青年を取り巻く政治的・イデオロギー的諸問題の中で、現在最も切実で重要な意味を帯びているのは、自由主義史観派の影響力の増大である。
これまで、右派は戦後一貫して、南京大虐殺はなかった、日本の侵略はアジア解放のためだった、等々といった日本版歴史修正主義を唱えてきた。しかしながら、こうした議論は、青年にほとんど影響力を持たず、戦前の侵略に対する反省意識のない一部の年長の世代にしか浸透しなかった。
しかしながら、90年代に入り、決定的に重要な変化が生じている。まず、旧来の右派的な皇国史観や大東亜戦争史観と一線を画するという装いを凝らした「自由主義史観」なるものが、かつて共産党員であった藤岡信勝らを中心に提唱され、それがとりわけ社会科教師や教科書をターゲットにして、一定の成功を収めはじめていることである。くわえて、小林よしのりという人気漫画家が、HIV訴訟支援やオウム問題などで名を馳せた後に、突如として右転回し、自由主義史観の最も有力で効果的なイデオローグとして登場したことである。
藤岡信勝や小林よしのりの登場によって、これまで青年層に十分浸透しえなかった日本版歴史修正主義は、かつてない勢いで青年層に食い込み、そこに排他的・自画自賛的ナショナリズムの種を蒔き始めた。ちょうど日本の帝国主義化と経済大国化の中でナショナリズムの土壌は成熟しており、この種はたちまち、その土壌に根を張りはじめた。
ある意味で、無意識的な戦後民主主義的コンセンサスに依拠していた民青同盟は、はじめて、本格的で影響力のある右派イデオロギーと直面するようになったのである。民青同盟が目標としている「新しい日本」の実現は、この自由主義史観と対決しそれを青年の間で克服する自覚的闘争なしには考えられない。それは、民主的青年運動にとって、最も重要な課題の一つであると言っても過言ではない。
しかしながら、民青同盟の今回の決議や報告において、自由主義史観の危険性に対する警鐘はまったく見られず、それとの対決姿勢は皆無である。この重大な欠落は深刻な意味を持っている。私たちは、民青同盟が、その最も重要なイデオロギー闘争の一つとして、自由主義史観との対決を全面に掲げるよう、要求する。