以上で、規約改定案の逐条的な検討は終わりである。かなり詳細に検討したつもりだが、それでもまだ見落としている重要ポイントがあると思われる。読者から指摘していただければ幸いである。
さて、この規約改定案の報告において不破委員長は、次のように言って報告を締めくくっている。
そのほかにもかなり変えた点がいろいろありますけれども、一番肝心な改定点は以上です。
今回は、かなり大きな規約の改定をしましたが、この機会というのは、党の組織とは何なのか、党の規律というのは何なのかという問題を、全党のいろいろな角度から検討する一番いい機会だと思います。
21世紀にふさわしい党をつくりあげていく上でも、大いにそういう角度から思い切った検討をしてもらい、積極的な討論がおこなわれることを期待して、提案の報告とします。
この発言には、看過できない2つの重大な「ごまかし」ないし「嘘」が言われている。
まず第1に、不破委員長は、「そのほかにもかなり変えた点がいろいろありますけれども、一番肝心な改定点は以上です」と述べているが、これまで述べてきたことから明らかなように、今回の規約改定案において、党員や下級組織の権利が剥奪されたり制約されたりした部分については、不破委員長はほとんど紹介も説明もしていない。
今回の規約改定案で剥奪されたり制約された権利を、ざっと挙げてみよう。個々の党員の意見表明権、下級組織の意見提出権、個々の党員の党外での討論権、機関紙誌での討論権、全党討議の要求権、指導機関および党大会における比例代表権、臨時党大会における選挙権と被選挙権と議案討議権、党大会における代議員の議案提出権、等々。
何らかの法律を変える場合、いちばん問題になるのは、それによって国民の権利がどう変わり、どう制約されるのか、である。その法律が最高法規の場合はなおさらである。共産党においては、その最高法規にあたるのが規約である。ところが、党指導部は、これほど多くの権利を剥奪ないし制約しながら(権利そのものがわずかしかないというのに!)、それについてほとんど言及すらしていない。これはいったいどういうことか? これのどこが民主的なのか?
第2に、不破委員長は、今回の機会を、規約について「全党のいろいろな角度から検討する一番いい機会」だとし、「21世紀にふさわしい党をつくりあげていく上でも、大いにそういう角度から思い切った検討をしてもらい、積極的な討論がおこなわれることを期待」すると締めくくっている。もしこの言葉にかけらでも真実が含まれているのなら、なぜ、この重大な規約改定案が、大会のわずか2ヶ月前にようやく出たのか? なぜ、全党討議は1ヵ月半しか保障されていないのか? なぜ、議案に対する党員からの意見提出が、従来の3000字から2000字に減らされたのか? なぜ党員の意見を載せた別刷り『学習党活動版』は、意見募集から1ヶ月近くも経ってからようやく出るのか? なぜその『学習党活動版』の発行について、『しんぶん赤旗』で告知されないのか? なぜその『学習党活動版』はそもそも「別刷り」で、全党員に配られないのか? なぜ『しんぶん赤旗』では規約改定案に対する全面的な礼賛意見ばかり掲載されているのか?
もし党指導部に少しでも誠実さがあるのなら、これらの疑問について答えるべきである。