読者のみなさん、党員のみなさん。『さざ波通信』は開設してから、3度目の新年を迎えることになりました。もうすぐ開設以来まる3年が経とうとしています。ここまで、『さざ波通信』を維持することができたのは、読者および投稿者のみなさんのおかげです。開設当初は、1日あたりのアクセス数は100前後でしたが、大きな事件や選挙があるごとにアクセス数が大幅に伸び、現在では、1日あたりのアクセス数は400を越えるようになりました。トータルのアクセス数も、すでに30万を越えるまでになりました。
昨年は、日本にとっても世界にとっても重大な転換の年になりました。日本では、本格的な新自由主義政策をめざす小泉政権が成立し、次々と福祉切り捨て、民営化、規制緩和策を打ち出しました。今年はそうした新自由主義的「改革」にいよいよ本格的に着手されることになります。90年代全体を支配した長期不況は、この小泉政権のもとでますます深刻化し、労働者の生活はいっそう過酷なものになっています。また、昨年の9・11テロを口実に、小泉政権はついに自衛隊を海外派遣し、戦争に参加させました。さらに、昨年末の不審船事件では、海上保安庁による船体攻撃がなされ、多数の死者を出しました。今年はいよいよ有事法制の制定が企てられています。
世界でも、アメリカと多国籍企業を主導とするグローバリズムの暴走は、世界中の多くの人々の生活を破壊し、世界全体の政治・経済を不安定化させ、貧富の格差を著しく拡大させています。9・11テロとアメリカによるアフガン武力攻撃は、平和の新世紀という幻想をこなごなに崩壊させ、帝国主義の世界的克服という問題を改めて人類史的課題として提起しました。人類はもはや、帝国主義的グローバリズムのもとでは平和も安全も安定も得られないことを実感しつつあります。
すでに世界各地では、こうした帝国主義的グローバリズムに反対する運動が燎原の火のように広がりつつあります。9・11テロのせいで一時的にグローバリズム反対運動は気勢をそがれましたが、アメリカによる無謀な報復戦争に反対する運動をきっかけに、再び反グローバリズムの運動が盛り上がりつつあります。日本は、こうした世界の動きから大きく立ち遅れていますが、その日本でも、アタック・ジャパン(ATTAC JAPAN)が発足するなど、重要な進展が見られました。われわれはこうした動きに心から連帯します。
そうした中で、日本共産党に負わされている責任はますます重大なものとなっています。3年前に『さざ波通信』を開設したときは、日本共産党は躍進の絶頂期にありました。95年参院選での前進に始まって、96年総選挙での大躍進、98年参院選でさらなる大躍進を遂げ、議席も得票率も得票数も倍倍ゲームのごとく増やしていきました。党指導部はこの躍進に目がくらみ、あたかも90年代後半から、70年代前半における革新高揚期を上回る高揚期にあるという幻想にとらわれるようになり、早期の政権参加を夢見るようになりました。そうした中で、98年夏に不破政権論と呼ばれる、民主党との連合政権構想が登場したのです。
『さざ波通信』は、選挙でのそのような躍進の基盤がきわめて脆弱であることをはっきりと主張しし、国民意識にも党組織にも大衆運動にもそのような躍進に見合った発展が見られないこと、それどころか、それらはいずれも後退ないし低迷した現状にあることを厳しく指摘しました。そして、安保廃棄を棚上げしてまで、民主党のような新自由主義政党といっしょに早期の政権獲得を目指す路線は、党そのものの崩壊を準備するものになりかねないことを、たびたび指摘してきました。
どちらの情勢判断が正しかったかは、今や誰の目にも明らかです。共産党は、90年代後半の5年間における表面上の躍進期から、2000年以降、明らかに、新しい後退と低迷の時期に突入しています。この新しい後退と低迷の時期はそれほど短いものではないでしょう。この新しい後退と低迷の時期は90年代後半の躍進の5年間よりも長く続くだろうと、確信をもって予測することができます。
