この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。
先日、大手新聞記者の方より、『さざ波通信』編集に対し、以下のような質問を受けた。編集部として行なった回答をここに発表する。
1,あなたが党員である理由は何ですか。
「あなた」ではなく、「あなたたち」という問いが正しいと思います。私たちが今なお共産党員である理由は、個々の編集部員によって多少の差はあると思いますので、ここでは、ある程度共通している考えについてのみ書きたいと思います。私たちはみな、若くして入党し、今日にいたるまで20年近く党員でありつづけ、喜びの日も悲しみの日も党とともに人生を歩んできました。党中央の指導や政策や路線に何の疑問も持たずにがむしゃらに活動していた若い頃から、多くの点で疑問をおぼえ、内部でそれなりの批判活動さえも行なうようになった最近に至るまで、党中央に対する姿勢には大きな変化が生じていますが、それでも、党は私たちにとって特別な存在でありつづけています。党は、党指導部に還元できるものではなく、全国で働き活動し闘っているすべての同志たちの集合体です。党指導部と中間機構の官僚主義や昨今の政策の右傾化にもかかわらず、底辺で地道に活動し闘っている同志たちはなお、数十万の単位でいます。私たちが党員でありつづけているのは、基本的に、こうした仲間たちと同志として結びつきつづけたいという思いがあるからです。自民党政権が永遠でないように、官僚的指導部も永遠ではありません。
2,今の共産党の一番良いところは何ですか。また、悪いところはなんですか。
現在、議会に議席を持っている政党の中では、共産党は一番まともであり、資本から財政的に独立し、その綱領の中で、不十分ながら革命的路線を維持しています。また、共産党は、強力な大衆的基盤を保持しており、一握りのセクト集団ではありません。綱領で革命をうたいつつ、なお数百万票を獲得する大衆政党でありつづけているということは、歴史的な財産であり、この財産を無視して、あるいは、これの打倒や解体を目指して、日本社会を進歩的な方向で変革しようとすることは、反動的ユートピアです。しかしながら、現在の共産党は、長年にわたる指導部の半独裁的統治、指導部に対する無批判的崇拝のせいで、末端党員の民主主義的権利や民主主義的統治能力は最低限に押さえられています。昨年の第22回党大会で、ただでさえほとんど権利の保障されていなかった規約がさらに改悪され、権利はいっそう切り縮められました。21世紀という新しい世紀において、19世紀の社会主義政党よりも貧困な党内民主主義しか持たない政党が、社会の新しい流れをつくりだすことはできないでしょう。どんな貴重で豊かな財産でも、愚かな管理人のせいで散財され、腐らされることはあります。それを許さないことこそが、すべての党員の責務です。
3,赤旗で貴サイトが批判された経緯とその感想を教えて下さい。
私たちのサイトが開設されたのは、1999年の2月です。それに対して共産党中央は基本的に黙殺の態度を取りました。党の公式ホームページに、「『さざ波通信』なるものはわが党と関係ありません」という趣旨の「注意書き」が1999年の中ごろに現われ始めましたが、『さざ波通信』そのものに対する評価はまったくありませんでした。しかしながら、2000年10月、第22回党大会が近づいた時期になって、『しんぶん赤旗』は、「「さざ波通信」と称するインターネット上のホームページにおける、党攻撃について」という囲み記事を掲載しました。その内容は、『さざ波通信』が党指導部に対する厳しい批判をしていることを「党攻撃」にすりかえて論難するという性格のものです。この記事は、『さざ波通信』の具体的な主張に対して何一つ反論しておらず、ただ党指導部に対する批判を「党攻撃」と断言しているだけのお粗末な代物です。この記事は、党指導部がまさに、「指導部=党」だとみなしていることを雄弁に物語っています。
4,驚くほど人気の高い小泉政権をどう見ていますか。
この点については、『さざ波通信』第20号で一定の分析を加えているので、それを参照にしてください。簡単に言いますと、小泉政権の高支持率は、無責任なマスコミによる礼賛キャンペーンのもと、これまでの森政権と政党政治に対する深刻な不信と社会的・政治的閉塞感が、何かをやってくれそうな小泉政権にそのはけ口を見出したことに主な原因があります。しかし、小泉政権の掲げる政策ないし路線は、民衆の大多数の犠牲をもたらす新自由主義政策であり、あるいは、日本のいっそうの帝国主義化を促す軍事大国路線です。どちらも、日本とアジアの民衆に多大な不利益をもたらすでしょう。この矛盾は、すぐにではないにせよ、いずれは現象することになるでしょう。
5,参院選で共産党は勝つと思いますか。
私たちは予言者ではないし、また、「勝つ」という言葉の意味も定義されていないので、簡単には答えられません。いずれにせよ共産党は苦戦を強いられるでしょう。それは、この間の共産党の右傾化路線が、伝統的な革新支持層に少なからぬ幻滅を与えてきたからであり、また、小泉政権の一時的な大衆的人気が、共産党の周辺的支持層を共産党から引き離す役割を果たす可能性があるからです。しかし、他方では、小泉政権の成立によって、共産党以外の野党は埋没してしまっています。他の野党、とりわけ民主党は、小泉政権との違いを何ら言うことができません。この事実は、これらの野党が、実際には、自民党の外にある自民党派閥の一つにすぎないことを如実に示しています。こうした野党状況の中で、相対的に共産党が浮上する可能性は否定できません。いずれにせよ、選挙の結果を今から正確に予言することは不可能であるし、またその意味もありません。私たちはただ、どのようにすれば選挙での前進の可能性がより高まるかを検討し、実践するだけです。そのための最も重要な要件は、党の民主主義的刷新であると私たちは考えています。それは、たとえ一時的に共産党の組織的弱化を生むとしても、長期的には共産党の再生と発展を保障するでしょう。