この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。
年輩の党員と比べればはるかに世相にもパソコンにも強い若者の組織である民青同盟が主催するホームページ(以下、HP)は、なぜか共産党関連のHPと比べても、その数は非常に少ない。内容や構成についても未完成なHPが多く、民青同盟中央のHPでさえも、「毎週更新」というアナウンスは有名無実となっている。本来、外にむかってどんどんアピールをして、広範な共感を広げていくような活動が重要であるのに、今回その逆に、民青地域班が主催する貴重なHPの一つが閉鎖されることとなった。
閉鎖されたHPは、静岡県浜松市の地域班主催の「ゆりネット」というページである。このHPは、今年に入って、班会議でこのHPを公開・運営をすることを決めて、班員の紹介や一般読者向けのオンラインアンケートの実施など、比較的シンプルな内容で試験的に公開をはじめた。まだほとんど一般読者のいない段階であり、これから徐々に始動、という時期であった。ただひとつの問題は、このHPの「班紹介」の項目のなかに、「かわいい娘もたくさんいますよ。とりあえずこうとでもいわないと後が・・・ねぇ」という表現があったことである。
すでに『さざ波通信』第10号で述べているが、性差別問題へのとりくみは、現在の民青同盟のデッドスポットとなっている。未来を担うこの青年の世代で、男女平等的な規範やものの考え方を定着させることは、将来における性差別の克服のためには決定的に重要であり、日頃から、同盟員(とりわけ男性同盟員)が、女性の人権に最大限の配慮をし、女性同盟員が本当にこの組織の中で能力と要求を発揮できるような環境を作り出すことは、きわめて重要な課題である。今回のHPの表現のように女性を「男性の目」からみた視点で「宣伝」するかような行為は、やはり不適切である。
さいわい、部外者ではなく民青同盟を卒業したOBからまずは苦情が寄せられた。この「ゆりネット」には掲示板がなかったため、「ゆりネット」にリンクを張っていた静岡県焼津市の「黒はんぺん班」の掲示板に、複数のOBから、「このような表現はやめてほしい」とか、「女性同盟員をどういう目で見ているのでしょうか?」という意見があいついで書き込まれた。
数日後には、同県委員会副委員長から「ご指摘はもっとも」という回答があり、民青の理念が「女性蔑視とは相容れないもの」として、適切な指導をしていく旨の返答があった。しかし、その後この表現自体は修正されたものの、替わりに入った文章が、「かっこいい男の子もいっぱいいるよ」という言葉であったため、それまでに意見を出していたOBから再度、自己の意見の趣旨を改めて訴える書き込みがなされた。これに対し、意見が徐々に寄せられ始めたそのときに、県委員会の一方的な「指導」によって、「ゆりネット」は、閉鎖されることになった。
この一連のできごとについて、「ゆりネット」の同盟員から、「黒はんぺん班」掲示板に書き込みがされ、(1)性差別問題で認識不足があったことの一定の自己批判 (2)公開の場で厳しく批判されたことへの抗議と反論 (3)「閉鎖」を指導した県委員会への疑問や組織運営の透明性の意義、などについて述べられた。これをきっかけに同盟員たちの議論が再び始まろうとしていた。しかし、その直後に、この掲示板もまた何らかの理由で「サービス停止」となった。
前述の『さざ波通信』第10号でも触れているように、青年分野の運動ではさまざまな未熟な部分を伴いながら、数多くの失敗を通じて問題を乗り越え成長していく過程が不可欠である。しかも今回のような問題は、インターネットという公共的な舞台で起こったことを考えればこそ、なおさら慎重な対応が必要であり、批判を謙虚に受けとめ成長につなげていくことが何より大切な場面である。青年の主体性を尊重しつつ、文字通り血の通った「指導」が機関には必要であったのではないだろうか。
本当の意味で青年を信頼し、青年の多様なエネルギーを大いに発揮させて運動に活動に結実させ、また誤りは率直な相互批判を通じて成長への確かな歩みとしうるような指導こそを、私たちは民青中央および静岡県委員会に求めたい。