規約改定案の第2章「党員」の項目には、「党員の権利と義務」に関する条項と並んで、党員の入党と離党と除籍に関する諸項目が並んでいる。これらの諸項目も詳細に見ていくと、いくつかの問題点が浮かび上がってくる。あまり重要でない細かい問題から、きわめて重要な問題までさまざまであるが、規約の重要性をかんがみて、一通り確認しておきたい。
まずは、入党に関する諸項目から見ていく。
改定規約の第6条には「入党を希望する者は、党員2名の推薦をうけ、入党費をそえて申し込む」とある。これは、現行規約の第5条の「入党を希望する者は、党員2名の推薦をうけて入党を申し込む」と第62条の「入党する者は、入党にさいし、入党費を納める」を合体させたものであるが、しかし、実は、規約改定案にはこの入党費についての規定が抜け落ちているのである。現行規約には、第62条に、先の文言に続いて「入党費の額は中央委員会で決定する」とあるので問題ないのだが、この規約改定案においては、それに相当する文言がない。これは、単なるうっかりミスなのか、それとも、どうでもよい規定だと考えたのか定かではないが、いずれにせよ、規約というものを非常に軽視した改定案だと言わざるをえない。
もし何らかの修正をするとすれば、いっそうのこと「入党費」という曖昧なものを廃止し、入党した月の分の党費をそえて入党を申し込むというようにした方がいいだろう。
現行規約第9条には、「いちじるしく反社会的、反階級的で、党の純潔をけがす者は入党させることができない」という条項がある。これは、規約改定案においては、第6条の一部におさまり、次のような文言になっている。
いちじるしく反社会的で、党への信頼をそこなう者は入党させることができない。
「党の純潔」云々という表現は、現在から見てあまり適切だとはいえない言葉なので削除することには反対ではないが、「反階級的」という規定を削除したことは問題である。現在の社会がブルジョア社会であるかぎり、いささかも反社会的ではないが、反階級的な事柄はいくらでもある。たとえば、資本家に屈服して労働者の利益を裏切ることは、ブルジョア社会の基準からすればいささかも「反社会的」ではないが、反階級的である。
今回、あえて「反階級的」という言葉を取り除いたのは、「市民道徳」条項の導入と並んで、まさに「普通の党」「国民の党」への脱皮(ただしスターリニズムは残ったまま)をはかるためであろう。「階級」という言葉は、改定案において、「労働者階級」という記述的用法としては残っていても、「階級的」ないし「反階級的」といった規範的用法としては完全に一掃されている。
現行規約第5条は、入党の許可について次のように定めている。
入党の許可は、個別におこない、原則として基礎組織(支部と呼称する)で審議したうえで決定し、地区委員会の承認をうける。
特殊な事情のもとでは、地区委員会以上の指導機関は、直接入党を許可することができる。
今回の規約改定案では、この部分は第6条の次の一節に引き継がれている。
入党の許可は、個別におこない、支部で審議したうえで決定し、地区委員会の承認をうける。
地区委員会以上の指導機関も、直接入党を許可することができる
主な変更点は、現行規約では、原則として基礎組織(支部)が入党についての審議と許可を行ない、地区委員会以上の指導機関は「特殊な事情のもとでは」という限定つきで直接入党を許可することができるのに対し、改定案ではそのような原則性が取り除かれ、支部も地区委員会以上の機関も区別なく入党を許可できるようになっていることである。
不破委員長は、報告の中で、「『支部が主役』という精神を、党規約のなかではっきり位置づけた」と胸を張っているが、それにもかかわらず、入党の審議と許可という重大な任務については、現行規約では支部が原則的に行なうものであるにもかかわらず、何の説明もなしに、この原則をとっぱらってしまっている。
現行規約第6条は、他党の党員であった者の入党に関し、次のように厳密に規定している。
他党の党員であった者を入党させるばあいには、その普通党員であった者は、党員2名(そのうち1名は3年以上の党歴をもつ党員)の推薦をうけ、都道府県委員会の承認をうける。その幹部党員であった者は、党員2名(そのうち1名は5年以上の党歴をもつ党員)の推薦をうけ、中央委員会の承認をうける。
以上の厳密な規定は、規約改定案においては、次のようにいちじるしく簡略化している。
他党の党員であった経歴をもつ者を入党させる場合には、都道府県委員会または中央委員会の承認を受ける。
また、現行規約第7条には、新入党者を推薦するにあたって次のような規定がある。
党員が入党希望者を推薦するばあいには、入党希望者の党員としての資格および経歴について党組織に説明し、推薦に責任をもたなくてはならない。また推薦人は、入党希望者にたいし、党員としての自覚と決意をかためさせなくてはならない。
党組織は、これにたいし、すみやかに適切な指導をあたえなくてはならない。
この条項は、改定案ではまるまる削除されている。これら2つの改定の意図は何だろうか?
これは、規約の簡略化という目的のみならず、基本的に入党条件の緩和という意味を持っている。最後の「まとめ」でも詳しく述べるが、これまでの規約改定の歴史における一つの特徴は、入党条件がしだいに緩和されていったことである。したがって、これらの改定はその一環であるとみなすことができる。