今回の全面的規約改定について不破委員長はその「報告」の冒頭で次のように述べている。
まず、今回の改定の趣旨ですけれども、21世紀を迎える新しい状況のもとで、日本共産党が日本社会のなかではたすべき役割にふさわしく、党規約を簡潔でわかりやすいものにする、このことを主眼として、規約全体を検討いたしました
つまり党規約を「簡潔でわかりやすいものにする」というのが、今回の規約改定の「主眼」だというのである。このような説明は、マスコミ向けの解説でも執拗に繰り返されている。しかし、法律問題にかかわったことがある人なら誰でも知っていると思うが、法律の文言というのは、きわめて慎重に書かれており、その言葉の一つ一つが意味を持ち、人々の運命を左右する。弁護士や検察官は、それこそ法律を隅々まで穴が開くほど読み込み、その一言一言の解釈を、判例にもとづきながら厳格に解釈して裁判にあたる。ルールというものはそういうものであり、そう簡単に「簡潔化」することのできないものである。安直な簡潔化はおうおうにして、権力側の恣意性を増大させ、市民の権利を侵害するものになりかねない。
人権問題に少しでも敏感な活動家ならば、不破委員長が言うような「簡潔でわかりやすいものにする」という理屈で、規約を全面改訂することに、ただちに不信感を持ったはずである。
自由な結社である政党の内部規定に過ぎないのだから、国家の法律の場合にようにそんなに目くじらを立てる必要はないのでは、と考える人もいるだろう。しかし、それは間違いである。
まず第1に、われわれ自身が、その自由な結社の一員であり、その結社の内部規定は、直接にわれわれ自身の権利にかかわる。したがって、当事者たるわれわれがそれに敏感になるのは当然である。
第2に、その自由な結社に属している党員は、38万人にも及ぶ。これは38万人の人権にかかわる問題である。38万人もの人々の権利がどうでもいい問題であるとみなすことはできない。
第3に、この自由な結社は、公的な性格を強く持った全国政党であり、政権参画を目指している。政党の体質は、権力を握った場合には直接、全国民の権利にかかわってくる。そのような政党の内部規定は、当然ながら、全国民的問題でもある。
この論文で詳細に検討するように、今回の規約改定案は、「簡潔でわかりやすいものにする」という名を借りた大改悪であり、単に「簡潔」になったにすぎないように見える場合でも、実際には、その簡潔化の影で重大な改悪がなされている。不破委員長の報告は、そうした「簡潔化」の多くについて沈黙している。今回の規約改定案を検討する人は、それこそ弁護士のように、目を皿のようにして規約改定案を読み込み、そこでなされている改悪の一つ一つを「発見」しなければならない。