新ガイドライン法の成立と従属帝国主義(下)

帝国主義のイメージ

憲法9条と新ガイドライン法

 インタビュアー 今回のインタビューの主題は、前回の議論をふまえて、新ガイドライン法の成立が日本の現状規定に対してもつ意味についてです。

 H・T そうですね、この問題を論じる前に、最初に一つだけ指摘しておきたいことがあるんですが、不破委員長や『しんぶん赤旗』は、この間の反対運動の中で、この新ガイドライン法案によって憲法9条の第1項も破られることになるという言い方をしていますね。

 インタビュアー そうですね。戦力不保持を定めた憲法9条第2項は、すでに自衛隊の存在によって蹂躙されているが、戦争放棄を定めた9条第1項も周辺事態法によって破られることなると。最近でも、6月25日付『週刊金曜日』での社民党の土井党首との対談の中で、不破委員長は同趣旨のことを述べていますね。

 H・T この言い方は実は不正確です。自衛隊も、自衛戦争を予定した存在であり、自衛隊法には自衛戦争の際の決まりがいくつも書いてあるわけですから、すでに自衛隊と自衛隊法の存在によって、憲法9条第1項も蹂躙されているのです。また、安保条約は、日本ないし日本国内の米軍に外部からの攻撃が加えられたときの軍事行動を規定していますから、これもすでに9条第1項を蹂躙しています。9条第1項と第2項は論理的にも現実的にも不可分一体であって、一方だけを破って、他方を破らないというような芸当は不可能です。
 しかしながら、自衛隊が建前として予定している自衛戦争というのは、実際に外国から攻撃されないかぎりできない戦争であり、現実の世界を考えるなら、日本を攻撃するような国は存在しません。しかしながら、周辺事態法というのは、「周辺事態」という曖昧な概念にもとづいて日本が米軍の後方支援をやるわけですから、この種の軍事行動は大いにありうるわけです。米軍はすでに何十回となくこの種の軍事行動、戦争行為をやっており、最近ますます頻度が増しています。その意味で、新ガイドライン関連法が、日本を本当に戦争をする国に変えるものであるという指摘は正しいものです。

 インタビュアー 憲法9条1項と2項の問題については、『さざ波通信』第3号でのインタビューで詳しくお聞きしましたが、これも、共産党指導部による昨今の憲法解釈問題と関係があるんでしょうか。

 H・T おそらく関係あるでしょうね。最近の『しんぶん赤旗』でも、日本が攻撃されたときに反撃してよいというのが憲法の原則であるという趣旨の論評が掲載されていましたが(6月30日付、岡宏輔論文)、これは自衛戦争を否定している憲法9条を、自衛戦争を肯定しているイタリア共和国憲法のレベルに引き下げるものです。

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