ドイツ共産党とのインタビューに見る不破氏のごまかし

1、「国民にわかりやすい党」の内実

 まずドイツ共産党のインタビュアーは、不破議長に対して、「第二十二回党大会は、国民にたいして日本共産党はもっと自らを開かなければならない、という課題を決めました。これは具体的にはどういうことでしょうか」と質問している。それに対し、不破議長は次のように答えている。

 私たちが、党綱領の現在の方針を決めたのは、いまから約四十年前、一九六一年のことでした。当時、日本共産党の国政選挙での得票は約百万票でした。それ以来、党綱領の方針にもとづいて活動してきた結果、最近の国政選挙での得票は、七百万~八百万票前後にまで前進してきました。この前進をさらに大きくすすめて、数千万の規模で国民との交流・対話を発展させ、新しい政治をおこす国民的な多数派をつくりあげなければなりません。私たちが、国民にとって“よりわかりやすい”活動ということを、最近の党大会で強調したのは、国民の多数派になるという、この任務を自覚してのことです。
 “国民にわかりやすい”活動ということは、党の政策・方針を立案するとき、つねに国民の多数の人びとの切実な利害から出発すること、日常の活動で、党の支持者だけでなく、さまざまな政治的見解をもつ人びととの対話・交流につとめること、党の方針などを、日本共産党について予備知識をもたない人びとにも理解できる言葉で表現すること(今回の党大会での規約改定にあたっては、とくにこの点に力を入れました)などなど、いろいろな角度からの努力をふくむものです。

 たしかに、一部の左翼カルトのように左翼の特殊用語を振り回して「前衛」気取りでいるよりも、正確でわかりやすい言葉を使うにこしたことはない。しかし、この間の党指導部の言動は、国民にとって「わかりやすい」ものだったろうか? 「日の丸・君が代」に反対と言いながら、国旗・国歌の法制化を推進することは「わかりやすい」か? 不審船事件において、憲法9条が明確に禁止する「武力による威嚇」が行なわれたときに、「全容の解明を」という声明だけを発して、憲法問題について沈黙したことは「わかりやすい」ことか? 消費税廃止から消費税減税に、そしてさらに消費税増税阻止と食料品非課税に次々と後退していくことは「わかりやすい」か? 憲法9条の完全実施をうたいながら、自衛隊の活用を「当然」とすることは「わかりやすい」か? 「4党合意案」に反対と言いながら、それを承認した運動方針を「団結の方向を示したもの」と評価することは「わかりやすい」か? 機密費廃止を当初訴えながら、何の説明もなしに機密費削減に後退することは「わかりやすい」か? 軍事費削減要求を棚上げして、防衛費を「前年度並み抑制」に後退することは「わかりやすい」か?
 党員層や最も基本的な支持層に対しては、これまでと同じ立場を堅持している(ないし発展させている)という印象を振りまきつつ、支配層やマスコミに対しては、体制の枠組みを受け入れたという印象を与えたがっている。この二股政策こそが、この間の党指導部の言動の「わかりにくさ」の最大の原因になっている。
 不破議長は、今回の党規約の改定についても、この「わかりやすさ」という枠組みで説明している。しかし、すでに繰り返し『さざ波通信』で述べてきたように、今回の党規約改定ほど「わかりにくい」ものはない。改定された多くの諸点は、まったく説明されないままに放置された。説明された部分もまったく不十分である。大会前の公開討論で出された多くの質問に対してもほとんど答えられなかった。
 不破議長の言う「わかりやすさ」とは結局、体制派、右派、マスコミに対する「ものわかりのよさ」でしかない。そして多数派の獲得は、下からの闘争を通じた民衆の同意の確保という観点からではなく、現在の国民多数派の意識に迎合することを通じての得票の増大という観点からとらえられている。そうした路線における「わかりやすさ」の追求は、結局は、かつての社会党と同じく、誰の目にも「わかりやすい」右転落を遂げた党に成り下がる結果をもたらすだろう。

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