国民主義的改良主義への変質と統制強化の二重奏――規約改定の意味

14、全党討議条項の削除

 この第3章における改悪点は以上にとどまらない。『さざ波通信』への川上慎一氏の投稿で詳しく述べられているように、現行規約第22条で規定された全党討議の項目が、改定案ではまるまる削除されている。念のため、その部分を引用しよう。

第22条 党の基本的な問題について、全党討議を特別に組織するのはつぎのばあいである。
(1)3分の1以上の都道府県組織によって、その必要が認められたばあい。
(2)中央委員会の内部に確信をもつ多数が存在しないばあい。
(3)中央委員会の内部に、一定の見地にたつ強固な多数があっても、中央委員会がその政策の正しさを全党的に検討する必要を認めたばあい。
 この全党討議は、中央委員会の指導のもとにおこなう。

 この条項はもともと、スターリン時代に取り入れられたもので、レーニン時代の党規約を改悪して、全党討議を事実上不可能にするために設けられたものである。なぜなら、全党討議をやる場合の要件となっている「3分の1以上の都道府県組織によって、その必要が認められたばあい」というのは、横の連絡が厳しく制限され、そうした試みがすべて「分派活動」として弾圧される体制のもとでは、ほとんど不可能だからである。
 だがそれでも、この規定があることによって、各都道府県委員会は、それぞれが独自に「全党討議」を要求することができた。結果として、「3分の1以上」が要求すれば全党討議は実現することになる。その可能性は限りなくゼロに近いが、まったくのゼロではない。
 しかしながら、こうしたまったく不十分な規定さえ、今回の規約改定案では削除されている。それに照応して、現行規約第3条第1項にある「公開の討論は、中央委員会の承認のもとにおこなう」も改定案ではなくなっている。これによって、全党討議や公開の討論を求める党員の権利は、規約上、完全になくなった。
 この規約改定案がそのまま通れば、今後の大会においては、大会前の全党討議さえ行なわれなくなるかもしれない。つまり、かろうじて3年に1度だけ、議案に対する党員からの意見を公表していた慣行もなくなるかもしれない。現行規約では、全党討議は、中央委員会がその必要を認めた場合にも行なうことになっているが、そういう規定すら改定案ではなくなるのだから、大会前の全党討議さえ行なわれなくなる可能性は否定できないだろう。
 個々の党員の意見表明権を二重三重に禁止し、機関紙誌での討論権を剥奪し、下級組織としての意見提出権を剥奪し、ついには全党討議の規定さえ削除する…。これほどひどい改悪があるだろうか? これのどこが「循環型」なのか?
 これほど徹底的に党員や下級組織の権利を制約ないし剥奪したならば、「党の決定は、無条件に実行しなくてはならない。個人は組織に、少数は多数に、下級は上級に、全国の党組織は、党大会と中央委員会にしたがわなくてはならない」などというハードな規定がなくても、十分に、中央機関の独裁は貫徹するだろう。もしかしたら、党指導部は、個々の党員や下級組織が絶対に上級に逆らえないほど規約の実質を徹底的に改悪したので、言葉の上でのハードな規定はもはや不必要とみなしたのかもしれない。もしそうだとすれば、党指導部の態度は二重三重に卑劣で、欺瞞的である。

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