右傾化と堕落に限界はないのか?――不破指導部の自衛隊活用論の犯罪性

2、不破発言における2つの決定的な問題(1)
 ――安保解消前の自衛隊活用の肯定

 さて、不破発言の正確な表現が明らかになったところで、その決定的な問題点を2つ指摘しておきたい。まず第1は、今回の発言が、安保解消前における自衛隊の活用を肯定したことである。
 『赤旗』によって再現された『朝日』記者の質問から明白なように、今回の有事対応は、民主連合政府のみならず、単なる野党連合政権における有事対応も含んでいる。すなわち、安保条約が歴然と存在し、したがって、安保条約第5条が規定する「共同防衛」が存在するもとでの「有事対応」である。安保条約第5条第1項が次のように当事国の義務を定めている。

各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであ

ることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 つまり、この条約が定めるように、日本有事への対応としては当然、自衛隊は米軍とともに「共同防衛」を行なうのである。
 日本共産党の「中立自衛」政策はあくまでも、民主連合政府が存在し、安保条約が解消され、自衛隊解散への一歩が踏み出されたあとの事態を想定したものである。なぜこの条件が重要であるかはあえて繰り返すまでもない。日本共産党自身が一貫して主張してきたように、安保条約は日本を守るためのものではなく、アメリカ帝国主義の支配と侵略のためのものであり、その条約があるかぎり、自衛隊はアメリカ従属下の反動的軍隊であり、本来の自衛政策など問題になりえないからである。このような反動的条約があるかぎり、戦争の火種は日米支配層自身が作り出しているのであり、自ら作り出した戦争を口実に、軍事的自衛を正当化することなどできない。これが日本共産党のこれまでの立場であった。この重要な点のあるなしこそが、ある意味で、ドイツ社会民主党をはじめとする第2インターナショナルが帝国主義戦争に賛成したことを非難する論拠にもなっているのであり、共産党が社会民主主義政党ではなく、帝国主義戦争に反対した伝統を持つ共産主義の政党であることを示す分水嶺でもあったのである。この決定的な点を無視して、過去の「中立自衛」政策を持ち出して不破発言の路線転換を正当化しようとするのは、絶対に許されない歴史偽造である。
 実際、赤旗の弁明記事が引用している多くの文献も、すべて民主連合政府の成立と安保条約解消後の政策である。第12回党大会の決定は当然そうであるし、また、1980年における不破委員長の記者クラブ講演もそうである。

自衛のためにどんな手段を使えるかということは、そのときどきの状況によって左右されます。しかしどんな状況のもとにあろうと、日本の主権と中立の侵犯にたいしては、そのときの可能な手段をつくし、あらゆる国民的な力を結集して対処する。侵犯者にたいしてけっして『寛容』の態度をとらない。これが非同盟・中立の日本がとるべき基本態度です

 この最後の一文が示しているように、これはあくまでも「非同盟・中立の日本」がとる政策のはなしである。次に、私たちも知らなかった昨年の産経新聞とのインタビューもそうである。

――共産党は日米安保条約廃棄後も、国民の合意がなければ自衛隊は解散しないといっている。その時点で、海上保安庁を超えるレベルの緊急事態への対応が必要になったときは、どうするのか。
 「自衛隊が解消していない間に、そういう事態が起きたら、自衛機能は使いますよ。われわれが政権をもっていてもね」

 このインタビューは後で指摘するように、それ自体多くの深刻な問題を含んでおり、不破指導部の右傾化路線の一つの画期にもなっているものであるが、しかし、ここでも問題になっているのはあくまでも、「日米安保条約廃棄後」の話であって、安保条約の存立が前提になっている「野党連合政権」での話ではない。
 以上見たように、まず第1の決定的な問題点は、これまでの共産党の基本路線に反して、民主連合政府が成立する前、そして安保条約が解消する前において、自衛隊による軍事防衛をはっきりと容認したことである。これは、第2インターナショナルと共産党とを区別してきた決定的な点を否定するものであり、まさに日本共産党の歴史上、根本的な画期をなすものである。

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