さらに、「4党合意」推進勢力にとって打撃となったのは、結局、選挙で共産党が敗北し、民主党も多数を取れず、政権入りがはかない夢と消えたことである。政権入りの思惑から、国鉄闘争における屈服路線を密かに選択したはずの共産党中央は、下からの組合員の大規模な反発もあいまって、面目を失墜しないような新たな方向性を模索せざるをえなくなった。しかし、どのような態度をとるべきかまだ明確にならないうちに、7月1日に国労の臨時大会が開かれた。この場では、すでに述べたように、共産党系の革同主流派は動員をかけて、「4党合意」容認を大会に認めさせるべく強行突破を図ろうとした。しかし、闘争団をはじめとする反対派の決死の努力と抵抗によって、大会は休会に追いこまれた。
この時点ではまだ方向性を模索中であった党中央は、この臨時大会について『しんぶん赤旗』において、次のようなまったくの中立報道に徹した。以下に、全文を引用する(党のサイトにはアップされていない)。
国鉄労働組合は1日、第66回臨時大会を東京都内で開きました。国鉄の分割・民営化から13年余、1047人の解雇撤回のたたかいは重要な局面をむかえています。大会では、5月30日、自公保3党と社民党による「4党合意」への対応をめぐって、議論が紛糾しました。
大会は、大会延期を求める労働者に阻まれ、代議員が会場に入れないなどで5時間遅れで開催。高橋義則委員長は「JRに法的責任なし」とした「4党合意」を承認する厳しい判断が求められている、苦渋の選択をしたとあいさつ。国鉄闘争を支援してくれている全国の労働者からの要請や抗議が寄せられているが、国労の要求を実現することが大事だとして、(1)不採用になった労働者のJRへの復職、(2)経済的補償、(3)今後の生活保障を求めていく、を指摘。これは国民全体が支持してもらえる当然の要求だとのべました。
討論では、「苦渋の選択は理解できる」「具体的なものがでてから判断してもいいのではないか」と執行部提案に同意する意見と、「これまでなんのためにたたかってきたのか。『JRの法的責任なし』は14年間のたたかいを否定したものだ」「『4党合意』はなんの保障もない」と反対する意見があいつぎました。
14人の代議員からは、「4党合意」について引き続き職場討議を継続することとし、これまでの運動の到達点を背景に国労要求をもとにして、政府・JRと交渉をすすめるべきとの修正動議が出されました。
宮坂義久書記長が集約の答弁をおこなっている最中に、一部の闘争団員らが壇上にかけあがり、混乱。大会議長の判断で休会となりました。
1047名の不採用問題は、政府も「1人も路頭に迷わせない」(86年の国鉄国会)と公約しており、昨年5月にも全政党が「人道的立場からも早期解決を」と政府に要請していました。そこには「JRの法的責任なし」といった条件はありませんでした。
見事な客観報道だと言える。この記事からは、いったい党中央がどちらの方に共感を持っているのか、すなわち、4党合意案を受け入れ闘争団を切り捨てて国とJRに屈服しようとしている側になのか、それを捨て身で阻止しようとした闘争団に対してなのか、まったくわからない。
しかし、共産党系の他の労働組合の機関紙やニュースでは、かなり違ったニュアンスで、この臨時大会について報告されている。たとえば、ある共産党系労働組合の地方支部のニュースには、「暴力行為は許されない――国労臨時大会休会に」という見出しのもと、次のようなことが書かれている。
国労本部は7月1日に臨時全国大会を開催してこの政党間合意の承認を求めようとしました。しかし、本部方針に反対する国労内外からの動員者により、開催が4時間以上も遅れ、開会後の書記長集約時には演壇や議長席の机やイスがひっくり返されるといった暴力行為が発生し、休会に追いこまれました。
「国鉄労働組合をつぶす」ことを一つの目的とした国鉄の分割民営化によって、国労・全動労1047人が解雇され、苦難の13年でしたが、政府をして「解決済み」から「解決すべき問題」と変えさせてきたのは国労・全動労と民主勢力の成果です。そして重大な時期を迎えています。
この時期に国労の最高決定機関である全国大会が暴力によって休会させられたことについて強い怒りをおぼえるものです。
この文章は、「4党合意」容認を推進してきた革同主流派の心情を率直に代弁しているが、やむにやまれぬ行動に出た闘争団や支援者たちの心情に対しては驚くほど冷淡である。