この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。
6月5日、参院本会議で、テロ資金防止法が、与党3党と自由、民主、共産などの賛成多数で成立した。われわれはこのとんでもない悪法の成立を断固糾弾するとともに、それに賛成した共産党をも厳しく批判する。この法律は、テロに使用されることを知りながら、資金を提供した行為を罰するもので、実際のその提供した資金なるものがテロに使われるか否かに関わりなく犯罪として取り締まるものであり、10年以下の懲役、1000万円の以下の罰金を科すことができるという、とてつもない厳罰法である。
だが、支配層が語る「テロ」とは何なのか? アメリカがアフガニスタンに雨あられと爆弾やミサイルを降り注いで、9・11テロの被害者数をはるかに上回る死者を出したことはテロではないのか? この犯罪行為に大量の資金を提供しただけでなく、自衛隊を動員してそれを助けた日本政府の首脳はこの法律のもとで断罪されるべきではないのか? もちろん、そんな事態にはならない。支配層が言うテロからは、各国のブルジョア的支配階級が行なうあらゆる犯罪行為があらかじめ排除されている。他方、独裁政権や侵略者に対して被害者側、被抑圧者側が行なう武装闘争はすべて「テロ」であるとされている。われわれが、たとえば、第三世界の革命組織にカンパする行為でさえ、この法律のもとでは犯罪として処罰されかねない。これこそ、とんでもない弾圧立法、治安立法だろう。
だが、不思議なことに、個人情報保護法案や人権擁護法案に猛反対している日本共産党は、機関紙上でこの法律についてほとんどまったく触れなかっただけでなく、衆院、参院ともに賛成に回った。また共産党だけでなく、一般マスコミもまったくこの法律の問題性に触れなかった。われわれは、今回の共産党の行動を、同党の持続的な右傾化の一環として断固批判するものである。