99年いっせい地方選挙をふりかえって(座談会)

今後の展望について

 司会 では、最後に、共産党の上昇カーブにかげりが見え始めているとすれば、共産党の今後の課題としてどうすればいいのかについて、それぞれお願いします。

  伝統的な革新層からの得票増がこれ以上望めないということからして、共産党指導部はおそらく、ウィングをいっそう右に広げる努力をするようになるでしょう。私はこれは堕落の危険と裏腹の戦略だと思っています。
 もちろん、『さざ波通信』でも書かれていましたが、新自由主義によって裏切られる伝統的保守層の利益を擁護したり、都市中上層の規範的部分(市民派)との共闘を進めることはもちろん必要ですが、それが、下手すると、現在のままの意識に共産党のイデオロギー水準を合わせることによってなされるなら、単にウィングだけを伸ばしたつもりが、体ごと右に引きづられ、本来の基盤である伝統的革新層の信条や利益を裏切ることになりかねません。
 「日の丸・君が代」問題をめぐって、この間、共産党の新見解に対する保守層からの賛成の声が『しんぶん赤旗』などで得々と紹介されていますが、これはまったくナンセンスです。「日の丸・君が代」を支持する人から見れば、共産党が「日の丸・君が代」賛成の側に寄ったように見えているわけですから、ほめるに決まっているわけです。それで喜んでいたらたいへんです。
 旧来の保守層や、新保守層の現状のままの意識で共産党を受けいれてもらえるよう努力することは、無駄であるだけでなく、自らを裏切る行為です。小手先の選挙戦術によってではなく、労働者の雇用や暮らし、福祉、平和憲法、民主主義を守る真剣な「下からの運動」を構築する中で、民衆自身が自らの意識を変革していく過程を経なければ、共産党の得票が今後、大幅に増大することはないでしょう。

  さきほどAさんの言っていたガツンと言いたい対象が「戦後民主主義的なもの」や「官僚」であるというのは、わかるような気がします。最近はややおとなしいですが、官僚批判については新自由主義を指向する民主党、「戦後民主主義」を右翼的にガツンとやりたい人は小沢一郎が率いる自由党などがある程度は反映していると言えるでしょう。しかし、いずれの政党も、もとは自民党なり社会党などの議員がつくったものですから、それらの人々にとっての完全な受け皿にはなりえないですね。結局、何もよくならない閉塞感が残るわけです。
 したがって共産党が現在の既成政党との政策的枠組みとの親和性をはかって支持を得ようというのは安直であまり得策ではないですね。いまの共産党に必要なのは、保守勢力にたたかれても「安保破棄」の旗を掲げ、正論を掲げる勇気でしょう。
 官僚支配に対しては、文字通り市民的で開かれた民主的な運動を組織していくこと。これは、徳島の県民投票運動や兵庫の空港反対派の運動などにその一端がありました。東京の国立市でも共産党と市民団体の共闘で市長選挙に勝利しました。共産党がセクト主義を排して、大衆運動においても選挙戦においても、ときにはわが身を切る勇気を持って共闘の努力を模索するなら、左翼的立場から、今の「閉塞感」へのオルタナティブを提示できるのではないでしょうか。

  何よりも、大国主義的流れや新自由主義の流れに対してきっぱりと対決する路線を打ち出すことが大事ですね。現状では、引きずられているとみられても仕方のないところがあります。これは右からとはいえ、旧来の「自民党政治」の変革でもありますから、護憲・革新勢力からみても幻想にはまりやすいと言えます。幻想にはまらず、警戒心をもって闘うことです。
 それと、新自由主義によって切り捨てられていく層は、たしかに従来は保守層と見られる層だったわけですが、実際には多数の労働者も含まれていることに留意する必要があると思います。それは、大企業の海外進出に伴う空洞化・リストラなどによってはじき出される層です。これらの人たちは、当面はこれまでの保守意識を持ちつづけるかもしれませんが、左翼の側からの働きかけや闘争しだいで、より革新的になりうる層でもあります。繰り返しになりますが、共産党は右へウイングを広げるのではなく、大国主義的・新自由主義的流れに抗してその幻想を暴くことによってこそ、これらの層を獲得すべきです。

 司会 今日はどうもありがとうございました。

1999/5/4

←前のページ もくじ 次のページ→

このページの先頭へ