しかしながら、「4党合意」に対する反発と批判が思いのほか強く、党内からさえ強い批判意見が出されていることなどから、共産党中央はいつまでも曖昧な態度をとりつづけることができなくなった。少しづつ、なし崩し的に、「4党合意」に対する批判的姿勢を支持者に印象づけざるをえなくなっている。
その密やかな「方向転換」を示す一つの事実は、7月25日付『しんぶん赤旗』の投書欄に、「4党合意」を厳しく批判する投書が2通も掲載されていることである。たとえば、その一つは次のように述べている。
そんな折、このJR採用差別事件で自公保と社民の4党は、次のような解決案を示したそうです。「JRの法的責任は問わない」ことを国労が大会で認め、これを受けて雇用確保や訴訟の取り下げ、和解金について話し合いをすすめる、と。とんでもない話です。
「一人も路頭に迷わせない」と当時の中曽根首相は国会で発言しました。真の解決策は1047人の旧国鉄職員をJRに採用し、差別・不当労働行為を政府・JRが心から謝罪することです。
「4党合意」が発表されてから2ヶ月近くも経ってから投書欄にこういう投書が載るというのは実に奇妙なものだが、これは明らかに意図的なものである。党自身の立場として「4党合意」をきっぱり批判する勇気を持たない党中央は、投書欄の投書を通じて、読者に「4党合意」に対する党の批判的姿勢を印象づけようとしたのである。
さらに、この姿勢はその後より明確になる。7月25日に開催された全労連の全国大会を報じた7月27日付『しんぶん赤旗』は、その中で、わざわざ独自のスペースを設けて、国鉄闘争に対する全動労(建交労)代議員をはじめ、「4党合意」を批判する発言を肯定的に紹介している。以下、その全文を引用する(党のサイトではアップされていない)。
大会では、1047人解雇撤回をめざす国鉄闘争について、議論しました。
建交労(旧全動労)の代議員は14年間、政府・JRに責任があると世論を広げてきた、国がリストラ推進の口実を与えているもとで、労働委員会命令とILO勧告にもとづく立場でたたかい抜くと表明。特殊法人労連の代議員は政権与党3党と社民党の「4党合意」の問題点を指摘しました。
高知県労連の代議員は、建交労や国労と実施した実態調査や利用者アンケートをもとにJR四国と交渉、成果をあげたと紹介。解雇撤回のたたかいの勝利の年にふさわしい運動を盛りあげようと語りました。
中間答弁に立った坂内三夫事務局長は、国鉄闘争を日本労働運動の再生の環として位置づけ、今日までたたかいをすすめてきたが、全労連の方針はいささかも変わっていないと強調。全国キャラバンやILO第2次勧告に向けて国内・国際世論を広げ、政府・JRの責任を明確にし、1日も早い解決をはかるよう全力をあげたいとのべました。
全労連の大会の場で事務局長が「全労連の方針はいささかも変わっていない」とあえて「強調」しなければならなかった理由は明らかである。国労内の革同が積極的に「4党合意」受け入れのために奮闘していること、この間『しんぶん赤旗』が沈黙を続けていたこと、全労連国鉄闘争本部の事務局長が一時的とはいえ「4党合意」を容認する談話を発表したことなどを考慮したものである。