萩原遼元赤旗特派員による共産党批判について

5、党幹部の硬直性と任期制

 萩原氏の批判は、党内の体制のみならず、指導部のあり方にまで及んでいる。氏は次のように述べている。

 革命の司令部である党指導部は上から作られるとされてきたことを全党の党員によって下から作られるよう根本的に転換しなければならない。委員長、副委員長、書記局長の党3役の選出は全党員による公選制とする。幹部に任期制を設ける。10年やってしかるべき結果が出せなければ交替させ、新しい幹部で人心の一新をはかるべきだ。1955年から97年まで42年間もトップの座にあった宮顕治氏のようなことは2度とやらせてはいけない。
 1980年代に入って宮本氏の言動の不自然さがしだいに目だつようになった。1987年の第18回党大会のとき、開会宣言にたった彼は胸をはって「ただいまから党大会の閉会を宣言します」といった。「笑いをかみ殺すのに苦労した」と大会に出席したある代議員が私に語った。

 党指導部を全党の党員によって下からつくられるようにすること、また、党役員に任期制を導入することにも、私たちも賛成である。組織がまだ小さく、人材に乏しい場合には、指導部の頻繁な交替は、指導の連続性を切断して否定的に作用する場合もありうるだろうが、現在のように安定した巨大な党がすでに存在している場合には、任期制の導入は、指導の連続性を切断する危険性はほとんどなく、むしろ指導部の硬直性を取り除くことに寄与するだけでなく、指導部を担いうる人材を広げることになるだろう。
 だが、3役の選出を全党員の公選制によって選び出すべきだという提案については、議論の余地がある。全党員による公選制という手法は、一種の大統領的党首を選び出すことを意味する。国の制度を見ても、議院内閣制よりも大統領制の方が民主的であるという保障は何もない。むしろ、大統領制を採用している多くの国では、国家権力がより強権的でさえある(たとえばアメリカ、フランス、ロシア)。各級の選挙がきちんと民主的に行なわれるのなら(もちろん、現在行なわれているような、小選挙区制よりも反動的な選挙制度は論外である)、党大会から選ばれてもとくに問題はないと思われる。

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