参院選を振り返って(座談会)

1、今回の選挙戦を闘って

司会 ご存知のように、今回の参院選挙の結果は、共産党にとってのみならず、革新陣営全体にとっても深刻な敗北になりました。この結果を謙虚に受け止めて、今後の課題と展望について考えなければなりません。今日は、この選挙結果を中心に議論したいと思います。まずはじめに、今回の選挙戦を末端で戦った経験について語っていただきます。

 今回の選挙は、小泉政権の危険性、それに対する党の対決姿勢、そして惨敗するとまた右転換するのではないかという危惧といった理由から、自分としてはいつになく奮闘しました。しかしながら、私の所属は居住支部でありながら、主として現役労働者によって支えられている支部なので、選挙活動の範囲も毎度のことながら非常に限られています。ビラやポスターなどの最低限の宣伝と、読者や元読者の範囲での支持かための枠を越えていません。そういう状況なので、今回法定ビラ以外の宣伝物がなかったのには正直言ってホッとしました。しかしその余力は、「謀略ビラ」対策に使われた感もあります。地区委員会の指示によって、反撃ビラを用意して夜中に待機した日もありました。ただ、それだけ対策を取っただけあって、大規模に違法ビラがまかれることはなかったようです。
 私の場合は配達や集金の際に読者と直接対話したのですが、支部が把握している支持者の範囲でみれば、「小泉旋風」なんてほとんど感じられませんでした。また、私がしたのではないのですが、高齢者を対象とした支持拡大の電話では、介護保険への不満などが相当大きくて、反応も上々でしたね。そのため、選挙でこれほどまでに負けるとは思ってもみませんでした。とくに比例区の得票はショックでした。

 私は諸般の事情であまり選挙戦に参加できませんでしたが、電話かけの反応で言うと、いつもかけている名簿で電話かけをしたことが原因だと思いますが、いつも入れてくれる人は入れてくれるし(いわゆる反応「A」の人)、そうでない人(反応「B]「C」の人)は反応がいまいちつかめないという感じでした。これまで積極的に支持してくれた部分が大きく票移動したという感じではなかった。でも、その周辺部分になるとたちまち態度が曖昧になるという感じです。おそらくは、共産党員ないし後援会メンバーが名簿としてつかんでいる部分よりも、名簿としてつかんでいない部分に大きな変化が生じたのではないかと思います。

 私は民主経営組織の支部ですが、多分にもれず経営組織以外にも近隣の空白地区をかなり請け負っているため、経営支部と居住支部をクロスリンクしたような選挙戦になりました。地域の演説会への動員はまずまず(参加者の高齢化問題を除けば)だったし、支部がおさえている名簿での対話はけっして悪くなかったので、ここまで票が減ったということにはたいへんショックを受けました。
 個人的には、昨年の総選挙時は、党指導部が大胆な右傾化路線を断行している最中だったので、党員としてどう選挙戦に参加したらいいのか深刻に悩みました。しかし今回は小泉内閣への対決姿勢、民主党への批判など、その原則的な立場は党員として誇れるものでした。
 もっとも、Aさんが指摘するように選挙活動自体がビラまきと電話かけ、演説会動員に収斂している感があり、しかもそれを毎日、数字のみで点検・集約、追求されるということで、創意的な活動の余地がほとんどないというのは末端においては大きな問題だと思います。
 また私の周りの党員についていえば、主要なメンバーは活動的な年代で構成されているにもかかわらず、その士気は年々低下してきています。今回も最終日夕方の棄権防止活動の最中に、上部組織の幹部から「もうどこもほとんど切り上げているよ、お宅はよくがんばるね」という電話がはいったり、「テレデータや“おさえ”の電話かけはもうしなくなるみたい」というウワサが複数から聞かれました。これらの背景には官僚的傾向が強い選挙活動への長年の疲労に加えて、機関紙が減っていても大躍進(96年衆院選や98年参院選)をしたという経験があると思います。さらには、この間の選挙戦術の部分転換(川田氏への勝手連的支持や、橋本知事の消極的支援など)によって、現在のような地を這うようなやりかたはもう変えられていくのではないか、という漠然とした空気があるように思います。

司会 なるほど、以上の様子からすると、党支部ががっちり把握している有権者(コアの支持者)は今回の選挙でも何とか支持を獲得できたが、そこから少し離れた部分になると曖昧になるということでしょうか。98年の参院選では、党支部がまったく把握していないような有権者が大量に共産党に投票しました。そうした周辺部分での大規模な票移動が起きたという感じですね。ただ、電話かけでは必ずしも本音を言うわけではないし、電話でいい反応であっても、必ずしも投票に行くとも限らないので、電話かけの反応だけで判断するのは危険ですが。

 その点では、選挙の投票者動向をしっかり知るために、独自の出口調査というのをやる必要があるような気がしますね。党としてやれば公選法上の問題が生じるでしょうけど、たとえば、選挙動向の調査研究団体のようなものをつくって、前回共産党に入れて、今回入れなかった人がどれだけの割合いて、その理由は何であるのかをアンケート調査し、科学的な選挙分析に生かす必要があると思います。

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