99年いっせい地方選挙をふりかえって(座談会)

前半戦をふりかえってみて(2)-大阪

 司会 では次に、同じ前半戦についてですが、今度は他の地域に住んでいる党員の方の感想を聞かせてください。

 B そうですね。私は大阪在住なので、前半は知事選挙と府会議員選挙でした。知事選挙のほうは、やはり横山ノックの圧勝でした。彼の235万票という得票は大阪の新記録とのことです。一方、共産党推薦の鰺坂候補は、92万票でした。前回は、横山ノックが162万票、共産推薦の小林候補が54万票、そしてオール与党からでた候補が114万票でしたから、前回のオール与党の票数をノックと鰺坂とが、2対1でわけあったようなかたちになりますね。
 東京と違って大阪では、共産党以外の諸政党が候補者を出せませんでした。これは、第1に、ノック知事が圧倒的な知名度と人気があること、第2にノック知事が財界の要求に十分に応えることのできる候補者であること、そして、第3に3つどもえ選挙になると、共産知事が生まれる可能性も否定できないこと、といった背景があったからだと思います。まあ結果から見れば、かりにオール与党が候補者を擁立したとしても、横山ノック勝利は動かなかったでしょうけれど。
 さらに言えば、大阪は都道府県で最も財政赤字が大きく準用再建団体転落の危機にあるという深刻な背景があります。公務員削減や福祉・医療・教育の切り捨てなどの行政リストラを、自民党や財界がみずからの手を汚すことなく断行していくためにノック知事の存在はきわめて有効です。府民に「すんません」と頭を下げ、記者会見で涙を流すノック知事を利用しない手はないわけです。したがって、この4年間は大阪府民にとって、まさに正念場と言えるのではないでしょうか。

  私も同じ大阪です。選挙の見方についてはBさんに賛同しますが、票の流れについてはもう少し正確に押さえておく必要があると思います。
 大阪知事選の場合、80年代から全国にさきがけてオール与党対共産党という構図でした。これまでの経験からすれば、おおざっぱな見方ですが、オール与党の基礎票が150万票、保守浮動票が120万票、共産党基礎票が50万票、革新浮動票が50万票と考えられます。保守系の票は投票率や公明党の動き方でかなり動きますが、だいたいこんなものです。前回は東京都と同じく、革新浮動票を、そっくりノックに持っていかれたわけです。前回の共産党推薦候補の54万票はその結果です。それだけ府民の間に大きな幻想があり、革新の側もそれを打ち破ることができませんでした。
 大阪新記録と言われている今回のノックの得票は、彼がオール与党基礎票と保守浮動票をうまくまとめたと見ることができます。つまり、Bさんの言われるようにオール与党の票数を2対1で分けたのではなく、オール与党の票がすべてノック知事に回り、前回ノックに投票した革新浮動票が共産党推薦候補に戻ってきたとみるべきなのです。ちなみに前々回の選挙(91年)では、共産党一党推薦の角橋候補が96万票獲得しています。だいたいこの水準に戻ったわけです。
 こうして見るとノック知事の得票は大阪新記録とはいえ、けっして前回のときのような「弱者の味方」とてして信任されたわけでないと言えるのではないでしょうか。しかし同時に残念ながら、鰺坂候補は従来の革新の票の枠を超えるだけの支持を集めることができませんでした。その分析も必要になります。私は一言でいって、今回の選挙は候補者擁立から投票日まで一貫して組織選挙で通したことに、従来の枠を超えられなかった原因があると思います。

 司会 府会議員選挙についてはどうでしたか?

  大阪府会選挙では、共産党は9議席から12議席になりました。とりわけ、大阪市内では大正区と港区の1人区で勝利しました。全国で1人区で勝ったのはこの2人だけです。自民党が大阪知事選で気軽に候補者を立てられない理由のひとつがこのへんにあるわけです。
 大阪は小選挙区が多く、20%前後の得票率がありながら、これまでも定数112のうちわずか9議席しかありませんでした。得票率が20%後半の自民党が今回減ったとはいえ、42議席ですから、非常に非民主的な選挙制度と言えます。
 全国的に見ると、今回新たに獲得した議席のほとんどが、3から10人区といった中選挙区であり、ある意味で、増えて当然の議席を手にしているという面があります。たとえば、もし前回の衆議院選挙が従来の中選挙区制であれば40~50議席の議席を獲得しただろうというのと同様です。

  同感ですね。私の選挙区では議席を増やしたわけではありませんが、新顔であったにもかかわらず従来の得票の120%以上を獲得して当選しています。手応えのある選挙だったと言えます。同時に、小選挙区制に近い制度であるために、全国的に見ても大きな得票(率)を得ながら、議案提出権を得るだけの議席数に達しなかったことが残念でなりません。

 司会 なるほどわかりました。後半戦については後で聞くことにします。

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