再建することができるでしょう。
 あるいは、党外に、共産党に変わりうる社会主義的左翼勢力が、議会でも一定の地歩を築けるほど大衆的基盤を有しているなら、その場合も、共産党の崩壊は致命的とは言えないでしょう。
 あるいはまた、社会全体が急進化し、人民の嵐のような運動が巻き起こる中で、右傾化した共産党が下からの運動によって投げ捨てられるなら、その場合も致命的な損失はないでしょう。
 しかし、現在は、そのいずれでもありません。全般的な反動化と下からの運動の後退と停滞、共産党に代わって人民の運動を指導する大衆的左翼勢力の不在、こうした現状のもとで共産党が崩壊したり完全に変質したりしたら、圧倒的多数の党員は茫然自失の状態に陥り、雲散霧消してしまうでしょう。残ったのは、ごくわずかな、ばらばらの左翼的個人だけという事態になるでしょう。それは、日本の階級闘争に、回復に数十年かかるような大きな打撃を与えるでしょう。
 共産党の現在のこの巨大な力、毎日、赤旗を早朝に何十万部も配れる力量、名十万、何百万という大衆組織を維持し運営している力量、何十人もの国会議員と何千人もの地方議員、そして何よりも30数万の党員、これは、ありとあらゆる反共攻撃や、あらゆる情勢の荒波のもとで築いてきた、かけがえのない人民の財産です。この財産に対し軽々しい態度をとることができるのは、政治的に無責任な人間だけです。
 われわれはこの貴重な成果、貴重な陣地を、全力を挙げて守らなければなりません。そのためには何よりも、党を私物化して党に対する信頼を日々掘り崩している不破指導部に対する批判を集中し、彼らの暴走を食い止めなければなりません。

 インタビュアー 党の改革の可能性はないという主張もありますが。

 H・T 党の改革が結果的に可能なのか、不可能なのかということは、この基本路線とは無関係です。もし結果的に不可能であったとしても、党内部の左翼的世論を結集し、それを組織化し、党内部の議論を活性化させ、党員の政治的力量を高める活動は、結局のところ無駄にはならないのです。

 インタビュアー 党の右傾化にさっさと愛想を尽かして、脱党するべきだという主張もありますが。

 H・T まさにそれこそ不破指導部の思うつぼです。党内部のまじめな活動家層を現在の指導部のもとに残し、かつ党内の批判的意見がますます少なくなるだけのことです。それは党の右傾化をいっそう促進することになるでしょう。指導部はわれわれのような批判的党員を追い出したくて仕方がないのに、自ら脱党するのは愚の骨頂です。

 インタビュアー 最後に、共産党の指導部が現在の時点で本来とるべき方向性とはいったいどういうものでしょうか?

 H・T まずは、政権構想などにうつつを抜かすことなく、右傾化した国民意識(とりわけマスコミと議会内の世論に表現されたそれ)に順応することなく、日本の帝国主義化と新自由主義の路線に対抗する護憲と革新の極を、党外の左翼とも協力して真剣に築くことです。ごく近い将来に政権に参画できるかもしれないというような幻想や、60~70年代以上の革新高揚期にあるといった幻想をきっぱりと捨て、本当の困難、本当の反動化の波は、これから来るのだという政治的覚悟と準備を整えることです。大衆を欺かず、党員を欺かず、自らを欺かないことです。一握りの指導者の個人的感覚や思惑や個人的利益で党の政策や方針を決定するのではなく、本当に全党の英知を結集することです。

 インタビュアー そういうことが今の指導部にできるでしょうか?

 H・T おそらくできないでしょう。共産党の本当の再生のためには指導部の交代と、右に切っている舵を左に切り直す作業が必要になるでしょう。しかし、この課題はごくひと握りの集団であるわれわれには不可能です。多くの党員による自主的な行動が絶対に不可欠です。われわれはそれを党員のみなさんに強く訴えたいと思います。

 インタビュアー どうも長い間ありがとうございました。

1999年3月23日

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