右傾化と堕落に限界はないのか?――不破指導部の自衛隊活用論の犯罪性

1、『朝日』の記事は事実を歪めていたか

 不破発言には、自衛隊問題と天皇問題の両方が語られているが、ここでは自衛隊問題についてのみ取り上げる。天皇問題については、後の章で取り上げる予定である。
 まずもって、『朝日』の記事が正確であったかどうかを確認しておこう。『朝日』の記事は冒頭、次のように書いている。

共産党の不破哲三委員長は7日までに、同党が将来政権入りした場合、当面は自衛隊を存続させ、有事の際には「自衛隊を使っても構わない」と語り、自衛隊解散を求める党の綱領に短期的にこだわらない姿勢を示した

 それに対して、13日付『しんぶん赤旗』の弁明記事は、朝日記者とのやりとりをより詳しく報道している。それによれば、朝日の記者は次のような質問を行なったそうである。

野党連合政権にせよ、民主連合政府にせよ、まだ自衛隊が存在している段階で、日本が外国の侵略をうけた場合、自衛隊を活用するのか。

 この質問に対し、不破委員長は次のように答えたそうだ。

理論的にいえば、侵略に対抗する手段として、自衛隊を活用するのは、当然

 これを読むかぎり、『朝日』の記事には何ら事実の歪曲はなかったことがわかる。むしろ、『朝日』の記事のほうがはるかに穏便な表現を使っている。『朝日』の表現である「自衛隊を使っても構わない」だと、自衛隊を使うことに対する積極的とも消極的ともつかぬ中立的な肯定をしているように読める。それに対し、不破委員長が実際に言った言葉は「自衛隊を活用するのは、当然」という、きわめて積極的な肯定を意味する表現を使っている。「構わない」と「当然」では、その肯定の度合いがはるかに違うのは、日本語を理解する者なら誰しもわかるはずである。
 また、赤旗の弁明記事は「この『有事』というのは、日本が外国の侵略をうけた場合のことで、ガイドライン法などが問題にしている『周辺有事』などとは、関係ありません」と述べている。つまり、「有事の際に自衛隊を使っても構わない」という表現にとくに問題はなかったということである。普通、形容詞ぬきの「有事」といえば、「日本有事」のことである。だからこそ、周辺事態法はわざわざ「周辺有事」と表記するのに対し、日本有事が問題となる「有事立法」の場合は、形容詞ぬきの「有事」という言葉を使っているのである。私たちも、朝日の記事が言う「有事」が当然、「日本有事」を指すものとして理解していた。「周辺有事」についてさえ自衛隊の使用を当然などと言ったとすれば、それは、さらに飛躍的な右傾化と裏切りであったろう。
 党員や支持者の一部には、あたかも『朝日』の記事の書き方が悪かったから誤解が生まれたかのような主張をする者がいるが、しかし、赤旗自身の弁明からさえ、朝日の記事にとくに歪曲された側面はなかったことは明らかである。森首相の「天皇中心の神の国」発言と同じく、マスコミの報道のせいで真意が伝わらなかったのではなく、正確に真意が伝わった上で、その発言そのものが問題にされているのである。

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