解説記事は次に、「4党合意案」に対する反対意見を述べた昨年8月の解説記事の概略について紹介するとともに、その後、全組合員による一票投票とILO第二次勧告があったことを振り返り、次のように述べている。
国労は、昨年八月に臨時大会の続開大会を開きました。賛成・反対と意見が分かれている「四党合意」について、全組合員の「一票投票」で賛否を求めることを決定し、九月下旬に「投票」を実施しました。
投票では、資格のある組合員二万三千六百三十五人のうち九八・三%が投票しました。結果は、賛成が五五・一%で、反対三六・〇%、保留四・八%でした。
その直後、二度目のILO勧告がだされたのです。
勧告後、団結を回復しようとする模索が始まりました。
どうやら、「全組合員投票」の結果とILO第二次勧告の二つが、共産党中央にとって、「4党合意案」反対の立場を打ち出した8月の解説記事から再び転換して、事実上、「4党合意案」受け入れに全面的に傾く絶好の口実となったようである。今回の「第二次」解説記事は、下からの圧力に押されてやむなく出した8月の「第一次」解説記事からそそくさと退却していく党中央自身の姿を逆照射している。「私たちは、いちおう4党合意案には反対ですが、全組合員の一票投票で受け入れ派が多数になったし、ILOもああ言っていることだし、仕方がないじゃありませんか」というわけだ。いったい、この姿勢のどこに、不破委員長(当時)が昨年の第22回党大会で得意げに吹聴した「先進性と不屈性」があるのか? 左翼のどの党派よりも遅くに「解説記事」を出し、そしてどの党派よりも早々に屈服のレールに乗る、これが、共産党の言う「先進性と不屈性」の正体である。
さらに解説記事は、勧告後始まったとされる「団結を回復しようとする模索」の最たるものとして、「国労で最大の組合員を持つ東京地方本部」が12月14日に発表した「続開大会の成功に向けた見解」を取り上げ、次のように述べている。
「見解」は、「ILO勧告が示した『当事者に満足のゆく、公正な補償』をかちとるたたかいに全力を挙げることが求められている」と判断し、「ILO勧告に基づく解決を求める方針を確立したうえで新執行部の下に団結を固めて大衆行動を展開し、国鉄闘争の勝利判決に全力で奮闘する」とのべ、組合員の総決起、総団結を訴えました。
こうして、団結を回復する具体的な方向が生まれ、この方向が大きな流れとなり、二十七日の続開大会は「『四党合意』を横へ置いて」「団結を回復し、解決水準を高めるたたかいを本格的に強める」などの意見が相次いだのでした。
しかし、この解説記事が絶賛する東京地本の見解は、まさに「4党合意案」受け入れ路線の行き詰まりを右から打開し、組合全体に「4党合意案」を受け入れさせる最大のきっかけ、呼び水となったものであった。東京地本見解は、共産党中央と同じく、全組合員投票での受け入れ派の「勝利」と不当なILO第二次勧告に鼓舞され(反動的勧告に鼓舞される組合とはいったい何か!!)、渡りに船とばかりに第二次勧告に飛びつき、それにもとづいた「打開策」を提起したのである。もし第二次勧告がなければ、惨めな屈服にしか映らなかった行為を、あたかもILOという権威ある国際機関の権威ある勧告にもとづいた「道理ある解決策」であるかのように見せかけることが可能となった。大ぴらに「4党合意案」受け入れを主張できなかった中間派も、これに力づけられて、積極的な「4党合意案」受け入れ派になった。これが、『しんぶん赤旗』の解説記事が力説する「団結を回復する具体的な方向が生まれ、この方向が大きな流れとな」った政治的背景である。
『しんぶん赤旗』解説記事は最後にこう締めくくっている。
今後、採択された方針で、復職と雇用、この間に失われた経済的補償などの要求を実現するための闘争の強化が重要になっています。
だがすでに述べたように、「JRに法的責任なし」が合意された以上、国やJR側には、被解雇者の職場復帰を実現したり公正な和解金を出す義務はなくなる。「法的責任なし」論は、今や、国とJRにとっての最大の武器となっている。国労執行部と解説記事とは、「復職と雇用、この間に失われた経済的補償などの要求を実現するための闘争」を行なう上での最大の根拠(国とJR側の法的責任論)を自ら放棄しながら、そのような闘争の強化を口先だけで承認している。これほどひどい政治的欺瞞はない。