雑録

 この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。

新社会党と候補者調整をし、
革新の総議席を拡大せよ

 いよいよ総選挙が目の前に迫っている。前回の総選挙以来、自民党を中心とする政府与党はこの4年間、悪政の限りを尽くしてきた。米軍の侵略戦争の後方支援を自衛隊が担う新ガイドライン法の制定、「日の丸・君が代」の法制化、盗聴法の制定、年金改悪と医療改悪をはじめとする福祉の大削減、現在の介護水準を大幅に後退させる介護保険法の制定、500兆円に上る大借金財政、労働者の権利を保護してきた法律の改悪(労働基準法改悪、労働者派遣法改悪、労働保険法改悪など)、定数削減と選挙法改悪、大小さまざまな規制緩和措置と民営化策動――いずれも、日本の帝国主義化と新自由主義化という日米支配層の2つの基本路線を忠実かつ着実に実現するものであった。
 政治の変革はただ、この支配層の2つの基本路線と対決する中でしか前進しえない。したがって、次の総選挙の結果として、たとえ自民党が政権から降りる結果になったとしても、この2つの基本路線を基本的に追求する勢力が代わりに政権に就くのであれば、それは事態を何ら変えるものではなく、異なった看板の下で、同じ政策が追求されるだけのことである。そのような政権はけっして「よりましな政府」ではありえない。むしろ、自民党政治とは異なるという幻想を広げることで、よりいっそう反動的政策を実施しやすくなるだろう。ちょうど、自民党政権ではなかった細川連立政権が、自民党がやりたくてもやれなかった小選挙区制の導入をついに実現することができたように、である。
 これまで『さざ波通信』で繰り返し明らかにしてきたように、民主党は、この2つの基本路線と対決する政党ではなく、逆にこの2つの基本路線を自民党とは違ったスタイルで(より洗練された都会的スタイルで)実行する党である。民主党の自民党批判の主眼は、自民党には本格的な規制緩和や民営化が実現できないということであり、まさに自民党よりも新自由主義的な党として自己を押し出している。たしかに、民主党内には、社会党出身の議員もおり、この部分が露骨な新自由主義的姿勢を多少なりとも和らげているが、しかし、それは党内では圧倒的に少数派であり、結局、民主党の本質を覆い隠すイチジクの葉としてしか機能していない。
 社会民主党は、一方では福祉の充実を唱え、護憲を主張しているが、実際には、国会において、新自由主義的な法案の多くに賛成してきた。彼らは、従来からの社会党支持層からの票も、都市の上層市民の票も、どちらもとりたいと思っている。したがって、社会民主党は、帝国主義化と新自由主義路線への迎合と、それらとの対決という2つの陣営の間をふらふらしている。
 自由党については言うまでもない。それは、最も断固とした帝国主義政党であり、最も露骨な新自由主義政党である。
 以上の簡単な概観から明らかように、現在、国会には、共産党以外に、帝国主義化と新自由主義という2つの基本路線に正面から対決する政党はない。そして、共産党自身も、この間、民主党との連立という幻想を追い求めて、ますます、本来の立場から遊離しつつある。
 現在共産党にとって必要なのは、まったくの幻想でありまた致命的な誤りでもある民主党との連合路線を追求することではなく、共産党自身の議席を含めた革新の総議席を拡大し、帝国主義と新自由主義に対抗する第3の極を構築することである。共産党は一方では、民主党に対して、卑屈なまでの迎合的姿勢を示しながら、他方では、小選挙区の全選挙区に候補者を立てるというセクト主義的方針を堅持している。このような選挙方針は、革新の総議席を制限するだけである。
 そうした中で注目すべきは新社会党である。この党は現在、国会に議席を持っていないとは言え、共産党と並んで、日本の帝国主義化にも新自由主義政策にも最もきっぱりと反対してきた政党である。私たちは、新社会党が国会に議席を獲得することは、革新陣営全体の利益になるだけでなく、共産党にとっても大いに有益な結果をもたらすだろうと信じる。新社会党の議席は、民主党一辺倒になっている現在の共産党の野党共闘路線に対する重大な、左からの歯止めになるだろう。そして、共産党は、国会内において信頼に値する真の同盟者を獲得するだろう。
 だが、共産党が、小選挙区のすべてに独自の候補者を立てている限り、新社会党が議席を獲得することは非常に難しい。革新の総得票数は、共産党と新社会党で分け合うことができるほど多くはない。革新の総議席を増やすためには、両党の選挙協力が不可欠である。だが、現在のところ、両党が積極的な選挙協力を話し合ったり政策協定を結んだり統一候補者を出したりすることができるほど、両党間の関係は成熟していない。そこで私たちは、新社会党の有力候補者(とりわけ、以前国会議員であった候補者)のいる選挙区で共産党がすすんで独自候補を下ろし、新社会党候補を実質的な革新統一候補とすることを提案したい。これは、革新の総議席を拡大することになるだけでなく、共産党の政治的成熟を示すものとして、左派からの政治的信頼を勝ち取ることに大いに寄与するだろう。
 共産党の柔軟性は、民主党という反動的ブルジョア政党に対して発揮されるべきではなく、同じ護憲・革新政党に対して発揮されるべきである。

2000/5/14  (S・T)

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