国民主義的改良主義への変質と統制強化の二重奏――規約改定の意味

1、クーデター的な規約改定の提起

 今回の規約改定案は、圧倒的多数の党員にとって寝耳に水の出来事であった。しかもその内容は、前文の削除をはじめ、全面的な改定であり、日本共産党の性格規定にもかかわる重大な変更が数多く含まれており、現行規約の原型が確定されて以来、最大かつ最重要な根本的変更になっている。それにもかかわらず、党中央は、7中総が行なわれた9月19~20日まで、まったく規約改定案の中身を公開しなかった。
 不破委員長は、記者会見などで、中央委員会に正式に提案するまで情報を公開することはできなかったと、もっともらしい説明をしている。しかし、そんな言い訳は通用しない。現行規約は、第25条で「おそくとも」議題を大会の3ヶ月前に全党に知らせることを義務づけているが、これは3ヶ月以上前に、全党に知らせることをけっして制約するものではないし、ましてや議案そのものを3ヶ月以上前から全党に知らせることを何ら妨げるものではない。通常の決議案が提起されるだけでなく、共産党そのものの根幹にかかわる規約が全面改訂されるのだから、その議題を、3ヶ月以上前に全党に知らせてもよかったし、当然そうするべきであった。なぜそうしなかったのか?
 もし本当に全党の討議や党内民主主義を重視する指導部ならば、党の性格規定や基本ルールそのものを規定する規約(国の憲法に相当する)の全面改定にあたっては、当然、通常の期間よりも早く全党に知らせ、全党の討議を積極的に喚起し、できるだけ多くの意見と修正を求めて、よりよい規約にするように最大限の努力をしたであろう。ところが、不破指導部はようやく2ヶ月前に議案の中身を発表し、全党が十分に規約改定の意味を理解しないうちに、党大会で規約改定案を「強行採決」しようとしているのである。
 現在、国会では、参院の選挙制度を非拘束式に改悪する案をめぐって激しい攻防が繰り広げられ、与党の「数の暴力」によって強行採決されつつある(10月26日現在)。選挙制度は、国政の根幹にかかわる制度であり、いきなり提案し十分な審議を経ずに数で押し通すことの許されないものである。実際、わが党もそのように主張し、与党側の横暴を厳しく批判している。この批判は正当であり、大義は野党側にある。しかしながら、選挙のやり方のみならず、党の性格やルール全般にわたる全面改定を含んでいる今回の規約改定案を、大会のわずか2ヶ月前に発表し、わずか1ヶ月半の全党討論期間しか保障せずに(しかも、意見書は3000字から2000字に減らされた!)、その規約改定案の採決を強行しようとしているのは、いったい誰なのか? 現在の党指導部がやろうとしていることは、2ヶ月の国会開催の冒頭で憲法の全面改正を与党側が提起し、その期間中に採決しようとするのと同じぐらいの暴挙である(もちろん、憲法の場合は国民投票が必要になるが)。
 問題はまだある。現行規約は、すでに述べたように、第25条において、大会の議題は3ヶ月以上前に全党に知らせることを義務づけている。たしかに、7月19日に行なわれた6中総において、大会の議題について報告された。しかし、その報告においては、議題は「規約の一部改定」とされていた。「一部改定」程度なら、これまでも何度も行なわれているので、ほとんどの党員はこの部分にとくに注意しなかった。ところが、ふたを開けてみると、「一部改定」ではなく、「全面改定」であることがわかった。つまり、党中央は、議題についてまったく誤った報告をしていたことになる。「一部改定」と「全面改定」とでは大違いであり、それを検討するに要する討論期間もまったく異なる。にもかかわらず、党中央は、この違いがあたかもなんでもない違いであるかのようにふるまい、予定通り大会を開いて、規約の全面改定案を採決しようとしているのである。こうした形式面からしても、今回の規約改定案を次の党大会で採択することは許されない。
 さらに、今回の規約改定案は、具体的にどこが改定されたのかについての一覧が提示されていない。「規約改定案についての不破委員長の報告」は存在するが、それは改定部分の一部だけを説明したにすぎない。改定部分のすべてが党員に明示され、かつその改定の理由がきちんと説明されないかぎり、規約改定の提案は、まったくその資格を欠いていると言わざるをえない。
 以上のように、実質面からしても、形式面からしても、今回の規約改定の提案は「クーデター的」なものであり、党内民主主義を蹂躙するものである。しかも、その内容は、不破委員長が説明しているような「わかりやすくした」「簡潔にした」といった技術的なものではなく、まさに共産党の性格規定とその基本ルールに全面的な改悪を加えるものであり、その点からしても、今回の規約改定の提起は「クーデター的」と呼ぶことができる。
 規約改定に賛成の党員であっても、今回の規約改定案があまりも唐突なものであり、十分な全党討議をふまえることができないものであることを考慮して、今回の大会では規約改定案を採択の対象にしないよう訴えるべきではないか?
 われわれは、今回の規約改定案を次の大会で採択の対象にすることに断固反対する。十分な党内討議を保障せよ! クーデター的規約改定絶対反対! 党内民主主義を守れ!

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