4中総報告の批判的検討――討論の材料のために

外国の諸政党との関係をめぐる問題

 今回の不破報告では比較的目立たない位置にあるとはいえ、看過できない問題をはらんでいるのは、外国の諸政党との関係をめぐる問題である。
 日本共産党は、60~70年代に、外国の共産党・労働党との関係を律する基準として、「自主独立、対等平等、内部問題不干渉」の3原則を提唱した。この基準はきわめて形式的であり、個々の具体的な局面においてしばしば深刻な問題をもたらしてきた。相手が「共産党」という建前をもっているかぎり、そして、相手がこちらに内部干渉してこないかぎり、その党の内実やその権力支配の実態について完全に目を閉じたまま、友好的な関係を結ぶことができてしまうからである。
 この点ですぐに思い出せるのは、ルーマニア共産党との関係である。かつて宮本委員長は、ルーマニア共産党がとくにわが党に対して友好的であったというだけで、その一族支配、腐敗と独裁、人民の窮乏化などを知りつつも(あるいは無知なまま)、チャウシェスク体制を「科学的社会主義を創造的に適用した」と天まで持ち上げた。チャウシェスク体制が崩壊し、その腐敗ぶりが明らかになったとき、その体制ととくに友好的であった日本共産党も重大な道徳的危機をこうむることになった。
 とはいえ、相手が共産党・労働党であるという政治的前提条件は、「自主独立、対等平等、内部問題不干渉」という形式的な基準をある程度、内容的に補完するものであった。しかしながら、ソ連東欧の崩壊以後、日本共産党はこの3つの基準を無原則的に、外国の諸政党一般に広げつつある。今回、この不破報告において、その方向性が以下のようにはっきりと示されている。

 「さまざまな政治的・理論的な立場にたつ諸政党との交流、友好、協力は、当然の方向として、こんごの党の外交活動のなかでいっそう大きな比重を占めてくることになるだろうと思います。この情勢のもとで、三原則を、外国の諸政党との関係を律するわが党の側の一般的な基準としてあらためて位置づけ、確認することにしたいと思います。わが党は、相手の党が保守的な政党であれ革新的な政党であれ、また、その国の与党であれ野党であれ、双方に交流開始への関心がある場合、自主独立、対等平等、内部問題相互不干渉の原則にもとづいて、外国の諸政党との関係を確立し、率直な意見交換をおこない、可能な場合にはアジアと世界の平和のために共同の努力をおこなうものであります」。

 これを読めば明らかなように、党指導部は、先の3つの形式的基準を、「保守政党」や「与党」一般にまで広げようとしている。つまり、場合によっては、相手の党がたとえ、国内で革命派や左翼を残酷に弾圧しているようなブルジョア独裁政権の与党であっても、相手が友好的関係を求めてくるなら、先の3つの基準を満たしているかぎり、それらの党との友好と協力を積極的に進めることもありうるということである。
 もちろん、国際連帯の運動をこれまで以上に積極的に進める必要はあるが、このような没階級的・没政治的基準は危険であり、裏切りの道具になりかねない。外国の党と友好関係を結び交流を進めるにあたっては、最低限、相手の党が、労働者政党であるか、その国のなかで進歩的役割を果たしている政党であることを前提条件にすべきであり、かつ、相手の党の具体的な活動と実態をふまえる必要がある。
 また、相手が進歩的政党ならば、単に「アジアと世界の平和のために共同の努力をおこなう」だけでなく、「アジアと世界の進歩的変革のために共同の努力をおこなう」べきだろう。

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