わが党にとって不幸なことに、2001年参院選におけるわが党の歴史的大敗北にもかかわらず、党の最高指導部はこのことの責任をいっさいとろうとせず、またこれまでの路線に対する真摯な反省をすることもなく、これまでどおり無謬を気取りながら、絶対的な支配権を謳歌しています。大企業の経営者でさえ、会社を経営破たんをするような大失敗をしたときには責任をとらされます。しかしながらわが党の最高指導部は、ほとんど得票数を半減させるような大敗北を喫しながら、いかなる真面目な反省も、責任も取ろうとしていません。これは、党内に深刻なモラルハザードをつくり出しています。多くの真面目な党員がやる気をなくし、党の戦闘力、組織力は明らかに落ちています。党の支部会議すら、毎週1回開いているのは数割程度に減っています。
党員の理論的・イデオロギー的水準も、以前と比べれば大きく落ちています。かつては、共産党指導部は、党の行動に理論的首尾一貫性を保たせようとそれなりの努力を払ってきました。以前と異なる行動をとったときは、それを真面目に正当化する何らかの理論的論拠を提供してきました。しかし、今ではそのような努力はほとんどなされず、「理論的取り繕い」さえまともに行なわれていません。かつては明確に反対した、天皇家に対する国会での「賀詞」議決にあっさりと賛成に回りながら、それについてまったく党員にも支持者にも説明していません。以前なら断固として糾弾したであろう不審船銃撃沈没事件についても、海保庁の行動が憲法に合致するのかどうか関しいまだに何の公式解釈も示すことができません。
かつては無数の無署名論文が『赤旗』に掲載され、多くの理論幹部が中身の詰まった論文を『前衛』や『赤旗』などに掲載していましたが、今では無署名論文は完全に姿を消し、理論幹部もほとんどが引退を余儀なくされ、もっぱら不破哲三一人が退屈な講壇マルクス主義的「論文」を『赤旗』『経済』に書き散らすだけとなっています。かつては党内では、党員同士のあいだで活発な理論的論争が行なわれていたし、他党派とのあいだでも大いに論戦が闘わされたものですが、今では党員は他党派や無党派から論戦をいどまれても、口を濁すか、逃げの一手となっています。それも無理はありません。なぜなら党指導部自身が、論争を可能とするような論理を何ら与えてくれないまま、次々と路線転換をしているのですから。
たしかに、現在の共産党低迷は、党指導部だけの責任に帰することはできません。私たち自身が何度となく主張してきたように、日本社会全体の右傾化、帝国主義化という根本的な問題があります。問題は、こうした社会状況を直視して、それをふまえた変革の戦略をとるのかどうかです。現在の党指導部には、そのような発想が根本的に欠落しています。そして、わが党の硬直した組織構造は、新しい前進を切り開く可能性をいちじるしく狭めています。旧態依然とした組織構造、旧態依然とした指導部崇拝、旧態依然とした無謬神話を維持しているかぎり、共産党はこのまま停滞と後退の泥沼にますます深く落ち込んでいくでしょう。
党員同志のみなさん、支持者のみなさん。わが党を本当に救うことができるのは、民主主義的、左翼的再生に向けた党の抜本的改革だけです。保守的世論に迎合した右傾化路線では、けっして党の基盤を拡大することはできません。しっかりと革新の大道に立ち、下からの大衆運動を真面目に担い、国際的な反グローバリズム運動と力強く連帯し、「護憲と革新のブロック」の形成に向けたヘゲモニー戦略を粘り強く追求していくことだけが、党の新たな発展の基盤をつくり出します。このような道に党を立たせることができるのは、すべての党員・支持者の自覚的な取り組みだけです。
党員同志のみなさん、支持者のみなさん。本当にわが党を愛しているのなら、本当にわが党を大事に思うのならば、現在の党指導部の路線に追従するべきではありません。そのような受動性は、党そのものを没落させ、敵を利することに役立つだけです。はっきりと批判の声を上げ、党の行動を厳しく監視し、どのような日和見主義的、右翼的逸脱に対しも、ただちに怒りの抗議の声を上げましょう。党の運命はあなた方にかかっています。私たち『さざ波通信』は今後ともそうした党改革の一翼を担い続けます。