司会 『さざ波通信』が具体的にどのような政治的影響力を持ったか、とりわけ党中央の見解や行動にどのような影響を与えたかについて、どう考えていますか?
A それは非常に難しい問題ですね。少なくとも、共産党の公式ホームページに、「関係ありません」という言い方ではありましたが、一定の反応があったことは、重要なことだと思っています。共産党のような巨大で中央集権的な組織にあっては、誰かかから批判を受けたからといってそう簡単に政策や行動方式が変わるわけではないし、ましてやすでに出した方針や見解を公然と修正することは滅多にないと思います。
ですから、見た目においては、『さざ波通信』が何らかの政治的影響を党中央に与えたかどうかはわからないと言うべきでしょう。しかし、それでも、何もしないよりはずっとましだと思っていますので、いかにささやかなものであっても、こうした地道な試みはけっして無駄にならないと確信しています。
とりわけ、『さざ波通信』を立ち上げて以降、「日の丸・君が代」問題が起きたり、不審船事件が起きたり、『新日本共産党宣言』が出版されたりと、党指導部の右傾化をはっきりと示す事件があいついで起きており、そのような問題に対しタイミングよく批判を加えることができたことは、『さざ波通信』にとって非常に意義のあることだったと思います。このような批判の試みが、共産党指導部の右傾化を本当に防ぐことができるかどうかは、他の多くの党員の行動いかんにかかっていると思います。
C 党中央に対しての影響力は、はっきりとはわかりませんが、『さざ波通信』を読んだ党員および非党員の方にとってはそれなりの意義があったと思います。もちろん、『さざ波通信』の影響を否定的に考える方もいらっしゃいますが、私はそうは思っていません。党中央に批判的意見を持っていたが、それを自分の胸にしまっておいた党員は多いと思うし、そういう党員にとっては、『さざ波通信』は画期的なものと映ったはずです。また、党外の人でも、党員の本音や自分の意見が見えないと思っている方は、これを通して少しは、公式の見解とは違う党員の意見を知れたことで、党員に対するイメージはアップしたと思います。
B AさんとCさんの発言に付け足すことがないんで、ちょっと参考までに数字をあげておきます。Cさんが言われた『さざ波通信』を読んだ党員および非党員の方への影響という点では、投稿者と非公開メッセージを寄せられた人がだいたい100人をちょっと越える程度ですから、アクセスするだけの人をこの数倍とみなすと数百人によって『さざ波通信』は支えられていると考えられます。
ちなみに、非公開メッセージの内容ですが、党員の方によるメッセージのうち、ほとんどが激励のメッセージであり、残りが質問または意見で、『さざ波通信』自体に否定的なものはゼロでした。党員の内訳も、学生から議員、専従や元専従まで多岐にわたっています。一方、非党員からのメッセージでは、『さざ波通信』を支持するメッセージよりも否定するメッセージの方が最近多くなっています。しかし、そのほとんどは非支持者で、右からのものです。
司会 では次に、『さざ波通信』が現在抱えている問題についても、お願いします。党指導部を批判するだけでなく、自らに対する検証と批判も必要でしょうから。
A まず何よりも『さざ波通信』の最大の限界は、参加メンバーの数が非常に少ないため、フォローできる領域が極端に限られていることです。体系的に論じられる分野は、全体のごく一部です。「トピックス」欄を設けてからは、それほど本格的に論じられない問題でも少しは言及できるようになりましたが、それでもまだまだ不十分です。たとえば、介護保険のような重要問題についても、党の政策にはいろいろと問題が感じられるのですが、体系的に論じたり、説得的に展開できるほど勉強していないし、また現場の状況についても十分把握しているわけではないので、今のところ、論じていません。もっといろいろな問題を勉強して、より多様な問題についてフォローできればと思っています。B そうですね。それぞれが仕事を持ちながらやっているわけですから、なかなか思うようには時間がとれないという問題がありますね。ホームページ管理側の反省としては、最近リンクミスが目立っているので、毎日アクセスする人には申し訳なく思っています。できるだけリンクチェックを徹底していきます。また、今後よりいっそうの影響力をもつためには、『さざ波通信』に協力してくれる方がもっと必要だと考えています。内容的には、国際問題で視野を広げていけたら、と思います。
C 『さざ波通信』の試みはまだ始まったばかりでしかたがない面はありますが、実際に投稿を通じて参加をしている党員の数がまだまだ限定的だということです。30余万人党員をもつ党全体の問題を論じるにあたって、このインターネットのサイトがカバーしているのはごく一握りに過ぎません。最も構成比が高く最も活動的な40代、50代の党員たちを討論に巻き込んでいくためにはまだまだ工夫が必要だと思います。
司会 では最後に今後の展望について一言どうぞ。
A やはり、『さざ波通信』をきちんと毎月出していくこと、多様な問題に関心と議論を広げていくこと、そして何よりも、もっと多くの党員の方に議論に参加してもらうことですね。政党の現役の党員が、中央指導部に対してきわめて批判的なサイトを開設し、その中で活発な討論をやっているというのは、共産党に限らず初めてのことだと思いますので、このような試みが、共産党の民主化のみならず、日本における政治文化の成熟と発展につながれば、なおさらいいと思います。
B 展望とは言えないかもしれませんが、まだ開設半年ですから、今後もなんとしても継続していきたいと思います。
C 当面、中央に対して、とりわけこの間における顕著な右への舵取りに抵抗するような役割を果たしつつも、それにとどまらず具体的に党内討論の場の保障させるといった党改革に結びつけていくことができれば、『さざ波通信』を開設した意味が出てくるというものです。