危機に瀕する憲法と対抗軸の模索

鳩山の改憲論(3)――アメリカからの相対的自立

 インタビュアー 今回の論文でもう一つ話題になったのは、親米を唱えつつアメリカからの自立を強調したことですね。その点はどうですか?

 H・T たしかに、鳩山は以前からの持論であるアメリカからの相対的自立を強調しています。たとえば、「駐留なき安保」論について言及しているし、あるいは、思いやり予算や地位協定の見直しを要求すべきと主張しており、また、国連を隠れ蓑にしたアメリカの国益追求型外交に安易に追随するべきではないと詳しく述べています。そして、そのうえで小沢のことを「アメリカに魂まで抜かれた」とまで酷評しています。これは一見すると自立帝国主義派のように見えます。
 しかし、日本の対米従属というのはきわめて本質的・構造的なものであって、それを根本的に変革することは、ある意味で革命的な意味を持っています。しかし、鳩山にそのような覚悟といったものがほとんど感じられません。
 また、そのような大事業をやりとげるためには、下からの強力な大衆運動を必要としますが(自立帝国主義化のためには右翼的・ファッショ的大衆運動が、護憲・革新の政権のためには左翼的・民主主義的大衆運動が)、民主党にそのようなものは何もありません。民主党の背後にあるのは、マスコミと気まぐれな選挙民だけです。組織政党としての民主党はうどの大木であり、議員数は多いが、それを支える組織活動はほとんどないに等しいと言えます。民主党が出している機関誌は8頁建てのぺらぺらの月刊誌だけであり、今の政治に関する党としての分析など何もありません。日本の政党史上、政権をねらいながら、ここまで組織力のない政党は初めてとさえ言えます。
 このような民主党が政権につけば、ただちに陽性転向して、アメリカとの関係を最優先させる外交政策になるのは目に見えています。その徴候はすでに代表選挙中にあらわれています。代表選中の論戦でも、鳩山は自分が親米であることを強調し、アメリカ離れと受け取られることを警戒したと報道されています。
 このような中途半端な態度で、アメリカからの自立などとうてい不可能でしょう。それに対して、自立帝国主義の道をとることにたいして重要な意義を認めない小沢は、あっさりとアメリカ中心(あるいはその別名である「国連」中心)の外交政策を基軸に据えています。保守的リアリズムという点から見れば、明らかに小沢に分があります。

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