雑録

 この「雑録」は、日本共産党とその周辺をめぐる動きの中で、短くても論評しておくべきものを取り上げて、批判的に検討するコーナーです。

共産党のHPから削除された記事の一覧(資料-2)

朝鮮半島の問題についての見解は?
1999年9月16日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 日本共産党は朝鮮半島の問題についてどういう見解をもっていますか。韓国や北朝鮮との関係はどうでしょうか。(岡山・一読者)

 〈答え〉 単一の民族国家だった朝鮮は、三十五年間、日本帝国主義の植民地支配のもとにおかれ、第二次世界大戦での日本の敗北で解放されましたが、米ソ両軍の進駐を機に、南北に分断され二つの国家ができました。
 日本共産党は分断が克服され自主的平和的に統一が実現されることを支持しています。同時に、日本が南北の政権を承認し、いずれの国とも外交関係をもつよう主張しています。
 韓国との関係では、軍事独裁政権が倒れて十年以上になる今日、日本共産党は韓国の政界をはじめ各方面の人々と活発な交流を発展させたいと願っています。昨年十月に訪日した金大中(キム・デジュン)韓国大統領は、不破委員長とあいさつをかわしたさい、互いに協力しようと語りました。また、ことし九月はじめに来日した金鍾泌(キム・ジョンピル)韓国首相も、歓迎晩さん会の席で不破委員長と親しくあいさつをかわしました。国会議員の韓国との交流などにも、日本共産党は積極的に参加しています。
 日本政府は、韓国が朝鮮半島の「唯一合法政府」との見方をとってきましたが、この見方は南北に二つの国家が存在しているという現実に合わないとの立場を日本共産党はとってきました。一九九一年に韓国と北朝鮮が国連への加盟を同時に承認されたことからみても、そのことは裏づけられています。
 北朝鮮との関係についていえば、日本共産党は、北朝鮮側の干渉や攻撃のため、関係は絶たれています。北朝鮮がおこしたビルマのラングーンでの爆破テロ事件(八三年)や日本海の公海上での日本漁船銃撃事件(八四年)などへの批判を、北朝鮮側が「敵に加担するもの」などと攻撃したことが原因です。
 いま新ガイドラインなど日米軍事同盟強化の口実に北朝鮮の動きが使われていることは、アジアと世界の平和にとって深刻な問題です。日本共産党は、日本が北朝鮮と外交関係もなくなんの交渉ルートももっていない状況に終止符を打って、交渉ルートをひらくこと、お互いが相手側からの先制攻撃を心配して軍事的対応をとる悪循環を断つために、いかなる国にたいしても先制攻撃の立場をとらないことを、日本政府が明らかにするよう主張しています。(理)〔1999・9・16(木)〕

東ティモール問題ってなに?
1999年9月30日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 東ティモールが独立するかどうかが問題になっていますが、東ティモール問題とはそもそもどういうものなのでしょう。(富山・一読者)

 〈答え〉 東ティモールは、インドネシアの東方のティモール島の東半分に位置し、人口は約八十万人です。西ティモール(ティモール島の西半分)が長年オランダの植民地とされ、一九四五年インドネシアの一部として独立したのにたいし、東ティモールは十六世紀以来、ポルトガルの支配下におかれ、第二次大戦後も一九七五年まではポルトガルの植民地でした(第二次大戦中は日本が占領)。
 東ティモール住民の植民地反対の決起は十九世紀後半以降くりかえされ、一九七四年ポルトガルの独裁政権が倒れて植民地政策の放棄が打ち出されると、一挙に独立への機運が高まりました。独立運動の中心となった「東ティモール独立革命戦線」(フレティリン)は、一九七五年十一月「東ティモール民主共和国」を宣言しましたが、十日後の十二月七日インドネシアは陸海空から大挙軍事侵攻し、翌年一方的に「併合」を宣言しました。その残虐な占領政策のもとで約二十万人が殺害されたといわれています。
 国連総会は、インドネシア軍の東ティモールへの「軍事介入を強く遺憾」とし、即時撤退を決議しました。インドネシア政府はこれに従わず、不法な占領をつづけました。
 一九九一年十一月、中心都市ディリで独立派の集会にインドネシア国軍が発砲し二百七十人以上が殺され、ふたたび国際的非難が高まりました。九六年には独立派指導者二人がノーベル平和賞を受賞。昨年の政変でスハルト政権に代わったハビビ現政権は、はじめて東ティモールの住民投票を受け入れ、今年八月三十日の住民投票では八七・五%の住民が独立を求めました。
 長期に占領がつづいた理由として、米国、日本、オーストラリアなどが、インドネシアの武力併合を容認し、軍事・経済援助で占領を助けたことが問題にされています。(松) 〔1999・9・30(木)〕

「日本改革論」ってなに?
1999年9月6日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 最近よく「しんぶん赤旗」に、「日本改革論」ということばが出てきますが、一口でいってどういうことですか。(滋賀・一読者)

