都議選の結果と参院選の展望(座談会)

1、選挙の敗因

 今日は都議選の経過およびその結果について、思うところを率直に語り合いたいと思う。まず、それぞれの率直な感想をどうぞ。

 まず私の第一印象は、まあ覚悟していたこともあったけれど、やっぱりこうなったか、というものだった。異常なまでの小泉人気からして、無党派票はおおむね小泉自民党に流れるだろう、となると、無党派票でかなり伸びた前回の議席は維持できない。かなりの減少は避けがたいだろうと思っていた。それに、都の党組織の動きも非常に弱かった。熱気に欠けるというか、4年前とは雲泥の差だった。

 私も基本的に覚悟していたけれど、やはり11議席減というのは、かなりショックだった。しかし結果をよくよく見ると、現職落選のほとんどすべては、次点に泣いている。得票率もそれほど悪くはなかった。だから、当初のショックと比べると、今はそれほどでもない。といっても、やっぱりこの議席減は非常に痛い。何よりも、世間的に、共産党の凋落という印象を強く与えた。一般の有権者の多くは、票の詳細な分布など分析しないし、11議席減という事実だけを見て判断する。

 さっきBさんが、党組織の動きが弱いということを言っていたが、それとも関連して、今回の都議選の敗因についての意見を聞きたい。

 一つは、やはり異常なまでの小泉人気に圧倒されていたという面は大きいと思う。共産党支持者ですら、5~7割は小泉支持というもとでは、動きも鈍るというもんだ。実際、支持者への電話かけをしていても、4年前の「打てば響く」というのとは対照的だった。
 二つ目は、党自身の政策の押し出しが弱かった。今回、党は、「シルバーパスの無料化復活」「都独自の老人医療費助成(マル福)の復活」「介護保険の減免制度の実現」の3点セットを基本的に政策上の柱にしていた。ポスターもそうだった。しかし、これらの政策はいずれも65歳以上の老人向け政策だ。今回の都議選で特徴的だったのは、小泉人気のせいもあって、比較的若い世代が投票所に向かったことだが、そのような若い世代向けの政策はほとんど皆無だった。
 三つ目は、石原都政に対する態度の曖昧さだ。4年前の選挙では、青島都政への対決という線を非常に強く打ち出していて、街頭での訴えも、電話かけでの訴えも非常に鮮明でわかりやすかった。4年前の都議選時の選挙結果を伝える当時の新聞記事を見てみると、共産党が青島批判票を一身に集めて勝利した、主張のわかりやすさが有権者に評価された、等々と分析されている。今回は、「是々非々」主義のため、そのような鮮明さは望むべくもなかった。今の都政に是々非々でしかないとしたら、あえて共産党に投票する意味は何かが問われる。

 そのシルバーパスの問題だけど、4年前の都議選でも実は、共産党は、このシルバーパス問題を最大の政策的争点の一つにしていた。ところが、4年前は躍進の原動力になったのに、今回はそうならなかった。都議選前の2中総の志位報告では、都民アンケートにおける一番の関心は高齢者福祉だったと紹介されていた。このことに指導部は確信をもったのだろうが、現実にはこの思惑通りにはならなかった。なぜだろうか?

 前回の選挙で「シルバーパス廃止反対」がうけたから、今回もそれでいけると指導部は思ったのだろうが、選挙はそんなに甘いものではない、ということだろう。今回、小泉内閣は「構造改革」を大々的に掲げて選挙に取り組んだ。マスコミの影響もあって、今や争点は、国全体の形、構造、社会全体のあり方、という非常に大きなものに移行していた。ところが共産党は、たしかに、小泉改革に反対の姿勢を打ち出していたが、具体的な政策的争点としては結局、シルバーパスに老人医療費助成といった問題に絞ってしまった。どちらも基本的には、かつての福祉水準の復活というものでしかない。もちろん、切り捨てられた福祉を復活させることは必要であり、重要なことだが、より大きな争点の波に完全に飲み込まれてしまった。国の進路、都政の進路を根本的にどの方向に向けていくのか、という大問題を共産党自身が積極的に争点にすべきだった。しかし、共産党は、都政そのものに関しては「是々非々」であって、そのような大きな観点を打ち出すことはできなかった。

 石原都政に対する「是々非々」問題は後でもう一回論じるとして、敗因に関して、他に何かありますか。

 思うに、そうした状況的なものだけでなく、共産党の組織そのものが、時間が経つにつれてますます脆弱化していっているという問題はあるかもしれない。若者が本当に少ない。何かの会合や集会に30代の人間がいただけで、大歓迎されてしまう。30代はもはやそんなに若いとはいえないはずなのに。

 たしかに、共産党系の集まりに行くと、50、60代が非常に多い。20代、30代は本当に数えるほどしかいない。足腰が根本的に弱まっている。全戸配布ビラをやりきる力も弱まっている。そういった組織的な構造的問題はあったと思う。

 つまり、公明党と並んで最も組織票が固いと見られていた共産党も、実は内情は非常に苦しくて、以前ほど組織票を固めきれていないという問題があるということかな。公明党がきちんと立候補者全員当選を果たしたのに、共産党はたくさん取りこぼした。そんなところにも組織票の弱さが現われているのかもしれない。案外、共産党は、民主党ほどではないにしても、「風」に頼りつつある政党になっているのかもしれない。

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