右傾化と堕落に限界はないのか?――不破指導部の自衛隊活用論の犯罪性

4、『産経』の不破インタビューの問題性
 ――自衛隊の活用は当然か

 この自衛隊活用問題で改めてクローズアップされたのが、昨年の7月7日の『産経』新聞に掲載された不破インタビューである。私たちは、不覚にも、このインタビューについては何も知らなかった。もし知っていたら、直後に糾弾の声明を出していただろう。インターネットを見るかぎり、当時は他のどこでも話題にならなかったようである。不破委員長は、党員や党支持者が読んでいないだろうと思って、ああいう発言をしたのだろうか? このインタビューでは、自衛隊問題のみならず、国旗・国歌法の問題についても重大な問題発言をしているが、ここでは自衛隊問題に絞って論じる。
 不破委員長は、すでに引用したように、このインタビューの中で次のように述べている。

――共産党は日米安保条約廃棄後も、国民の合意がなければ自衛隊は解散しないといっている。その時点で、海上保安庁を超えるレベルの緊急事態への対応が必要になったときは、どうするのか。
 「自衛隊が解消していない間に、そういう事態が起きたら、自衛機能は使いますよ。われわれが政権をもっていてもね」

 ここでの表現は「自衛機能」という少し曖昧な言い方になっている。しかし、『産経』は、その記事において、次のような解説をしている。

共産党の不破哲三委員長は6日、『産経』新聞とのインタビューで、共産党が当面の目標として実現を目指している民主連合政府のもとでも、緊急事態の場合には自衛隊を使用するとの見解を示した。共産党はこれまで、日米安全保障条約の廃棄後も、国民の間で解散の合意ができるまでは自衛隊を存続させるとの見解を示してきたが、自衛隊の使用に言及したのは初めて。

 『産経』新聞の記者は少なくとも、この不破委員長の発言を、「自衛隊を使用する」ことを肯定したものと判断したわけである。その解釈はごく自然な解釈だろう。しかも、『産経』のこの解説はご丁寧にも、「自衛隊の使用に言及したのは初めて」と述べている。つまり、『産経』自身が、この見解を共産党のこれまでの基本的立場を踏襲したものではなく、「初めて」のものとして紹介しているわけである。そして、この『産経』記事に関しては、赤旗に何らかの釈明記事も修正記事も載らなかった。ということは、共産党中央も、この発言が、党指導部として自衛隊の活用を肯定したはじめての発言であったことを認めているわけである。
 それにもかかわらず、『赤旗』の弁明記事は、あたかも、この『産経』インタビューを含めて、自衛隊の活用論が1973年以来の一貫した立場であるかのように主張しているのである。党員や支持者が読んでいないであろう『産経』でこれまでの見解を覆す新見解を出し、今度は『産経』読者が読んでいないであろう『赤旗』で、これまで通りの立場と同じだと説明する。これを二枚舌と呼ばずして何と呼ぶのか?
 以上のことから明らかなように、不破委員長は、昨年7月6日の時点ですでに、従来の基本路線を一方的に覆して、民主連合政府下において、自衛のために自衛隊を活用することを認めていたわけである。これは、不破政権論が発表された後にたてつづいた共産党の右傾化路線の一つの重要な画期であったということである。私たちは今までそのことに気づかずにいたわけである。

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