日本共産党5中総の批判的検討

志位報告の検討(2)――総選挙をめざす共産党の路線と活動

経営支部と青年・学生支部

 党活動について論じた報告の中で、とくに重視されているのは経営支部と、4中総で新たに提起された青年支部である。それぞれについての報告の分析を検討しよう。
 共産党それ自体が、理念からすれば、労働者階級の解放を究極目標にしている労働者政党であり、その基盤は何よりも労働者の中に、したがって、経営支部の中に求められなければならない。それだけでなく、リストラと不安定雇用化が全国的に進められている今日、労働者党員の果たす役割はかつてなく重大なものになっている。志位書記局長はこの点に関して次のように述べている。

「かつてない大規模なリストラ、人減らしのあらしが吹きあれるもとで、職場情勢に大きな激変がおこり、日本共産党への関心と期待が強まり、職場でも党活動発展の新たな条件が広がっています。このことを経営支部の共通の認識にして、経営支部の存在と役割に誇りと確信をもつことは、ひきつづき大切であります」。

 われわれもまた同意見である。しかし、経営支部の置かれている状況は、きわめて困難である。志位報告の言うところを聞いてみよう。

「同時に、ここで私たちが率直に問題提起しておきたいのは、『大運動』での経営支部のとりくみが、個々にはたくさんのすぐれた経験があるものの、全体としてみると居住支部に比べて立ち遅れた状況にあるということです。一連の指標にそれはあらわれています。たとえば『大運動』でなんらかの実践の道にふみだした支部の率は、居住支部が92%であるのにたいして、経営支部は78%です。新しい党員を迎えた支部の率は、居住支部が35%であるのにたいして、経営支部は6%です。支部会議を定期的に開催している支部の率は、居住支部が71%であるのにたいして、経営支部は49%であります」。

 これらの指標はきわめて重大である。とりわけ新入党者を迎えた経営支部が6%というのは、事態の深刻さを余すところなく示している。この事実は、共産党がますます労働者の党という性格を弱めつつあることを語っている。共産党の活動基盤は、ずいぶん以前から、経営支部ではなく、居住支部に移っていた。地域割り的ブルジョア選挙の特性からして、選挙重視の活動スタイルは必然的に、選挙活動に適した支部形式(すなわち地域別の支部)を優位に置いた。そして、民間企業での過酷な差別と抑圧とは、必然的に党員労働者の活動力を奪い、その広がりを最小限に押さえこんだ。そして、若者の保守化と個人主義的傾向の拡大は、経営支部に新しい若い労働者が入るのを著しく困難にした。多くの経営支部は高齢化の波をもろに受けている。こうしたもろもろの要因は、経営支部をかつてない困難な状況に追いこんだ。共産党の労働者的性格を支えている最重要の基盤が崩壊しつつある。この問題を党としてもっと重視すべきである。
 この経営支部の動向と並んで共産党の運命を左右する決定的な位置を占めているのが、青年・学生支部の動向である。すでに述べたように、先の4中総は、青年支部の結成という新しい提起を行なった。われわれは、4中総を批判した論文の中で、この青年支部の問題を取り上げ、その危険性と可能性について次のように述べておいた。

「今回の青年支部方針は、青年党員と中高年党員が混在している地域支部、職場支部に大きな混乱を招くおそれがある。青年党員の問題でいちばん重要なのは、後で述べるように、組織のタテ割り構造を克服し、支部間の垣根を越えた協力体制を構築することであるが、青年党員を別の支部に組織することで、わざわざ新しい垣根をつくり出してしまう危険性がある」。
「では、青年支部の提起はつねに危険なのだろうか? おそらくそうではあるまい。そこの支部の年配の党員が、自分の支部の青年党員を単に若い労働力とだけみなし、青年独自の要求や運動に無関心で、青年党員を使いつぶすような傾向にあるとき、緊急避難として青年党員が別個の支部をつくって活動することは有意義だろう」。

 では、4中総以降の半年で、青年支部に関してどのような成果や失敗があったのだろうか? 志位書記局長の報告を見てみよう。

「この間、4中総決定にもとづいて、青年支部が全国で162支部、組織されました。この新しい組織形態を生かして青年らしい要求活動にふみだし、若い仲間を党に迎えいれている経験もつくられています。しかし、全体としては、実際に青年支部を組織して、今後の手掛かり、手ごたえをつかんだという報告は、少数の県にとどまっており、このとりくみはまさに緒についたばかりであります」。

 全国で162の青年支部がつくられたが、今のところこの新しい組織形態を生かした経験というのはまだごく少数であり、この取り組みはまだ緒についたばかり、と総括されている。提起されてまだ半年であるから、まだ十分な総括ができる状況にないのは、言うまでもない。しかし、青年支部についての言及がたったこれだけというのは、いかがなものだろうか? 党が本当にこの問題を重視しているのなら、都道府県委員会からの報告がたとえ少数であっても、何らかの具体的な成果や失敗について、この報告の中で語られるべきではないのか? そうしないかぎり、その少数の例を通じた教訓を生かすことができないではないか。
 われわれは、4中総を批判した論文の中で、青年・学生問題に関する全国協議会を開くよう提起した。この提起をふまえて、われわれは今回、全国的に新たに結成された青年支部と既存の学生支部とをともに結集した全国交流会を開くよう求めたい。この全国交流会は、言うまでもなく、積極的な成果だけを報告しあう自己満足的なものであってはならず、多くの失敗や挫折も積極的に報告されるべきであり、また、そもそも青年・学生党員が置かれている深刻な状況を率直に出しあい、現状を打破するための知恵を大いに提起する場にしなければならない。そして、当然ながら、あれこれの指導の誤り、党内部の官僚主義なども、議論の俎上にのぼらなければならない。
 経営支部と青年・学生支部、この二つの分野こそが、党の長期的な運命を決する。ここの支部が絶えず成長し、生き生きとして活動的ならば、たとえ一時的に選挙で敗北しても、いつでも取りかえせる。しかし、その逆はそうではない。この二つの分野の支部が党内での比重をこのまま下げつづけ、取るに足りない力しか持たなくなるならば、党の議会主義的変質は完了するだろう。このような危険性を何としてでも回避しなければならない。

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