この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。
すでにトピックスで述べたように、不破=志位指導部は、今年の11月に予定されている第23回党大会において、綱領の全面改定を行なう予定であることを、第6回中央委員会総会の志位報告で明らかにした。
このことはたしかに、前回大会における報告等であらかじめ明らかになっていたことではあるが、しかし、前回大会以来の数年間、共産党は選挙で敗北につぐ敗北を重ね、不破=志位路線の破産を全面的に暴露したことで、綱領の全面改定(改良主義政党への綱領的完成)の着手を躊躇するのではないかとの憶測も存在した。しかしながら、党指導部は、日本共産党の改良主義的変質の完成という目標を最後までやり遂げるつもりであることを改めて内外に明らかにした。
以上のことを確認した上で、今回の6中総報告における提起の仕方についていくつか意見を述べたい。
まず第一に、『さざ波通信』への投稿でも指摘されていたことだが、今回の提案では「党綱領の一部改定」という表現になっておらず、単に「党綱領の改定」になっている。これまで、党綱領は何度となく改定されてきたが、すべて「一部改定」と表現されていて、そこには61年綱領の基本路線には手を触れないという明示的ないし暗示的な含意があった。もちろん実際には、綱領はなしくずし的に換骨奪胎され、改良主義的なものにしだいに改悪されてきたのだが、それでも、「一部改定」と言い続けることで、61年綱領との基本的連続性を保持する努力がなされてきた。しかしながら、今回、あえて「一部改定」という表現をとらなかったことで、61年綱領の根幹部分にも改定の手が及ぶ可能性が出てきた。
もしそうだとすれば、いつもの「一部改定」と同じように、直前になって(せいぜい大会の数ヶ月前に)改定案を出すようなやり方は断じて認められない。共産党はかねがね、自党の綱領を何年も何年もかけて、特別の討論報も出して、徹底的に論議をしつくして制定したことを自慢してきた。しかし、今回、わずか5ヶ月前(6月の第7回中央委員会総会)になってようやく改定案を出すというのは、党綱領制定の民主主義的過去を自ら否定するものである。このような手法は絶対に許されない。もし6月になってようやく改定案を出すのであれば、今回の大会での採択を見送り、少なくともその次の大会まで討論を続行するべきである。それが、最低限の民主主義的措置であろう。
第二に、党綱領の全面改定という日程を示したにもかかわらず、その取り扱いの極端な小ささである。一般紙の報道のほうがはるかに、この党綱領改定問題について大きく取り上げていたぐらいである。志位委員長の報告では、あたかも、いつもと変わらぬ事柄を事務的に報告するかのごとく論じられている。『しんぶん赤旗』での取り扱いも、注意して読まないかぎり気づかないような小さな取り扱いである。これが、党の根幹そのものにかかわる党綱領の改定をしようとするものの姿勢だろうか。これは、綱領そのものをないがしろにする態度ではないのか?
第三に、党綱領改定の中身や方向性に対する指導部自身の姿勢が何も語られていないことである。もちろん、次の党中央委員会総会で正式に決定されるまで、具体的な内容を語るわけにはいかないだろう。しかし、今回の中央委員会総会において、次の党大会での党綱領改定について正式に表明したのだから、なぜ今この時期にそのような改定を提案するのか、その改定の方向性について指導部はどのように展望しているのか、以上のことぐらいはせめて説明するべきだろう。一般紙は、「独占資本」「アメリカ帝国主義」などの言葉をわかりやすいものに変えるのだ、という説明を与えているが、なぜそのような説明が一般紙から与えられて、直接、わが党指導部から与えられないのだろうか?
必要な情報が何も与えられず、ごく事務的、機械的な調子で党綱領の全面改定の日程についてのみ語られる、これが、現在の党指導部の姿勢である。そこには、党綱領の改定をめぐる党内論争をできるだけ小さく、狭い範囲のものにし、うまく党内世論をごまかしながら、61年綱領の事実上の廃棄という大仕事を強行しようとする党指導部の思惑が見え隠れしている。