以上、簡単ながら、今回の総選挙にあたっての「政策と訴え」を批判的に検討した。私たち自身の力量不足もあって、論じ切れていない数多くの問題が残されているが(たとえば介護保険問題)、それでも一定の吟味と批判を行なうことで、政策論議への一定の貢献をなしえたと思う。
最後に、一つの重要なことを提起しておきたい。今回の総選挙は、たしかに正確な日取りが決まったのはかなり最近になってからだが、すでに今年中ないし今年の前半ごろには行われることは、去年の後半の時点でかなり明確になっていた。とすれば、党としての正式の選挙政策を5月31日に突然発表するのではなく、それよりも何ヶ月か前に「試案」を発表し、それに対する党員と支持者の意見を募集し、できるだけ多くの人々の意見を参考にして練り上げることは、十分可能だったはずである。もしそうしていれば、より充実した選挙政策になっただけでなく、党員や支持者自身も、その政策をお仕着せのものとしてではなく、より自分たちに身近なものとして、もっと言えば「自分たちの政策」としてより強く感じとることができたろう。
もちろん、大会決議と違って、選挙政策について事前に案を発表し、意見を募集することを義務づけている規約は存在しない。しかし、規約にあるなしではなく、本当に全党の英知を結集して政策を作ることによってこそ、よりよい政策ができるだけでなく、その政策を実現しようとする党員・支持者のエネルギーも引き出せるのである。
それだけでなく、共産党がそのような努力を日常的にしている姿を示すことで、真に有権者の信頼と共感も勝ちとることができるのである。政策が立派なだけではだめである。その作成の過程も誇れるものでなければならない。党員および支持者の中には多くの専門家や多くの第一線の運動家たちがいる。彼らが持っている経験や知識やノウハウは、何事にも代えがたい財産である。中央指導部のメンバーだけが頭を寄せ合って決めるのではなく、このような知的・経験的財産を生かしてこそ、真に素晴らしい政策をつくることができるのである。