右からの不公正な共産党批判――『論座』論文への反論

6、おわりに

 公正を期すために付け加えておくが、鈴木氏は、以上のような激しい批判にもかかわらず、共産党の存在意義そのものを完全に否定しているわけではない。「恒常的異議申立人」として、あるいは「食物繊維」としての存在意義を認めてはいる。したがって、氏は共産党の打倒を呼号する反共右翼とは異なる。この点ははっきりことわっておかなければならない。
 しかしながら、鈴木氏が要求しているもろもろのこと(レーニン主義の完全放棄、党名の変更、現在の右傾化路線を綱領にまで反映させること)がもし実現されたならば、共産党はそのような「異議申立て人」ないし「食物繊維」としての役割すら果たせず、国会の完全な翼賛化、政治の総保守化を劇的に進行させることになるだろう。
 鈴木氏が批判している対象は、直接的には日本共産党であるが、しかしそれを通じて攻撃しているのは、社会主義の思想と運動そのものであり、およそ現在の体制に対するラディカルな批判をしようとするあらゆる思想と運動である。したがって、たとえ共産党に対して批判的な人であっても、この攻撃に対してきっぱりと反撃しなければならない。攻撃されているのは直接には共産党だからという理由で、左翼を任じる党派や個人が、この攻撃を許容したり、黙認したりするならば、自らの信条を裏切ることになるだろう。
 われわれは、鈴木氏の批判とは無関係に、今後とも日本共産党を批判するし、既存のマルクス主義の限界や欠陥を批判し克服していかなければならない。科学的社会主義が「科学的」であるためには、絶えざる批判と修正が必要である。だが、それは、鈴木氏がやっているような不誠実で不公正なものではなく、事実に即しバランスのとれた、誠実で公正なものでなければならない。

1999年6月1日(S・T)

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