まず、渾然一体となっている軍国主義的主張と性差別的主張のうち、前者の方をみておこう。本質的に小心な人間が、防衛次官というマッチョな役職につけたことで浮かれてはしゃいでいる様子がありありと浮かぶやりとりである。
「大川 ……今後は国会の答弁も政務次官がやることになりますよね。西村さんの発言は過激なほうですが、国会でも今までどおりの発言で答弁するつもりですか。たとえば『自衛隊は軍隊である』とか。
西村 ボクの意見を聞かれたらね。政府としての見解以外に、政務次官たるこのオレの意見を聞きたいんやったら言ったろうやないけ。
大川 内閣の中で喧嘩が起きそうでいいですね。台湾の国会の殴り合いのように盛り上がりますね。 西村 ビックリするような事態が起きまっせ」。
真面目な右翼なら、このような軽薄な調子で、軍国主義のファンファーレは吹かないものである。だが、その軽率さにもかかわらず、この発言の意味は明白である。「自衛隊は軍隊ではない」という政府答弁のまやかしを西村ははっきり自覚しており、自衛隊がまさに憲法違反の軍隊に他ならないことを、この上なくはっきりと表明している。
続いて西村は、いわゆる不審船事件について聞かれて、「今度は本当に撃沈する」と息巻いている。
「大川 別の雑誌で、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の不審船に対して国がとった行動について『2隻の船を花火を上げてお見送りしたようなもの』と発言してましたけど、また来たら、次官としてどうするおつもりですか?
西村 今の段階では海上警備行動の発令でしょう。でも、今度はホンマにやる。
大川 ホンマにとは?
西村 ホンマに撃って、そんで撃沈する。
大川 撃沈ですか!」。
防衛政務次官に、不審船を撃沈するかどうかの最終決定権はもちろん存在しない(そして日本国憲法にもとづくなら、誰にもそのような権限はない)。だが西村はあたかも、自分が日本の最高指導者であり、自分の一声の号令で何でもその通りに動くかのような幻想に浸りながら、「撃沈」という言葉に酔いしれている。この危険きわまりない発言は、現在の支配層の有力な潮流である攻撃的帝国主義派の偽らざる願望を吐露するものである。
さらに、西村の軍国主義的酩酊は続く。西村は自分が政務次官に任命された「意図」について、次のように述べている。
「西村 ……政府はどういうふうに考えているかと言われれば、こうですと答えるためには<政府答弁は>必要。ただ、オレ自身の見解も求められれば言うからね、政府見解はこうだが、西村という人間はこう思っていると。今回、ボクが政務次官になったのも、政府の答弁を前提とした『議論する国会』にするためですよ。
大川 いちばん危険な西村真悟を政務次官にしたのは、そういう意味があるわけですか。
西村 なにごとも、ブレイクスルーせなアカン時期になっているんですよ。
大川 意図的にブレイクスルーを企んでいると。
西村 小渕さんはそういう人ですよ」。
西村のこの自己顕示的解釈がどこまで真実かは不明だが、西村のような悪名高い右翼国家主義者をあえて防衛次官にしたことには、当然ながら、相当の意図があったことは事実だろう。この点については後述する。もっとも、その意図を実現するはるか以前に、防衛次官になれたことで浮かれた西村本人がはしゃぎすぎて、辞任に追い込まれるとは予想だにしなかっただろうが。
西村の軍国主義的ファンファーレはさらに勢いを増す。
「西村 政務次官になったからというより、政治家としてのライフワークは国軍の創設ですわ。
大川 自衛隊じゃなくて国軍。
西村 もちろんそうです。
大川 地球防衛軍というのはどうですか?
西村 そらオモロイ(笑)。全世界への展開『大東亜共栄圏、八紘一宇を地球に広げる』や」。
西村はよりにもよって、戦前の侵略のスローガンであった「大東亜共栄圏、八紘一宇」を「地球に広げる」とまで発言している。これは、戦前の侵略に対するいかなる反省もないことを示しているだけでなく、この発言を文字通りにとるならば、日本国家による世界征服の野望の表明以外の何ものでもない。まさにロシアのジリノフスキー並みのファシスト的妄想である。だが、ジリノフスキーが、けっして政権をとることのないネオファシスト政党の党首であったのに対し、西村は政権の一翼を担っている自由党の議員である。政権党の中にこのようなジリノフスキー的ファシストがいることは、この政権の無責任さと危険性をきわめてはっきりと示している。