4中総報告の批判的検討――討論の材料のために

他の野党に対する評価

 昨年の不破政権論が出された当初、不破指導部は、民主党をはじめとする他の野党との連合政権がかつてなく現実性を帯びているという幻想にふけっていた。しかし、『さざ波通信』創刊号のロングインタビューで明らかにしたように、この幻想はその後数ヵ月のうちにあっさりと崩壊し、不破政権論はいつのまにかほとんど言及されなくなった。
 しかし、今回、昨年の不破政権論をさらに右寄りにした「戦争法の発動を許さない政府」なる新しい政権論が提唱されるにいたった。だが、昨年の不破政権論のときのような野党幻想はさすがに今回は見られない。志位書記局長や党内最右派の穀田恵二氏の頭の中には、民主党議員との私的つきあいや鳩山由紀夫のラブコールもあって、なおかつての幻想が残っているようだが、今回の不破報告を見るかぎりでは、よりシビアな野党評価がなされている。少し長いが引用しておこう。

 「昨年の参議院選挙以降の一年足らずのあいだに、日本の政治のうえで、国民の根本利害にかかわる大きな問題が三つありました。
 一つは、不況打開と消費税減税の問題です。ここでは、日本共産党と参議院の小会派との共闘ができた以外は、他党はこの問題をとりあげず、野党としての声は、ほかにはだれもあげませんでした。
 もう一つは、銀行への国民の税金の投入の問題です。この問題で、私たちはこれに反対する立場をつらぬきましたが、民主党をはじめ、わが党以外のすべての主要政党が、税金投入路線にとりこまれて、これが強行されました。
 三番目は、ガイドラインの問題です。この点では、社民党とのあいだに限定的ではありますが、一定の共闘的な行動がおこなわれました。民主党は、周辺事態法には反対しましたが、それ以上の反対行動にはでませんでした。
 この間、盗聴法案反対で、民主、共産、社民三党の一定の共闘がすすめられたことは、こんごのなりゆきにとっても重要な意味をもちますが、いまあげた三つの大きな問題では、野党の役割が問われながら、野党戦線といえるような戦線をきずけないまま事態がすすみました」。

 以上のような情勢認識はそれとして正しいが、このことが示しているのは、昨年の不破政権論が完全な誤りであったこと、そして今回の新政権論もリアリティがないことである。この点を率直に認めるべきだろう。
 また「野党戦線」などという、政治的基準の曖昧な表現は控えるべきである。何度も繰り返し述べているように、いろいろな立場からの「野党」がありうるのであって、野党であるというだけで何らかの「戦線」を構築することを自己目的にすることは絶対にできない。

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