萩原遼元赤旗特派員による共産党批判について

2、共産党の体質に対する批判

 この第5章の中で、萩原氏は、自分の具体的な経験にもとづいて共産党の体質を問題にしている。まずそれを見てみよう。まず「2、いわゆる反党分子について」の中には次のような記述が見られる。

 関西でのことだが、ある党員の友人がこんな話をきかせてくれた。ある労働組合の事務所である。彼はこういった。
 「今年忘年会で萩原さんと一杯飲むんや」。
 それをきいた一人の男がいった。
 「萩原いうたら、あいつ、あれちゃうんか?」。
 あれとは反党分子とか党除名者をさしているのだ。
 また別の友人はこんな話をしてくれた。
 その友人の友人である党員が、私の本『朝鮮戦争』をもっていることを見とがめた党支部長はこういったという。
 「そういう本は読まないほうがいいよ。読んでも注意して読まないといけないよ」。
 私の本を読むと思想的に悪影響を受けることをその支部長は心配しているのである。
 党員の古い友人に久しぶりに道でばったり会っても、ぎこちない表情を浮かべたりする。私と話をしてもいいのか、握手してもいいのか、瞬間的に頭の中で判断がかけめぐっているような複雑な表情である。……
 この種の話はそれこそ枚挙にいとまがない。不愉快なことこのうえないが、これが現実である。そのときに感ずる党の偏狭さ、懐の狭さ、猜疑心の強さ。党から要注意人物と烙印をおされた者を村八分のように避けたり、おびえたり、敵視する風潮、理由もわからぬままに上からいわわれれば盲目的に従う党員の体質をあらためて実感した。(209頁)

 また、萩原氏は、彼が中心的に関わっている「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」について『赤旗』が一面的で否定的な報道をしたことについても、次のように批判している。

こんなことをわざわざ「赤旗」を通じて全国に周知させる理由がどこにあるのか。私はただちに河邑編集局長に厳重に抗議し、同じ字数で「赤旗」に反論と名誉回復の一文を書かせるよう求めた。河邑は使いを寄こして、るる説明をさせて私の要求に応じられないといってきた。
 世間一般の人には理解できないことだろうが、日本共産党内にあって、「赤旗」で名指しでこう書かれたら「萩原は党とは無関係な人間」とうけとられる。そこから次々に飛躍して、萩原は党を離れた人間、反党分子、除名者というように広がっていく。……
 市民団体である私たちの会に1人や2人共産党に反感をもつ人間がいるとしても、それは世間ではよくあることだ。それにたいして過剰に反応し、会全体を敵視し、「赤旗」でわざわざ全国に周知させる日本共産党の雅量のなさは、無党派の人たちとのつきあいを重視するという方針にも反している。もう少し余裕のあるおおらかさをそなえねばふつうの市民との交流はむりだ。(212~214頁)

 以上のような記述は、多くの批判的党員が実感として理解できることだろう。中央に忠実であるかぎり、党は実に居心地のいい空間であるが、中央に対して批判的になったとたんに上級機関のみならず、周囲の党員の態度も一変するという経験は、少なからぬ党員ないし元党員は経験してきたはずである。このような体質が、スターリニズムの病弊であることは言うまでもない。

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