国民主義的改良主義への変質と統制強化の二重奏――規約改定の意味

17、第8章「党外組織の党グループ」の問題点

 規約改定案における第5章「都道府県組織」、第6章「地区組織」、第7章「支部」は、基本的には第4章「中央組織」と共通の問題を持っており、あえて繰り返すまでもない。独自に考察しなければならないのは、第8章「党外組織の党グループ」である。
 まず現行規約の該当条項を引用しておこう。

第57条 原則として党外組織の被選出機関に、3人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織し、責任者を選出する。党グループと責任者は、そのグループに対応する指導機関の承認をうける。
(1) 党グループは、大衆団体のなかで、その規約を尊重しながら大衆の利益をまもって活動し、党の政治的影響をつよめる。
(2) 党グループは、対応する指導機関の指導にしたがう。
(3) 党外組織の機関に常駐する党グループは、基礎組織に準じて日常の党生活をおこなう。

 この部分は規約改定案では次のようになっている。

第42条 各種の団体・組織で、常任役員の党員が3人以上いる場合には、党グループを組織し、責任者を選出することができる。
 党グループは、その構成と責任者の選出について対応する指導機関の承認をうけ、またその指導をうけて活動する。活動のなかで、その団体の規約を尊重することは、党グループの責務である。
 党グループは、支部に準じて、日常の党生活をおこなう。

 まず第1の変更点は、現行規約においては「党外組織の被選出機関に、3人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織」するとなっているのが、「3人以上の党員」ではなく、「3人以上の常任役員の党員」がいる場合に党グループを組織する、というふうになっていることである。この点の変更について不破委員長は次のように説明している。

 次は、「第8章 党外組織の党グループ」の第42条の規定です。従来は、党外の組織に党グループをつくる場合、「党外組織の被選出機関に、3人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織」するということになっていました(現行第57条)。つまり、その組織に常駐していないでも、たとえば評議委員会とか中央委員会とかの被選出機関に党員が3名以上いると党グループを組織するということで、これはたいへん複雑で日常の活動にあわないやり方になります。ですから、今回の改定案では、「被選出機関一般」にしないで、「各種の団体・組織で、常任役員の党員が3人以上いる場合」には「党グループを組織」できると、対象を「常任役員」に限定することにしました。

 これは、一見したところ、党外組織の被選出機関に選出されている党員の激務を緩和させるための措置であるように見える。しかし、党外組織の被選出機関に選出されたことのある党員ならよくわかると思うが、党グループを組織して日常的に議論し、方針をすり合わせないことには、党員たちが統一した行動が取れないし、その団体の運動を党として支え盛り上げることは非常に難しい。とくに、学生組織の場合などはそうである。
 たしかに、現行規約のように、機械的に、党外組織の被選出機関に3名以上の党員がいる場合に党グループを組織するというのは、その党外組織の性格によっては、無意味で単に煩雑なだけである場合もある。したがって、党員の重荷や煩雑さという考慮から修正するなら、単に現行規約における「原則として党外組織の被選出機関に、3人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織し、責任者を選出する」という硬い記述をもっと柔軟なものに、たとえば「党外組織の被選出機関に、3人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織し、責任者を選出することができる」というふうにすればすむだけのことではないか。
 にもかかわらず、今回の規約改定案がこのような形になったのは、やはり、大衆運動に対する中央の軽視があるのではなかろうか? 
 この条項におけるもっと重大な変更は、実はその先にある。現行規約では党グループの任務として「党の政治的影響をつよめる」という文言があるのだが、規約改定案ではそのような文言は完全になくなっている。不破委員長はこの変更について報告の中で何も述べていないが、これはおそらく、「前衛」規定がなくなったことと照応していると思われる。この変更を好意的にとるならば、従来の前衛規定にもとづく大衆団体内部でのヘゲモニズム(党の影響下に置こうとする路線)を否定したものと解釈することができる。
 しかし、われわれは、これまでの党中央の姿勢と今回の規約改定案の傾向からして、そのような解釈は一面的であると考える。それは、基本的には、大衆運動からますます手を引き、それに責任を負う立場からますます逃避することの一環であると思われる。

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