 〈答え〉 長年にわたる自民党政治がいまあらゆる分野でゆきづまり、大企業の利益とアメリカの要求を最優先にした自民党流の「国づくり」が破たんを深めています。この自民党流「国づくり」を改革し、国民が主人公の政治に切りかえようというのが、日本共産党が主張している「日本改革論」です。日本共産党の綱領の路線を今日的にわかりやすく表現したものです。
 改革の中心は大きくいって二つあります。一つは、大企業中心の政治・経済を国民本位に切りかえることです。日本は、国・地方の財政をみても、社会保障に年に二十兆円しかお金を出さないのに、ゼネコン奉仕の浪費型公共事業には五十兆円も使う「逆立ち」政治です。過労死が続出する長時間・過密労働や人権無視の「リストラ」など、欧州諸国では考えられない大企業・大銀行の横暴が野放しにされています。こうした世界でも例のない「逆立ち」政治、”ルールなき資本主義”をあらため、国民の利益を守る民主的なルールづくりが急務です。
 もう一つは、アメリカとの軍事同盟をやめ、米軍基地をなくし、アジアと世界の平和に貢献する、非同盟・中立の日本にすることです。
 日本には、日米安保条約のもとで治外法権の多くの米軍基地がおかれ、アメリカが世界で軍事介入する出撃基地にされ、日本の主権と安全が侵害されています。基地騒音、米軍機の低空飛行訓練での被害があとをたちません。外交も、アメリカの軍事行動をすぐに支持する自主性のない対米追従外交です。戦争法の成立により日本がアメリカの戦争に参戦する危険が高まっている今、日本が本当に独立し、主権をもった国になることが求められています。
 こうした改革は、資本主義の枠内でできる民主主義的な改革です。日本共産党は、この改革を実現する方法としては、選挙で表明された国民の意思にもとづき、国会で多数を得ながら、一歩一歩段階的にすすめていこうと提唱しています。(絹)〔1999・9・6(月)〕

連立政府をつくる用意は?
1999年9月18日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 日本共産党は、民主党や社民党、新社会党などの野党と連立政府をつくる用意はありますか。また、そのときの条件はなんですか。(岡山・一読者)

 〈答え〉 日本共産党は、自民党政治を根本的に打破する安保条約廃棄の民主連合政府を二十一世紀の早い時期に樹立することをめざしています。しかし、その前の段階でも、たとえば総選挙で自民党・与党が多数を失い、野党がまとまって、安保問題では一致しなくても、国民の生活や民主主義にかかわる重大な点で自民党政治を少なくとも部分的には打破し、その分野では国民の利益にかなう政策を実行する政府をつくれる条件があるなら、その実現にも積極的に力をつくす考えです。
 この立場から不破委員長は昨年八月の「しんぶん赤旗」のインタビューで、「こんごの情勢の発展のなかで、野党の連合政権の協議が問題になるときには、われわれは積極的な提案をもってその協議に参加する用意があります。そして、その協議によって、政権の基礎となる政策協定その他の合意ができれば、それにもとづいて、政権にも参加する用意があります」と政権問題にのぞむ日本共産党の態度を明らかにしました。
 その後、戦争法成立という重大な事態のもとで、ことし六月の日本共産党第四回中央委員会総会は、戦争法の発動を許さない政府の樹立の大切さを強調。「どんな段階で、どんな形態の政権を問題にするときでも、私たちは、戦争法にたいする態度の問題を、政権の性格にかかわる基本問題として位置づけ、重視する必要」があると指摘しています。
 自民党政治を打破する連合政府を展望するうえで、しっかりした野党共闘をくんでいくことが重要です。もちろん、一挙に理想的な野党戦線はできないでしょう。しかし、たとえ部分の問題であっても、自民党の悪政の一角を突破できる共闘がしっかりできるならば、日本の政治の重要な転機になります。この間、盗聴法反対で民主、共産、社民の一定の共闘がすすめられたりしましたが、自民党政治に対抗する野党戦線といえるものはまだきずけていません。私たちは、自民党政治にかわる政策上の対抗軸をしっかりもつ日本共産党の躍進が、野党戦線をきずくカギになっていると考えています。(解)[1999・9・18(土)]

党員首長は党の方針に従わざるをえないか?
1999年10月21日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 日本共産党は地方自治の実現をかかげていますが、一方で民主集中制をとっています。自治体の日本共産党員首長は結局、党の方針に従わざるをえないのでしょうか。(京都・一読者)

