次に改定案の第4章「中央組織」に移る。これは基本的に現行規約の第3章と引き継いだものである。
この章における最大の改悪点は、臨時党大会を前大会の代議員で開催するとした変更である。規約改定案の第19条には次のように述べられている。
中央委員会が必要と認めて決議した場合、または3分の1以上の都道府県党組織がその開催をもとめた場合には、前大会の代議員によって、3ヶ月以内に臨時党大会をひらく。
前大会の代議員によって開催するとは、つまり、党の最高意思決定機関である党大会が、代議員の選挙なしに開催されるということを意味する。これは、民主集中制の基本原則である「すべての指導機関は選挙によってつくられる」(規約改定案の第3条第3項)を真っ向から蹂躙するものである。しかも、これは、単に選挙原則を否定するだけでなく、各級機関における総会や党会議の開催をもすっ飛ばすものであり、民主集中制の基本原則である「民主的な議論をつくし」(改定案の第3条第2項)という規定をも完全に蹂躙するものである。
つまり、臨時党大会というものが、その大会にいたるまでの支部総会―地区党会議―都道府県党会議という議論と選挙の積み重ねの過程をすべて飛び越え、前大会の代議員だけが中央の党大会に招集され、その前大会議員だけで、綱領や規約をも変更することのできる党の最高意思決定を行なうということである。これほどひどい民主集中制の否定は、世界の共産党の歴史上はじめてのことである。スターリンでさえやらなかった暴挙ではないか!
不破委員長は、このようなでたらめな案を導入した理由について、次のような説明をしている。
今回は、そういう経過も再検討して、全国的な討議を要する緊急問題がおきたときには臨時党大会で対応することにして、全国協議会の制度を廃止することにしました。
以前、なぜ臨時党大会を避けたかというと、大会を開くとなると、支部総会からはじまる代議員の選出の過程が必要ですから、どうしても緊急のには間に合わないということがあったのです。
今回はそこを検討して、臨時党大会を開くときには、前大会の代議員によって構成するという方式を採用したのです。例えば、この11月には22回大会をやったあと、どうしても緊急に臨時大会を開かなければいけない場合がおきたとしたら、22回大会の代議員で次の臨時党大会を開くということにする、ということです。前大会の代議員が欠けてしまったというときには、補充の措置を取ります。そういうことで、事前の党会議の積み重ねを必要としない臨時党大会の開き方を規約化し、規約の改定案の第19条に「前大会の代議員によって」臨時党大会を開くという規定を加えました。こういう方式で、緊急の場合には、臨時党大会をもって対応するということにしたいというのが提案の趣旨であります。
このように不破委員長は、選挙と民主的討論を完全に否定するこの条項の導入を、実にこともなげに説明している。不破委員長は「大会を開くとなると、支部総会からはじまる代議員の選出の過程が必要ですから、どうしても緊急のには間に合わない」と言うが、これはまったく理由にならない。なぜなら、今回の規約改定案でも、「中央委員会は、党大会の招集日と議題をおそくとも3ヶ月前に全党に知らせる」という条項は生きているからである。この条項はもちろん臨時党大会にもあてはまる。3ヶ月もあれば、十分に支部総会から始まって党大会に至るまでの討議と選挙の過程を実施することができる。実際、今回の大会の場合でも、議案が発表されたのは、大会のわずか2ヶ月前であり、この2ヶ月間に、全国数万支部の支部総会と地区党会議と都道府県党会議が実施されている。
また今回の臨時党大会規定でも、「3ヶ月以内に臨時党大会を開く」とある。「3ヶ月」は各級レベルで選挙と討議をやるのに十分な期間である。これが2ヶ月以内であっても可能であるのは、すでに述べたとおりである。
つまり、いかに緊急であっても、民主集中制の基本原則である「選挙」による指導機関の選出と「民主的討論をつくす」という規定を否定する理由など存在しないのである。
宮地健一氏のホームページでの情報によれば、党指導部は、今回の大会でこの規約改定案を採択し、この臨時党大会規定にのっとって、来年の参院選前に綱領を改定することを選択肢の一つに考えているとのことである。
この情報がどこまで真実かは、われわれにはわからない。しかし、もしこうした選択肢を本当に党指導部が考えているとすれば、まさに言語道断である。綱領という最も重要な党の基本文書を、支部総会に始まる各級レベルでの討議と選挙をすっとばして、前大会代議員だけで決定することは、絶対に許されない。それはまさに、無法そのものであり、最悪の形の独裁であり、「ルールなき共産党」以外の何ものでもない。私たちはそのような綱領改定を、絶対に合法的なものとはみなさないだろう。