編集部座談会――『さざ波通信』創刊から半年を振り返って

 司会 『さざ波通信』が2月に創刊されて以来、すでにまる半年以上が経ったわけですが、この間、一部では批判を受けながらも、他方では熱心に支持してくれる党員および党外の方のご支援もあって、何とかここまでやってこれました。今回、編集部座談会ということで、この『さざ波通信』の編集および運営にあたってきた方の中から3人の方に、これまでの感想なり意見なりを聞きたいと思います。身元が特定されない範囲で、率直なところをお願いします。

 A この『さざ波通信』をやろうと言い出したのは私なんですが、そのきっかけは、昨年8月における不破委員長の暫定政権論を知ったときでした。それ以前から、私は党中央の官僚主義やスターリン主義的なあり方に異論を持っていたし、党内の範囲でいろいろと批判意見も言ってきましたが、それでも基本的には、全体として右傾化しつつある社会状況の中で、共産党が果たしているきわめて重要な役割を実感していたし、また、実際、1993年の政治改革騒動以来、共産党が唯一、あの改革騒動に巻き込まれず革新の大義を守り通したことに感銘も受けていました。しかしながら、今年に入ってから、共産党中央の動きというものが微妙に右に揺れはじめ、革新の大義よりも野党共闘を重視するという姿勢がちらほらしはじめ、昨年の参議院選挙での躍進をきっかけに、明らかに、地に足がつかない状態に陥りつつあるように感じられました。
 最初に強い不安を抱いたのは、首相指名選挙で、第1回目から民主党の菅直人に入れたことです。以前、社会党が躍進したときに土井党首に入れたことはありますが、あの時でも2回目の決選投票ででした。護憲や革新の基準という点からすれば、明らかに菅直人よりも、当時の土井たか子の方がまともであったにもかかわらず、1回目からは土井には投票しなかったのです。
 この不安は結局、8月になって不破委員長が、安保廃棄を凍結した暫定連合政権論を唱えるにいたって、決定的なものになりました。このままこの事態を見過ごすなら、日本共産党はかつての社会党の二の舞になりかねないと思いました。こうした事態にいたってもなお何もせず拱手傍観することは、党員としてのこれまでの自分の人生を否定することになると強く実感しました。
 しかし、かといって、私はまったく末端の何の力もない一党員にすぎません。支部会議で批判意見を言ったり、上級機関に自分の意見を伝えたりもしましたが、それによって何の成果も得られませんでしたし、上級機関は、承っておきます、という冷ややかな態度をとるだけでした。私の知らない党員の中には、この問題を深刻に受け止めている人もいるに違いないと思っていましたが、そのような党員と知り合いになるすべももちろんありません。そこで、インターネットのホームページという手段を使って、党員として現在の中央委員会の歩んでいる道の危険性を公然と警告することが必要であると思ったのです。そして、知らない方も含めて、党員同士で議論を積み重ね、事態の打開が何とかはかれないものかと思ったのです。
 私は、パソコンやインターネットに関してはまったく素人でしたので、その方面に詳しいB同志に相談し、この『さざ波通信』の最初の構想ができたのです。

 B 私もAさんと同じように、かつて党内で批判的意見を述べてきました。また、それによって党機関からさまざまな圧力を受けた経験もあります。それが主な原因で離党を考えたこともありましたが、しばらく距離をおいて党を見ていました。言わば、半未連絡党員となっていたわけです。
 しかし、昨年の参院の首相指名選挙で、共産党議員が第1回目から菅直人に投票したという事実を知ったとき、かなりの衝撃を受けました。そしてもし、菅直人を首相とした共産党を含む内閣が誕生すれば……これはもう共産党を離党しなければならない。私が知らない間に、ここまで右傾化しているのか……と思いました。その後、何かしなければ、との思いで、再び支部会議などにも参加するようになりました。しばらく連絡をとっていなかったAさんにメールで連絡をとったのもちょうどこの時期でした。
 その後、Aさんよりインターネットのホームページを立ちあげるという構想を持ちかけられ、即OKしたわけです。党内で意見を述べてどうなるかは、身をもって実感してきただけに、ホームページの立ち上げは現在考えられる最善の方法だと思いました。

 C 私は長い間中央に対していわば盲従的であったし、絶対的な信頼を置いてきました。しかし、党歴を重ね、実際に党生活を過ごし、大衆運動を進めるなかで、時に党の一面的指導が、運動の発展と対立することがあることを感じ、「絶対的な信頼」の根拠をもう一度検討する必要があると思いました。その後に、いくつかの会議で疑問を提示したり、上級に意見を提出したときに、不当な扱いと感じられるような対処をされて、問題意識が広がりました。
 さらに、上級機関に限らず一般党員にいたっても、党の利益をすべてに優先させたり、正当な非党員の意見が排除されたりすることを目の当たりにして、問題意識が確信的なものとなりました。
 19回党大会前の党内討論で公表された意見の中に、当時の自分の問題意識と共通する意見がいくつもあって、自分自身でも民主集中制の問題などを考えたり調べたりすればするほど、これまで自分のもっていた価値観がきわめて貧困であったことを感じたしだいです。『さざ波通信』では、健全な批判的意見を提示し、真に同志的な討論のはじまりのささやかな試みになりうるという点で、ぜひ参加をしたいと考えました。

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