 〈答え〉 日本共産党の組織原則である民主集中制(民主主義的中央集権制)は、同じ社会変革の目標をかかげて活動している党員が、ものごとを決めるまでは民主的に討論し、決めたことは一致して行動するという、近代政党としてあたりまえの原則です。
 しかし日本共産党は、党員首長の自治体運営の仕事の内容にたいして、党機関が民主集中制にもとづく指導などはおこなわないという方針をもっています。現に党規約には、住民から選ばれて公職につく地方の党員について、議員にたいする指導だけを明記しています。
 それは、自治体首長が、行政の責任者であり、住民全体の利益の代表であるからです。もともと自治体は、さまざまな思想信条、政治的立場の人びとが住民を構成しています。そのなかで、住民の合意をはかりながら自治体の運営はすすめられるべきものだからです。
 同時に、党員首長が住民の意思にもとづいて住民とともに地方行政をすすめていくことは、日本共産党がめざしている「住民が主人公」の地方政治のあり方と一致するものです。この点からも、首長が日本共産党の一員であるということと、住民全体の利益を代表する首長の仕事をおこなうということには、まったく矛盾がありません。
 党員首長の自治体が、「開発会社」化した地方政治の流れを変えて、住民本位の施策を前進させることができているのも、住民の意思にもとづく自治体運営に心がけている結果ともいえるでしょう。(島)〔1999・10・21(木)〕

”審議拒否は議会政治の自殺行為”?
1999年12月4日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 年金改悪法案に関連して、「野党が審議拒否の態度をとったのは議会政治の自殺行為だ」という人がいます。どう考えますか。(東京・一読者)

 〈答え〉 事態の経過を見れば、野党の徹底審議の要求を踏みにじって審議拒否をしたのが与党であり、議会政治を圧殺する与党の暴挙から議会政治を救ったのが野党であることは、はっきりします。
 今回の年金改悪法案は、男性で三十八歳以下、女性で三十三歳以下の人が六十代前半はまったく年金がもらえなくなり、生涯にうけとる年金を一千万円もへらすという、国民の老後の生活設計を根本から破壊する重大なものです。
 ところが与党側は、そんな大事な問題を衆院厚生委員会でわずか十四時間の審議をしただけで採決を強行しようとしました。しかも、国民の声を聴くとして開かれる公聴会の当日、開催直前に、与党は翌日に採決することを一方的に決めてしまったのです。これは、「公聴会で国民からどんな意見が出ようと、それにかかわらず採決する」ということです。公聴会をおこなう前に採決日程を決めたことは過去に一度もないと衆院副議長が認めるように、国会史上例のない暴挙でした。
 野党側は、こうした異常な事態を正常化するため、採決日程を白紙に戻し、委員会での徹底審議や地方公聴会の開催などを求めました。ところが、与党側は事態打開のための与野党協議をよびかけておきながら、その話し合いの最中に委員会で採決を強行してしまったのです。
 このため、野党は結束して、本会議の開会を強行しないで、年金改悪法案を厚生委員会に差し戻し徹底審議することを衆院議長、副議長に申し入れ、その際、副議長も「与党側に重大な間違いがある」と表明。その結果、議長裁定にもとづいて、野党側が要求していた委員会への差し戻しと審議継続などで与野党が合意し、正常化にいたりました。
 こうした経過は、審議を拒否したのが野党ではなく、野党が求める必要な審議をやらないまま採決をごり押しした与党の側であったことを示しています。 (論)〔1999・12・4(土)〕

永住外国人の地方参政権にかんする見解は?
2000年1月16日「しんぶん赤旗」

 〈問い〉 永住外国人に地方参政権をあたえることが議論されていますが、日本共産党はどのような見解、政策をもっていますか。(長野・一読者)

 〈答え〉 日本共産党は、日本に永住する外国人には、選挙権、被選挙権をふくめ地方参政権を保障すべきだと考えています。そうした立場から、九八年十一月十七日、「永住外国人に地方参政権を保障するための日本共産党の提案」を発表。同年十二月に法案を衆院に提出、その後の国会で趣旨説明をするなど現在継続審議中です。
 法案要綱は、次のとおりです。
 (1)わが国に永住資格(特別永住資格を含む)をもって在住する二十歳以上の外国人にたいして都道府県および市区町村の首長・議会議員についての選挙権を付与する。(2)右に該当する外国人が、日本国民の有する被選挙権年齢に達した場合、当該被選挙権を付与する。(3)具体的な選挙資格については、外国国籍であることを考慮して、個々人の意思を尊重し、選挙資格を取得する旨の申請をおこなった者にたいして付与する。(4)地方参政権の取得にともなう選挙活動の自由・政治活動の自由は、日本国民にたいするものと同様に保障する。(5)地方自治体における条例制定などの直接請求権、首長・議員リコールなどの住民投票権も同様に付与する。

 地方自治法は、市町村に居住する人を「住民」と規定しており、地方政治はすべての住民の要求にこたえるために住民自身の参加ですすめられるべきです。外国籍でも、日本の地方自治体で生活し納税などの義務をおう人々が、住民自治の担い手になることは、憲法の保障する地方自治の精神とも合致します。最高裁判所も、永住外国人に地方参政権を保障することは「憲法上禁止されているものではない」との判決を出しています(九五年二月)。
 欧米諸国を中心に、永住外国人や在住外国人に地方参政権を保障する国がふえています。日本で永住外国人に地方参政権を保障するのは、国際化と民主主義の流れのなかで当然のことだと考えます。   (豊)〔2000・1・16(日)〕

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