日本共産党と国労問題の総括

6、共産党指導部の「総路線」と国労問題

 今回の国労問題において、何よりも責任を問われるべき政党は、言うまでもなく、4党合意を結んだ当事者たる4つの政党であり、とりわけ、野党でありながら、そしてこの国労闘争を国政の方面から支えるべき立場にありながら、あからさまな裏切りと屈服の合意案に名前を連ねた社会民主党の反動的役割は、いくら強調してもしすぎることはない。この問題において社会民主党がとった立場は、この政党の政治的破産と絶望を改めて証明している。この政党にいかなる希望も幻想も抱くことはできない。
 しかしそれと同時に、国労内では社会民主党と並ぶ大勢力であり、社民党の裏切りを糾弾しそれと闘う立場にあるはずの共産党が果たした役割も、きわめて裏切り的なものであった。それは、すでに述べたように、建前においては「4党合意案」を批判しながら、実践においてはそれの受け入れを推進し、最初の機会がありしだい退却と屈服の道を選択するという、二枚舌的なものであった。
 この立場は、言うまでもなく、現在の共産党指導部がとっている全体としての路線(「総路線」)と密接に関連している。この両者の関連については二つの方向から見る必要がある。
 まず第一に、内容面での、両者のつながり、同一性である。現在の党指導部の右傾化路線は全体として、かつて保持していた立場や陣地をも放棄して、より大胆に現存秩序に順応していこうとする点にある。しかし、それは単なる「順応」ではない。その順応の仕方にある種の特殊性がある。かつての社会党のような公然たる露骨な右傾化ではなく、あたかもこれまでの立場を堅持し「発展」させているかのように見せかけながら、別の権威を頼りにすることで自らの右傾化を正当化しようとする。それが、不破指導部の常套手段となっている。
 たとえば、「日の丸・君が代」問題の場合、社会党は「日の丸・君が代」の承認を正式に認めるという形で右傾化を遂行したが、共産党の不破指導部は、「国民的討論」にもとづいた「法制化」がなされるなら、「日の丸・君が代」を国旗・国歌として認めることもやぶさかではない、という立場をとった。この場合、右傾化の「隠れ蓑」になったのは、「国民的討論」と「法律」という権威だった。今回の場合も、自ら「4党合意」に名前を連ねてあからさまな裏切りをやった社民党に対し、共産党指導部は、建前上は「4党合意案」反対を言いながら、「全組合員投票」と「ILO第二次勧告」という権威を「隠れ蓑」にして、屈服を遂行した。
 第二に、今回、党としての正式な立場表明が、『しんぶん赤旗』の解説記事というきわめて間接的な形でなされたことである。これは、前衛党規定放棄とおそらくは関連しているだろうが、けっして党と大衆団体との間の「関係の正常化」などと評価することのできないものである。それは、大衆団体の引き回しを放棄するものではなく、ただその「引き回し」をより隠然と、党に対する責任が直接問われない形で遂行しているだけにすぎない。今回、共産党は国労を引き回さなかっただろうか? いや、引き回した。しかも、国労の分裂をもたらすような最も無残なやり方で。しかしながら、それは、党中央としての公然たる立場表明を通じて、あるいは、赤旗のキャンペーンという形で行なわれたのではないだけのことである。『しんぶん赤旗』は、「4党合意案」を批判する「解説記事」を出す。この「解説記事」が、党員の行動を拘束する決定なのかいなか不明なままである。執行部内の党員グループは、その解説記事を単なる「アドバルーン」とみなした。あるいは、最初からそのように言われていたのかもしれない。いずれにせよ、それは党員の実践を拘束しなかった。世論に対して共産党中央は「4党合意案」に反対しているという印象を与え、実践においては、個々の党員が「4党合意案」を推進する。これが、「前衛党規定」放棄にともなう、共産党の行動変化である。それは果たして、以前よりましだと言えるだろうか?
 たしかに、個々の党員が参加している大衆団体の数は無限にあり、そのすべてにおいて党が指導的役割を果たす必要は必ずしもない。しかしだからといって、きわめて重大な大衆団体において、そしてその中での党員の動向がその団体と運動の運命を決する場合において、その党員の所属する政党の政治責任が問われなくてすむわけではない。前衛党規定があろうとなかろうと、党員たるもの、自らの所属する大衆団体および運動の根本的利益を裏切るような行為をしてはならない。党は、そのような党員を放置してはならない。大衆団体の自立性を隠れ蓑にして、そのような実践を容認することは許されない。共産党指導部がやったことは、そうした行為の責任を公然と引き受けることなく、そうした行為を推進することであった。
 われわれは、闘争の継続を表明している闘争団に対する心からの連帯を表明するとともに、わが党自身の裏切り行為を断固糾弾するものである。

2001/2/25 (S・T)

←前のページ もくじ 次のページ→

このページの先頭へ