4中総報告の批判的検討――討論の材料のために

青年党員の問題への注目

 今回の不破報告では、以上の情勢分析をふまえて、党活動における大運動が提起されている。その中で注目したいのは、党の年齢構成の高齢化、青年比率の低下について言及され、青年を党に向かえることの重要性が強調されていることである。この問題は、われわれが一貫して強調し重視してきたことである。
 この報告によると、1970年代の初頭において、わが党における20歳代の党員比率は50%を越えていたのに対し、現在では、30歳代と40歳代の党員が48%を占めている(しかし、なぜ30代と40代を足した数字を出したのだろう? 40代以上の党員比率を示す方が党の高齢化についてよりはっきりとしたイメージを持つことが出きるはずである)。この報告では現在における20歳代の党員比率は明らかにされていないが、現在おおむね2~3%(!)である。いずれにせよ、党の年齢構成についてはもっと詳細に資料を提示するべきだろう。どんな対策をとるのであれ、現実を正確に見すえることが出発点でなければならない。
 この問題こそが実は、現在の共産党が抱える最大の問題の1つなのである。たとえ、党員数が今の水準よりもずっと少なかったとしても、10代、20代の青年党員が多数を占めているのなら、その党には前途洋々たる未来があると言うべきだろう。だが、中高年および老人が党員のほとんどを占めている現在、党勢の先細りは目に見えている。したがって、青年党員の獲得にこそ全力をそそがなければならないし、これは、支部の枠を越えて全党員規模で取り組まなければならない課題なのである。
 今回の不破報告は、「党員の拡大」の章で、この青年党員の問題に関し、いくつかの重要な具体的提起を行なっている。
 まず第1に、地域・職場で「青年独自の支部をつくるという組織形態」を「条件に応じて具体化」することを提起している。この方針が妥当であるかどうかは慎重な吟味を必要とするが、この方針が、村上委員長時代に出された支部分割方針と同じ悲惨な結果を生む可能性があることを指摘しておきたい。
 かつての支部分割方針は、全体として党勢が縮小していく傾向があったにもかかわらず、20名以上の支部を3つないし4つに機械的に分割することで、この縮小傾向を人為的に促進した。この支部分割方針によって多くの学生支部が壊滅的打撃を受けた。しかも、同じ大学であるにもかかわらず、支部の異なる学生党員が生じることで、大学内の党組織としての統一した実践が不可能となり、学生党員同士の疎隔や対立さえ生んだ。結局この方針は数年で破綻したが、小さな支部の方が統治しやすいという官僚的思惑もあって(「分割して統治せよ」!)、実態的に今なお生きつづけている。
 今回の青年支部方針は、青年党員と中高年党員が混在している地域支部、職場支部に大きな混乱を招くおそれがある。青年党員の問題でいちばん重要なのは、後で述べるように、組織のタテ割り構造を克服し、支部間の垣根を越えた協力体制を構築することであるが、青年党員を別の支部に組織することで、わざわざ新しい垣根をつくり出してしまう危険性がある。
 また、青年独自に結集する場としては、これまでは民青同盟に青年党員が入りそこで活動することが想定されていたが、青年支部と民青同盟との関係についても、まったく言及がなされていない。
 われわれとしては、この問題に関して、実際に地域や職場で活動している党員たちに、自らの経験をふまえた具体的な議論と検討を呼びかけたい。
 第2に、青年党員の獲得が「中心的には党機関に属する課題だ」と言われていることである。この点については、われわれは基本的に賛成である。青年党員が年々減少し、大学の重要な支部が次々と縮小ないし消滅していっているというのに、この問題に対する取り組みはどこまでもその当該支部に委ねられてきた。大学のまわりに有力な地域支部があっても、あるいは、同じ大学に教職員や院生の支部がある場合でも、支部が違うというだけで、学生党員の拡大や育成に関与することはまったくなかった。これは党のタテ割り構造がもつ弊害の最も深刻な現われの一つである。周囲の地域支部は、選挙のときには学生党員を動員するくせに、学生支部が崩壊寸前にあっても援助の手を差し伸べようとしないし、そもそも、学生支部の状況について知りもしなかった。
 このような支部間の相互無関心が存在するかぎり、青年党員の獲得というスローガンは、単なるかけ声倒れになるだろう。各地域支部や教職員支部、院生支部を統括する上級機関(必要とあらば中央機関も含めて)は、支部間の協力・協同を積極的に進め、青年学生党員の獲得・育成に取り組まなければならない。
 われわれは、今回の提起をさらに発展させて、青年学生問題を議論する特別の全国会議を召集するよう要求する。この会議には、中央・都道府県・地区委員会の青年学生担当者のみならず、主要な機関幹部と学生支部およびそれと関わりの深い支部の代表者、民青同盟幹部などが参加するべきである。
 この種の会議は、10年近く前に一度開かれたことがあるが、そのとき出された一面的な大衆化路線(「柔軟で新鮮」!)は、結局のところ、学生党組織と民青同盟の政治性を弱め、組織を弱体化させることに役立っただけであった。また、会議後の青年対策は一時的に強化されたが、すぐになおざりにされ、結局、まともな成果を挙げることなく今日にいたっている。
 したがって、支部の枠を越えて青年学生党員の獲得に全党員が立ち上がれるよう、中央として腰をすえた指導をするべきである。必要とあらば、青年学生対策特別委員会を中央レベルでつくり、そこに最高クラスの幹部(たとえば志位書記局長自身)が入ること、同種のものを都道府県委員会レベルでつくることも検討対象にすべきだろう。
 以上の点に加えて、留意すべき重要な問題をいくつか提起しておきたい。
 まず第1に、現在の党の官僚主義的体質が、青年学生党員を獲得する上で大きなネックになっているということである。「討論」と言いながら、活動報告と賛成意見の表明がなされるだけという状況、少しでも中央を批判したら異端扱いされる雰囲気、中央がころころと基本方針を変えても党員が疑問を持つことなくそれに唯々諾々と従っている姿、これらはいずれも正義感の強い青年の心を引きつけはしないだろう。賛否両論のうずまく自由な討論の雰囲気、個々の党員が自分の頭で考え発言し行動している様子、さまざまな大衆運動や政治闘争に党員が積極的に参加し先頭に立つ姿、こうしたものこそが青年を引きつけるのである。
 第2に、青年に接近すると称して、かつてのような一面的な大衆追随に陥ったり、党の本来の階級的・政治的基軸をぶれさせてはならない、ということである。日本の帝国主義化は、当然にも、最も感受性の鋭い青年層をも巻き込んでおり、彼らの意識のうちに、さまざまな形でその刻印を捺している。とりわけ、自由主義史観派は、小林よしのりという有力な漫画家と有力マスコミを通じて、かつてなく広い範囲で帝国主義的歴史観を若い世代に植えつけることに成功した。また、生まれたときから高度消費社会にどっぷりつかり、親の世代の豊かな懐に依存し、ますます右傾化しつつある社会の中で育った現代の青年は、現状肯定的傾向を非常に強くもっている。われわれは、政治的におもねることによってではなく、青年の正義感に正面から訴え、具体的な運動と闘争の中で彼らを獲得しなければならない。

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