日本社会の変革と日本共産党の改革のために
 ――2000年の年頭にあたってのあいさつ

 読者のみなさん、同志のみなさん、新しい年の幕開けに際して、編集部より年頭のあいさつを行ないたいと思います。
 一昨年、参院選挙での躍進に浮かれたわが党指導部が、民主党や自由党などを念頭に置いた「暫定連合政権構想」を打ち出したことに危機感をおぼえたことを重大なきっかけとして始まったこのサイトは、発足以来もうすぐ1年になります。その間、私たちが発足当時に抱いていた危機感が正当なものであることを示す動きがいくつも起こりました。
 「日の丸・君が代」問題の現実的対応策として国旗・国歌の法制化を打ち出し、それが一つの呼び水となって、「日の丸・君が代」を国旗・国歌とする法案が国会で強行採決されました。わが党指導部は、この明らかな政治的失策について真剣な反省をするどころか、結果として国民的討論が進んだので積極的な意義を持っていたかのような開き直りをしています。これは、党指導部の「無謬神話」への固執を顕著に示しているだけでなく、この間の現実主義的対応の持つ危険な意味をはっきりと示すものです。
 また、不破委員長と井上ひさし氏との対談を単行本化した『新日本共産党宣言』において不破委員長は、憲法9条の恣意的な解釈を行ない、常備軍によらない軍事力による反撃は合憲であるという立場を提示しました。
 さらに、昨年3月末の不審船事件に対する戦後初の海上警備行動の発動と海上自衛隊による威嚇射撃に関しても、憲法擁護の立場からただちに抗議と糾弾の声を上げるのではなく、事態の全容解明という曖昧な声明を出すにとどまりした。
 さらに、東ティモールの独立に際し、残留派民兵から東ティモール住民を保護するという名目のもと、オーストラリア軍を中心とする多国籍軍が派遣されたことについても、党指導部は、その多国籍軍への日本政府の財政支援を支持するという形で政治的な支持を与えました。
 また、昨年9月の東南アジア歴訪において、不破委員長を中心とする党代表団は、マレーシアやシンガポールなどの反共政権の要人と「友好」を深め、その政権をさまざまな形で美化するとともに、その政権が行なっている数々の反動的政策についても事実上の黙認を与えました。
 さらに、一昨年の不破委員長の暫定政権構想は自由党の政権参画によって挫折しながらも、結局、そうした発想は反省もなく維持され、自自公政権の成立とともに、民主党や社民党とともに政策のまったく曖昧な「民主的政権」づくりのための新しい構想へと引き継がれています。民主党との連合づくりを第一に考えている不破指導部は、民主党の鳩山新委員長が大手メディアで堂々と憲法の改悪を唱え、9条の廃棄を主張しているにもかかわらず、それに対する批判を慎重に控えています。
 不破指導部が行動原理としている現実主義的立場は、それが最大の目的としているもの(すなわち日本共産党の政権参加)を実現する保障をまったく与えない一方で、国旗・国歌法の成立に見られるように、すでにその悪しき影響を現実政治に及ぼしています。また、不破指導部のこうした「柔軟」な姿勢は、党内の組織運営には生かされることはなく、国民的討論の呼号にもかかわらず、党内討論はこれまでと同様、一貫してなおざりにされています。国旗・国歌に関する新見解にしても、憲法9条についての解釈にしても、多国籍軍への財政支援に対する支持表明にしても、党内できちんと議論された経過はなく、一般党員のまったく知ることのできない常任幹部会での閉じられた討論において、すべて物事が決定されています。
 不破指導部の現在の基本姿勢を見るかぎり、こうした傾向が短期間に克服されることはないであろうし、むしろ、今後の政治的動向しだいでは、綱領路線からのより重大な逸脱が生じる危険性があります。
 現在、自自公政権は、数の暴力のもと、日本の帝国主義化、福祉・教育の切り捨て、労働者の権利の侵害など、次々と悪政を強行しつつあります。それを押しとどめる力は、野党の数合わせではなく、人民の下からの闘いにこそあります。わが党指導部は、野党の結束の名のもとに民主党との協力を最優先させており、それが多くの点で、本来の大衆運動やイデオロギー闘争を制約しています。
 読者のみなさん、すべての党員のみなさん、日本共産党は党指導部の独占物ではなく、すべての党員の共通の財産であり、また、日本の民主主義的・社会主義的変革を求めるすべての人々の共通の財産でもあります。これまでのあらゆる反動攻勢や反共攻撃に抗して、地道に工場や職場や大学や地域で党の旗を守り、革新の陣地を発展させてきたのは、個々の末端の党員、議員、専従活動家たちです。党の民主主義的改革なしには、日本の真の変革はありえないでしょう。ソ連東欧の崩壊から私たちが主体的に汲み取るべき最大の教訓は、そこにあります。
 指導部を基本的に支持している党員も含め、指導部の方針や政策を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考え、批判的にアプローチする能力を培わなければなりません。それこそが、前衛党員としての当然の責務です。そして、支部―地区委員会―都道府県委員会―中央委員会という縦割りのヒエラルキーの中に討論を制限するのではなく、本当の意味での民主主義的な党内討論を発展させ、全党員の英知を結集させてこそ、正確で全党員が確信の持てる方針を確立することができます。
 このサイトはそうした目的のために運営されています。今年も、読者および党員のみなさんの積極的な討論参加を希望します。そして私たちも、討論の参加者であると同時に、現在の党指導部に対する建設的な批判者としての役割を今後とも果たしていきたいと思っています。

2000年1月1日 『さざ波通信』編集部

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