4中総報告の批判的検討――討論の材料のために

「戦争法の発動を許さない政府」?

 不破報告は次に、新ガイドライン関連法が強行採決された問題を取り上げ、それとの関連で「戦争法の発動を許さない政府」をめざすとしている。

「もう一つ、政府・政権の問題が大事になってくるということを強調したいと思います。先ほどいいましたように、戦争法では『周辺事態』なるものが起きたときの対応を政府のそのときの判断にゆだねています。このしくみのもとでは、憲法をまもり、戦争法の発動をゆるさない民主的な政府を樹立するかどうかという問題が、日本とアジアの平和にとって、いよいよ緊迫した意義をもってくるのです。戦争法は国内法であって、アメリカにたいする条約的義務ではありません。ですから、自主的な判断ができる政府が樹立されるならば、安保条約と戦争法が存続するもとでも、アメリカの要請を拒否して、憲法にしたがった日本の立場をまもることができるわけです」。

 この文言で明らかなように、この政府においては、安保が存続するだけでなく、周辺事態法などの戦争法もまた存続するのである。すでに、東大五月祭での志位講演を批判した『さざ波通信』第4号の雑録論文で明らかにしたように、この新しい政権構想は昨年の不破政権論よりも右寄りのものとなっている。なぜなら、昨年の不破政権論においては、少なくとも安保を改悪させないことが前提条件になっていたからである。安保改悪をしないとは周辺事態法を通さないということだが、すでに周辺事態法が通ってしまった以上、「安保を改悪しない政府」というのは当然、周辺事態法などの新ガイドライン関連法を廃止して安保改悪前の状態に戻すことでなければならないはずである。
 だが、不破指導部は、この前提条件ではあまりにもハードルが高いと思ったのか、「戦争法の発動を許さない政府」という新しい概念を持ち出してきた。
 しかし、まず第1に、戦争法の発動のためには、実際に周辺事態が生じなければならないが、短期間しか存続しない予定の暫定連合政権においては、そのような事態が起こらない可能性の方が高い。したがって、この基準は連合を組む相手に対する縛りとしてあまりにも弱い。
 第2に、戦争法の発動を許さないという合意がきっちりとれる相手なら、どうしてさらに一歩踏み込んで周辺事態法の廃止を提起しないのか? 一度廃止に追い込めば、それを再び制定することは、最初に制定するよりもいっそう困難になるだろう。暫定連合政権の存続している間だけ発動を許さなかったとしても、法律があるかぎり、別の政権ができれば、戦争法の発動が行なわれることになる。「戦争法の発動を許さない」ための最大の保証は、戦争法そのものを廃止することである。戦争法を残したまま、「戦争法の発動を許さない」と息巻いても、説得力はない。
 このような奇妙な政権論が出てくるのは、いかなる政策を実現するのかという問題よりも、いかにして政権に入るのかという問題が、指導部の関心の中で優位を占めているからではないのか。
 いずれにせよ、われわれはこのような新政権論が実現不可能であるだけでなく、戦争法の発動を許さない力にもなりえないと考える。ハードルをしだいに低くしていくような政権論にふけるのではなく、下からの大衆運動を通じて、戦争法の廃止を実現することにつとめるべきである。

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